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宇都宮徹壱ウェブマガジン

たとえフットボールをもぎ取られたとしても 鹿島アントラーズ社長、小泉文明の131日<1/2>

 先週末のJ2再開とJ3開幕に続き、今週土曜日にはいよいよJ1が再開される。そこで今週、当WMが徹ルポとしてフォーカスするのが、鹿島アントラーズ。ただし1万字に及ぶ本稿で、選手名は「ジーコ」以外、一度たりとも出てこない。今回の主人公の名は、小泉文明。そう、昨年夏に鹿島の社長に就任した、メルカリの元取締役社長兼COOである(現在は会長を兼任)。

 小泉社長については以前、スポーツナビでの連載『Jリーグ新時代 令和の社長像』でも取材させていただいた(参照)。本稿はその後日談に当たるわけだが、小泉社長を中心に据えつつも「組織としての鹿島アントラーズの強さ」に、より明確に焦点を当てている。

 リーグ最多タイトル数を誇る名門クラブは、昨年8月、親会社が日本製鉄からメルカリに代わった。そして、IT業界出身の38歳の新社長が就任した際には、どのような化学変化が起こるのか、周囲は期待をもって注視していた。しかしながら小泉(あるいはメルカリ)体制になってからの鹿島が、最初にその力量を試されたのが、皮肉にもコロナ禍によって「フットボールをもぎ取られた」中断期間であった。

 今季第1節が行われたのが2月23日で、リーグ戦が再開されるのが7月4日である。その間、実に131日。最大最強のコンテンツであった、フットボールを奪われるという未曾有の危機を、クラブはどのようにして乗り越えることができたのか。その理由を、小泉社長へのインタビューから読み解いてゆくのが、今回の徹ルポが目指すところである。それとは別に、ひとりの書き手として目指しているところについても、この機会に言及しておきたい。

 先のコラムでも書いたとおり、われわれフリーランスは当面の間、思うがままにJリーグを取材することは難しい。ゆえに今後は、現場で試合を取材できないことを前提に、コンテンツの提供を考えていかなければならないだろう。今回の徹ルポは、その試金石となる作品である。とはいえ、今後の取材活動については、今も迷いがないわけではない。そこでぜひ、本稿を読んだ感想を「#宇都宮徹壱WM」のハッシュタグを付けて、SNS上に書き込んでいただきたい。

 何卒、よろしくお願い申し上げます。

(c)KASHIMA ANTLERS

<1/2>目次

*1億円の根拠となったロイヤリティと「ふるさと納税」

*「ベンチャーの立ち上げに比べれば、ぜんぜん楽ですよ」

*コロナ禍だから前倒しできたギフティングとクラファン

 

1億円の根拠となったロイヤリティと「ふるさと納税」

 鹿島アントラーズがクラウドファンディングをスタートさせたのは、6月16日のことである。取材の件でやりとりしている、鹿島の広報スタッフからのメールでそれを知った時、実はさほど気に留めることはなかった。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、サッカークラブによるクラウドファンディングをあちこちで目にするようになった。Jクラブだけでなく、Jリーグ入りを目指す地域リーグや県リーグのクラブもまた、チーム存続を訴えてクラファンを立ち上げている。ゆえに鹿島についても、最初は「その中のひとつ」という認識でしかなかった。

 ところが取材から帰宅後、あらためて鹿島のクラファンをネットで確認して、度肝を抜かれた。目標金額、何と1億円! 同じJ1の北海道コンサドーレ札幌が300万円、J3のブラウブリッツ秋田が400万円、そして関東リーグの東京23FCが500万円。これらのクラファンと比べると、目標金額の桁が2つ違う。しかも、開始から1日も経っていないのに、すでに1000万円を超えているではないか。余談ながら、浦和レッズも1億円のクラファンを行っているが、開始日は鹿島より4日遅れの6月20日であった。

「現時点で2064万円です。正直、1億円という目標設定には『大丈夫かな』と思っていました。けれども、24時間で2000万円を超えるのは、クラファンとしてはかなりいいですよね。しかも1万円のプランもあるのに、最も人気があるのが5万円のプラン。すでに300人もの方が、5万円を寄付されているんですよ。こういったところにも、皆さんのアントラーズに対する愛情が感じられます」

 翌日の午前10時、鹿島アントラーズ社長、小泉文明にオンラインでインタビューする機会を得た。数字を誇示するでもなく、驚くそぶりも見せるでもなく、事実のみを明快に語る小泉社長。そんな彼のコメントからは、2つの興味深い事実が浮かび上がってくる。まず、1万円から1000万円のコースの中で、カシマサッカースタジアムに自分の名前を刻むことができる、5万円のコースに人気が集中していること。そして、クラファンの立て付けを「ふるさと納税」としたことが、功を奏したことである。

「ファンからすると、このカシマサッカースタジアムが、クラブの歴史の起点なんですよね。住金サッカー部がJリーグに入る条件として、当時の川淵(三郎)チェアマンが『屋根付きのサッカー専用スタジアムを作るんだったら』と言ったら、本当に作ってしまった。最初は「99.9999%無理」と言われたのに、残りの0.0001%を懸けてスタジアムを作って、そこからアントラーズの歴史が始まった。だからこそ、サポーターの皆様もスタジアムに対する思いが強いし、そこに名前を刻みたいと思うんでしょうね」

 スタジアムに対する、鹿島サポーターのロイヤリティについて、このように分析してみせる小泉。それでは、ふるさと納税についてはどうか。今回のケースでは、ホームタウンの鹿行5市を代表して、鹿嶋市がガバメントクラウドファンディングを実施する形となっている。Jリーグの理念に沿った立て付けではあるが、そこまで自治体を巻き込むというのは難易度の高い作業であったはずだ。その事実を認めた上で、小泉はこう説明する。

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