宇都宮徹壱ウェブマガジン

【ほぼ無料】7人の漫画家が集結! 障がい者サッカーTシャツ秘話 ちょんまげ隊長ツンさんが語るコロナ時代のボランティア<1/2>

二度もダメ出ししたツンさんに原副理事長が言ったこと

──このデザインの真ん中にある「Jの力を信じてる」の文字ですが、Jリーグ副理事長の原博実さんにお願いしたそうですね。このアイデアはどこから?

ツン ラフデザインが上がってきた時に、ちょっとカッチリしすぎているのが気になったんです。デザイナーは嫌がりましたけど、やっぱりサッカー界の心ある人に手書きでメッセージを書いてほしい。僕は原さんしかいないと思って、ダメ元でお願いしました。

──ツンさんと原さんはJリーグTVに一緒に出演したり、映画『蹴る』や『MARCH』などのイベントでもお世話になったりしていますよね。すぐに引き受けてもらえました?

ツン 引き受けていただけました!「いいんじゃない? いちおう、広報に確認するわ」ということだったんですが、Jリーグとしてではなく、原さん個人として書く分には何も問題はないと。ただし、そこからがまた大変で、最初に書いていただいた文字が、どうもしっくりこなかったんです。デザイナーも「え?」みたいな感じで。

──話を聞くだけでドキドキしてきたんですが(苦笑)。それで、どうなりました?

ツン 結局、書き直していただいたんですけど、まだしっくりこない。それで、さらに書き直しのお願いをしたら、原さんは「何年かぶりで書道の道具を引っ張り出して、墨と筆で書いてみたよ」って。

──二度も原さんにダメ出しするツンさんもすごいですが(笑)、それを受け入れてくれた原さんの度量の広さにも驚愕するばかりです。

ツン 怒られるんじゃないかとハラハラしていたら、原さんは「何回でも書くから言って」とおっしゃってくれて、僕は泣きそうになりましたよ。Jリーグ再開に向けて、とてもお忙しかったのに。それで3度目に書いていただいたもので、デザイナーからもOKをいただきました。あと、デザインの下の部分に英文字で「Get through together」と書いてありますが、最初は「トモに歩もう」という日本語表記だったんです。

──「トモにブラジル」とか「トモにロシア」のトモですね。

ツン そうです。尊敬する滝川二高の元監督、黒田和生先生の言葉です。ただ、ちょんまげ隊の過去の活動を知らない人もいるだろうし、日本語のメッセージが被るのもどうかと思って、こっちは英文にすることにしました。すると「トモに」のニュアンスが「together」なのか「with」なのかがわからない。それでFacebookに投稿したら、ロンドン在住で足に障がいがある女性から「Get through together」というアイデアをいただきました。

──ここでいう「through」には、どんなニュアンスがあるんでしょうか?

ツン 「いなす」とか「乗り越える」という意味もあるそうです。コロナにしても障がいにしても、完全に打ち勝つのではなく、そのまま受け入れながら乗り越えよう、というニュアンスですね。まさに、このプロジェクトの精神そのものだと感じました。

──すごくいい言葉ですね。かくして7人の漫画家先生の作品が揃い、原さん直筆の文字と英文のメッセージを加えたものが、ひとつのデザインに結実したと。これが現時点でのデザインですね(編集部註:変更になる可能性があります)。

ツン そうです! ちょっと見えにくいかもですが、右下のちょんまげのハンコは、いつも被災地支援を一緒にやっている、じゃんけんマンの直筆です(笑)。自画自賛になりますけど、7人の先生が描いたキャラクターが、それぞれ違う方向を向いているのがいいですよね! みんなバラバラで多様性があるんだけど、根っこの部分が一緒だから集まれる。それと原さんに書いていただいた「J」というのは、多くの人はJリーグと思うかもしれないけれど、実は「JIFF」であり「JAPAN」の意味もある。まあ、買ってくれるほとんどの方は、Jリーグサポーターなんでしょうけど。

──このデザインとクオリティだったら、クラブの垣根を超えて多くのJサポが買ってくれそうですね。

ツン 僕自身、これまでいろんな活動の中でたくさんのTシャツを作ってきましたけれど、今回の作品は集大成と言ってよいと思っています。

<2/2>につづく

前のページ

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ