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宇都宮徹壱ウェブマガジン

『フットボール風土記』より会員限定で先行公開 親会社の都合に翻弄されて 三菱水島FC<1/2>

 いよいよ明日13日に発売される『フットボール風土記 Jクラブが「ある土地」と「ない土地」の物語』。その前夜祭として、本日20時よりリモートでのライブイベントを開催する。ちょうど福山を訪れているタイミングなので、福山シティフットボールクラブの岡本佳大代表、そして樋口敦副代表と共に、日本のアンダーカテゴリーについて大いに語り合うことと相成った。詳しくはこちらをご覧の上、ぜひともご参加いただければ幸いである。

 さて『フットボール風土記』については、版元のカンゼンが運営するフットボールチャンネルで、いわきFCの章の一部が公開されている。当WMとしても会員限定で、1章分をそのまま先行公開することとしたい。そこで選んだのが、第2章の「親会社の都合に翻弄されて」。現在、中国リーグで活動する三菱水島FCを取材したもので、初出は2017年2月発売のフットボール批評 vol.15である。

 一見とても地味に感じられる企業チームの章を、なぜあえてチョイスしたのか? 理由は3つある。まず、この三菱水島の取材中に『サッカーおくのほそ道』の続編を意識するようになったこと。次に、一見地味に見える企業チームにも、心揺さぶられるドラマがあるということ。そして、三菱水島の語には「地域とサッカー」という、本書のテーマがしっかり表現されていること。それではさっそく、ご覧いただくことにしよう。

<1/2>目次

*三菱水島が今治よりも「面白い」理由とは?

*見過ごされた「全国リーグを戦い抜く大変さ」

*親会社の都合によるJFL退会と天皇杯辞退

三菱水島が今治よりも「面白い」理由とは?

「会場に来ていた記者の皆さんが、ウチが負けるのを期待していたのは、感じていましたよ。実際、われわれは2点を追う展開でしたけど、それ以前に注目度が一番低かったですからね。Jリーグを目指しているわけでもないし。でも、だからこそ、一泡吹かせてやりたいという気持ちはありました」

 三菱水島FCの指揮官、菅慎の言葉に頷きながら、その日の光景を思い出していた。

 昨年(2016年)1126日、千葉のゼットエーオリプリスタジアムで開催されていた地域CL(全国地域サッカーチャンピオンズリーグ)決勝ラウンド2日目。この日の第1試合、FC今治が3対0でヴィアティン三重に勝利したことで、がぜん注目を集めることになったのが、第2試合の三菱水島対鈴鹿アンリミテッドFCの試合であった。

 記者たちのお目当ては、元日本代表監督の岡田武史がオーナーを務める今治である。この日の勝利で勝ち点を6に積み上げた今治は、JFL昇格の条件となる地域CL2位以内を、ほぼ手中に収めていた。あとは、この第2試合で三菱水島が90分以内で敗れれば、明日の大会最終日を待たずして、今治のJFL昇格が決まる。

 終了間際の83分、水島は3失点目を喫する。すると、寒さをしのぐため記者室から戦況を見守っていた各局の撮影スタッフが、バラバラとピッチレベルに姿を現した。ただし、カメラのレンズは試合ではなく、スタンドで勝敗の行方を注視するFC今治のオーナーに向けられていた。もちろん、昇格が決まった岡田の瞬間を押さえるためである。

 35歳のベテランMF山下聡也は、少し自虐を交えながら、その時の思いを語る。

「今治みたいに『勝って当たり前』みたいなチームは、取材しても面白くないんじゃないですかね。その点、ウチは面白いですよ。ベンチにはサブのGKがいないこともあるし、仕事で試合に来られない選手もいるし、練習に6人しか集まらない日もあるし、使っているボールは2000円だし(笑)。そんなチームが全社(全国社会人サッカー選手権大会)で優勝して、地域CLの決勝ラウンドに進出したんですから。なんで僕らに注目しないのかな」

 地域CL決勝ラウンドは、優勝した今治と2位の三重がJFL昇格を果たした。4位に終わった三菱水島は3戦全敗。将来のJリーグ入りを目指す他の3チームに比べると、純然たるアマチュアであり、親会社も事実上JFL昇格を認めていない。

 だが三菱水島は、決して単なる「やられ役」ではなかった。山下が指摘するとおり、彼らが全社を制しているという事実は看過すべきではない。ちなみに同大会に出場した鈴鹿は2位、三重は3位、今治は愛媛での開催だったにも拘らず、2回戦でPK戦の末に敗退している。

 この大会で地域CLの出場権を獲得した三菱水島は、富山で行われた1次ラウンドも3戦全勝で突破。この年の中国リーグで3位に終わった企業チームが、ここまで台風の目となることを予想した人は、当事者たちも含めてほとんどいなかったはずだ。

 数々の驚きと伝説、そして少なからずの「疑問」を残して、三菱水島は今治フィーバーに沸くゼットエーオリプリから静かに去っていった。あれから1カ月と2週間。地域CLの取材現場で、ずっと抱いてきた「疑問」を明らかにするべく、東京から5時間以上をかけて、彼らの本拠地である岡山県倉敷市水島を訪れることにした。

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