宇都宮徹壱ウェブマガジン

錦糸町フットボール義勇軍に「解散はない!」理由 ロック総統が語る「コロナ禍での革命」<1/2>

「そういえば、あの人はどうしているんだろう?」

 緊急事態宣言の間、その動向が気になっていたサッカー仲間が2人いる。ひとりは、ちょんまげ隊長ツンさん。もうひとりが、ロック総統である。彼らのこれまでの活動を考えるなら、移動もフットボールも厳しく制限される状況というものは、まさに「水を失った魚」状態であった。自宅で悶々とした日々を続ける中、いろいろと思うこともあっただろう。これまでの活動そのものに区切りを付けることも、あるいは考えているかもしれない──

 そんなかすかな危惧を感じていたので、リアルインタビューを解禁した際、真っ先にツンさんとロック総統に取材のアポイントを取ることにした。そして同じ6月24日、おふたりに連続してインタビューする機会を得ることとなった。このうちツンさんのインタビューは、すでにこちらにアップしている。そして今週は満を持して、ロック総統のインタビューをお届けすることと相成った。

 実は今回のコロナ禍において、総統はSNSでの発信を極力控えていた。KFG(錦糸町フットボール義勇軍)のYouTubeでの発信に至っては、昨年8月から止まったまま。そうかと思うと、Jクラブの親会社に税務上の特例を認めるという報道をめぐって、何人かのJサポとSNS上でバトルを繰り広げている。こうした振幅の激しさは、何に起因していたのか。そして革命への熱量は、失われているのかいないのか。

 そうした数々の疑念や懸念に、総統が真っ向から答えてくれたのが、今回のインタビューである。最近はメディアの露出を控えていたこともあり、取材交渉は難航することも予想された。幸い、こちらの意図をきちんと汲んでいただいたことで、今回の貴重なインタビューが実現。これまで語られなかった、総統の知られざる過去に関する言及もある。KFGファンには必読の内容なので、この機会にぜひとも会員登録をご検討いただきたい。(取材日:2020年6月24日@東京)

<1/2>目次

*鳥栖の経営危機についてSNSでの言及を控えた理由

*なぜJリーグの優遇税制に「イラッときた」のか?

*「今年はサッカーのことを考えるのはやめよう!」

鳥栖の経営危機についてSNSでの言及を控えた理由

──総統、お久しぶりです。さっそくですが、まずは近況から教えてください。緊急事態宣言以降、ずっと革命活動がストップしているように見受けられます。YouTubeの更新も止まったままですし、Twitterについても試合がないとはいえ、サッカーに関する言及が激減していますよね。ファンもかなり心配しているのですが。

総統 単純に「世を忍ぶ仮の姿」での仕事が、ものすごく忙しかったというのがあります。それとやっぱり、コロナの影響もデカかったですね。結局、3月から6月まで(サッカーに関しては)何もやっていなかったです。ありがたいことにその間も、いろんな方からオファーをいただいていたんですよ。UGくんからYouTubeの番組に出てくださいとか、ライト曹長から「久々に一緒にやりましょうよ」とか、(中村)慎太郎からも「何か書いてください」みたいな話はあったんだけど。

──コロナの中断期間中、サガン鳥栖の経営危機の問題が、サッカーファンの間で話題になっていました(参照)。この件に関して、総統の意見を聞きたかった人はけっこういたと思うんですが。

総統 たぶん、そういう期待をされているんだろうなって、思っていましたよ。鳥栖に関しては「そんなに身の丈に合わないことをしていたら、絶対に債務超過に陥るよ」っていうことをかねてから言っていて、それが的中しましたからね。でも僕は、あえてこの件についてSNSで言及するのは控えたんですよ。だって今、Twitterなんか見ていると、サッカー以外にも、ものすごくネガティブな空気が充満しているじゃないですか。ちょっとした発言に尾ひれが付いて、みんなで叩きまくるみたいな。

──つまり炎上のリスクを気にしていたと?

総統 というか、私が鬼の首を取ったように「ほら、言わんこっちゃない! もっと地に足をつけた経営じゃないと」とか正論をぶつけても、クラブのことが心配で余裕がない鳥栖のサポーターからは、ネガティブな反応しか起こらないですよね。このコロナ禍、今を必死で生き抜こうとしている人たちって、たくさんいるわけですよ。特に飲食業とか観光業とか、本当に大変じゃないですか。そんな人たちには、どんな正論も意味を持たないですよね。それと同じですよ。

──これが平時だったら、総統の過激な論調というものが「際立ったもの」として、受け入れられていたと思うんですよ。でも、今は状況がどんどん変化して、優良企業の正社員だって不安な生活を送っているわけですよね。そういう状況だと、極端なことを言ったら炎上するし、正論を言ってもネガティブな反応しか出てこない。やりにくいですよね。

総統 本当にやりにくい。最近、芸人さんのTwitterもよく燃えますけど、昔だったら「アハハ」で済んだことが、なんだか殺伐としていますよね。コロナだけでなく、アメリカの黒人差別に対しての抗議デモのことなんかも、いろんな人がいろんな立場でツイートすると、すぐに袋叩きに遭うじゃないですか。みんな、ものすごく今の状況にピリピリしているから、なんでも過剰に反応してしまう。私も以前なら、そういうリアクションにロジカルに反論していたんだけど、最近はそういう気力もないですね。「世を忍ぶ仮の姿」の時に、今を必死で生きている人たちを間近で見ていますから、いろいろ考えるようになりました。

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