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宇都宮徹壱ウェブマガジン

たとえコロナ禍でも「クラブがやるべきことは変わらない」 ファジアーノ岡山 北川真也社長が考える非常時の経営<1/2>

 J2ファジアーノ岡山が、久々に全国ニュースに取り上げられたのは7月10日のこと。それまでリモートマッチだったJリーグは、この日から5000人以下の制限を設けての入場が認められた。当日は金曜日で、試合が行われたのは岡山のホームゲームのみ(対ギラヴァンツ北九州戦)。つい3日前にインタビュー取材させていただいた、社長の北川真也さんがメディアに登場する姿を見て、不思議とうれしい気分になった。

 実は北川さんには、今年の2月にも別の企画で取材させていただいている(参照)。それからわずか5カ月で、再びインタビューの依頼をしたのは「コロナ以前/以後」というテーマが頭にあったからだ。つまり2月の時点で社長が語っていたことが、このコロナ禍によってどう変化していたのか、確認したかったのである。2月の取材では、ちょうど開幕戦を控えていたこともあり、北川さんはこう語っていた。

「僕はファジアーノを、J2で最もデジタルを活用したクラブにしたいんです。具体的にはCRM(顧客管理)事業。Jリーグでも今、toC戦略(ファンへの取り組み)をやっていて『チケットを3回買ったお客さんはリピーターになる』と言われています。ウチで調べてみても、同じような結果が出ました。(中略)ですから今年も3つの山を作る必要があって、その意味でも開幕戦は特に重要ですね」

 それがコロナ禍により、集客面で大きなダメージを受けることになった。当然、戦略を立て直す必要に迫られたはずである。ところが今回のインタビューで北川さんは「リアルかバーチャルかの違いだけで、考え方そのものは実は一緒」と言い切る。換言するなら、コロナ以前も以後も「クラブがやるべきことは変わらない」ということだ。この発想には、少なからず驚かされた。

 北川さんは18年、木村正明前社長がJリーグ専務理事となったのを機に現職に就いた。当時39歳。前任者があまりにも偉大だったため、北川さんの仕事が注目される機会は極めて限られていたように感じる。しかし今回のインタビューをご覧いただけば、2代目社長への見方はかなり変わることだろう。そして「非常時の経営」というテーマは、きっとサポートクラブを超えて心に響くはずだ。最後までお読みいただければ幸いである。(取材日:2020年7月7日@岡山市)

<1/2>目次

*ファジフーズが自宅に届く新しいサービス

*入場料収入の割合が他クラブよりも低い理由

*「内部留保がない」ビジネスモデルのジレンマ

ファジフーズが自宅に届く新しいサービス

──今日はよろしくお願いします。こちらに伺う前に岡山駅周辺を歩いていたんですが、ファジアーノの選手が登場するポスターや動画をあちこちで見かけました。このクラブの黎明期を取材してきた者としては、かなり地域に根付いていることに感慨深いものを覚えるのですが、いかがでしょうか?

北川 僕自身は「まだまだ」だと思っていますね。今年で言えば、(J2)開幕戦を知ってもらうということを重点的にやってきました。県民の皆さんの9割は、ウチの開幕戦をおそらく知らないだろうと。そういう仮説のもとに、まずは2月23日にシティライトスタジアムで開幕戦があることを、さまざまな場面で知っていただけるように工夫してきました。確かに「ファジアーノ」の名前は皆さんご存じだと思います。それでも、いつ開幕するのかを知っている方は、おそらく県民も1割くらいだと思っていますので。

──その開幕戦ですが、私もDAZNで拝見しましたけど、すごく盛り上がっていましたよね。入場者数も1万2435人を記録しています。確か今まで1万人を超えた試合って、数回しかなかったと思いますが。

北川 過去11シーズンで4回しかありませんでした。ありがたいことに、今季の開幕戦は過去最高記録を達成することができたんです。本当はチケットのソールドアウトを目指していたんですが、そうならなかったのはコロナの影響も多少はあったと思います。

──すでにこの時点で、コロナの影響が懸念されていましたからね。それがなければ、もっと入っていたと思います?

北川 そう思います。実は当日、来場された皆さんにタオルマフラーをお配りする予定だったんですけど、コロナの影響で中国から届かないことがわかって、それで急きょ国内に切り換えることで、何とか間に合わせたんですね。結構、大変だったんですよ(苦笑)。

──なるほど。いずれにせよ、幸先のよい開幕戦だったのは間違いないと思います。そこから4カ月にわたる中断期間に入り、6月27日の第2節は無観客試合となってしまいました。1万2435人から無観客というのは、かなりのギャップがあったと思いますが、心理的にもしんどかったのではないでしょうか?

北川 もちろん、しんどくなかったことはないです。とはいえ、こういった状況がいつでも起こり得るということを前提に、クラブ経営をしていかなければならないとも思っています。われわれの売上の8割近くは、スタジアムで完結するんですね。つまり(ホームゲームの)21試合分のスポンサーフィーやチケット、グッズの売り上げが、収入のほとんどを占めているわけです。ですからホームゲームにいらしたお客様にも、試合が行われる2時間以外のところにも楽しんでいただけるよう、これまでさまざまな施策に力を入れてきました。

──その代表例が、スタグルを集めた『ファジフーズ』ですよね。

北川 そうです。ファジフーズの場合、いつも試合前に平均で3400人のお客様にご利用いただいています。それ以外にも、催しものを開催したら1回で150人から200人くらい。ワークショップを開催すれば、多い時で200人くらい入っていただけます。そういった実績を積み上げることで、これまで集客を伸ばしていったわけですけれど、それができなくなってしまったらどうするか。その時に感じたのが「これまでリアルでやってきたことを、バーチャルやデジタルに置き換えればいいんだ」ということでした。

──今まさに、さまざまなクラブでそうした取り組みを行っているわけですが、ファジアーノについてはどんな方策が採られているのでしょうか?

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