宇都宮徹壱ウェブマガジン

【月1連載】ヒダリトモに訊け! プロスポーツクラブお悩み相談室 第1回 営業先で読んでもらえるクラブプロフィールの書き方とは?

 ついに始まった、左伴繁雄さんによる月イチ連載。その目指すところは、こちらのコラムに書いたとおりである。本稿は、スポーツビジネスに関わる多くの方々に読んでいただくべく、10月13日正午まで24時間限定の無料公開とした。

 なお、左伴さんへの質問は、随時募集中。表題を『ヒダリトモに訊け!』として、お名前、所属、お悩みの内容、そしてご連絡先を明記してWM編集部(infotetewm@targma.jp)まで。競技やカテゴリーは不問。お悩みが採用された方には、スタッフより連絡させていただきます。

【今回のお悩み人】岡本佳大(福山シティFC代表)

 

 左伴さん、こんにちは。先日、静岡に伺った際には、大変お世話になりました。その後、わが福山シティFCは、9月30日の天皇杯初戦に勝利。初出場ながら3回戦に駒を進めることとなりました。地元での営業活動にも追い風となりそうです。

 そこでぜひ、お尋ねしたいことがあります。前回お会いしたときに、われわれのクラブプロフィールをお見せしたところ「こんな大量の書き物を経営者が見るわけないでしょ?」とご指摘をいただきました。では、どのような情報を抽出してコンパクトにまとめればよいのか、ご指南いただけますでしょうか。

 今後の営業活動の参考にさせていただきますので、ぜひともよろしくお願い申し上げます。

 

【お悩みに答える人】左伴繁雄(ベルテックス静岡エグゼクティブスーパーバイザー)

 

■営業先の資料作りで考えたい3つのポイント

──本題に入る前に、左伴さんの近況をお伺いしたいと思います。現在、どのようなお仕事をされていますか?

左伴 B3に所属する、ベルテックス静岡というバスケットボールクラブのエグゼクティブスーパーバイザーとして、非常勤で経営のアドバイスをしています。チームの発足から1年わずかで財力も乏しい状態ですが、業界自体のトップラインはB1で6億円、B2で3億円と、Jリーグと比べると低めです。現在のベルテックスの規模は1億円弱ですが、2、3年で追いつくことを目標にやっています。そのほかには、二輪モータースポーツチームの経営コンサルタントもやっています。

──左伴さんはJクラブの社長時代から、とりわけ法人営業に力を入れている印象があります。ベルテックスでも同様でしょうか?

左伴 そうですね。特にバスケットボールの場合、集客収入よりも法人営業が収入の相当を占めています。現在のスポンサー数は40社くらいですが、今季は100社まで持っていけるように動いています。もちろん、楽ではないですよ。ベルテックスについて言えば、知名度がまだまだなことに加えて、今年はコロナの影響もありますから。それでも、コロナで失われつつある喜怒哀楽を「スポーツを通じて取り戻していきましょう!」というお話は、営業先でさせていただいていますね。

──なるほど。それでは早速、福山シティFCの代表である岡本さんのお悩みに答えていただきたいと思います。まずはポイントを3つ、挙げていただけますでしょうか。

左伴 1つめは分量です。福山シティFCの資料は、A4で30枚くらいありました。ちょっと多いですよね。2つめは、相手の事を考えることです。相手の立場や置かれた状況、決裁権を有している人が持つ重圧などを頭の中に入れておく必要があります。

 3つめは、サッカーではなく、会社の事を書くことです。競技の魅力だけではなく、包括的で現実的な資料を作ります。実はこれ、どこのクラブも抜け落ちていることが多いんですよね。夢や希望、地域に親しまれる事を挙げるクラブが多いですが、それでは読む側も「わが社も同じことを考えています」と言われて終わりですよ。

──若いフロントスタッフが営業に行くと、どうしても情熱が先に動いてしまう部分がありますよね。もちろん情熱も大切ですが、客観性を持って、サッカーに興味がない人にも抵抗なく受け取って貰える資料にするということでしょうか?

左伴 まさにその通り。サッカーというツールを使い、会社の向かうゴールにたどり着くまでを現実的に示すべきなんですよ。競技のルールや、有名選手が所属しているといった事ではなく、その会社の職員が関心を持ったり、喜んでくれたりしそうな部分が、最初のつかみになります。

 ベルテックスの例で言うと、静岡唯一のプロバスケットクラブなので「サッカーと比べて、静岡県全体に直接スポーツという楽しみをお届けするツールです」という話ができます。すると経営者は「サッカーだと会場がちょっと遠いけど、うちの近くまで来てくれるのか?」という事を思い浮かべます。

 ベルテックスの場合、藤枝、富士、静岡など、さまざまな場所で興行を行います。「それぞれの地域で、生の試合をお届けできます」という部分を強調すると、ホームゲームの会場が決まっているサッカーとの違いが出せますね。

──Jクラブは静岡県内に4つありますが、バスケットはベルテックスだけですよね。そこも強みとしてアピールできますか?

左伴 それだけでは、興味を持っていただくことはできませんね。「ホームタウンが分かれているサッカーと違い、ベルテックス静岡は県全体がお客様です」ということを伝えます。すると「B1ではないけど、静岡全体を相手にしているのか。そういえば、他にはBリーグのクラブはないよな」という感じで、興味を持っていただけますね。

■A3用紙1枚で経営者の興味を引く秘訣

──ここからは、具体的な資料の作り方をお伺いします。まず、どのくらいのボリュームが適切でしょうか?

(残り 2507文字/全文: 4776文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ