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制度設計から考える来年のWEリーグと今年のJリーグ 前Bリーグチェアマン、大河正明からの提言<2/2>

制度設計から考える来年のWEリーグと今年のJリーグ 前Bリーグチェアマン、大河正明からの提言<1/2>

<2/2>目次

J3は「当初考えていた以上に上手くいっている」

Jリーグのチャレンジは「Bリーグも見習うべき」

DAZNマネーは「分配より投資に回すべきだった」

J3は「当初考えていた以上に上手くいっている」

──WEリーグに続いて、今度はJリーグについてお話を伺いたいと思います。大河さんが銀行を退職されてJリーグに入られたのは2010年。今からちょうど10年前ですね。

大河 実は明後日の11月1日で丸10年になります(笑)。

──そうでしたか! その後、管理統括本部長を経てJリーグ理事、さらにはJリーグ常務理事を歴任されながら、Jリーグクラブライセンス制度の導入やJ3リーグ創設に尽力されました。15年にBリーグのチェアマンとなられて以降も、その後のJリーグの歩みをウォッチされてこられたと思うのですが、ご自身が関わった制度設計の「その後」をどうご覧になっていますでしょうか?

大河 クラブライセンスに関して、今のコロナ禍の状況を見ていて思うのは、やっぱり「債務超過しなければいい」くらいのルールだと、いざという時にはしんどいなって思いますよね。本当かどうか知らないけれど、プロ野球だと内部留保が数十億円とか言われています。それに対して、そんなに持っているJクラブはないですから。

──クラブライセンス導入のそもそものきっかけは、放漫経営で危機的な状況に陥ったクラブが続出したところから始まっていますからね。

大河 大分トリニータ、東京ヴェルディと続きましたからね。ですから、常日頃のモニタリングをしっかりやっていこうというのが、発想の原点でした。ただし最初に作ったものから、少しずつ制度を変えていますよね。たとえば3期連続赤字というのは、ある程度は留保されるようになったじゃないですか。100万とか200万の赤字が続いて、クラブが萎縮してしまうのはどうかという意見は、以前からあったのですよ。それでも最低限の歯止めは、今でも必要だと僕は思っていますけれど。

──なるほど。ではJ3については、いかがでしょう?

大河 J3については、当初考えていた以上に上手くいっているのではないかなって思いますね。当時、専務理事だった中野(幸夫)さんとは、以前から「J2が22チームまで来たからどうしよう?」という話はしていました。12年でJ1J2で40クラブになって、その次の年に(FC)町田ゼルビアが落ちてしまったと。もともと同じ志を持った(Jリーグの)会員が、プロアマ混合のJFLになってしまっていいのか、という疑問が生じたわけです。

──当時の町田の番記者が「J’s Goalに町田のエンブレムが消えてしまったのはショックだった」と語っていたのをよく覚えています。

大河 まさに町田の降格が、JFAJ3創設を提案する上で、格好の材料になりましたね。ただし、最初は反対されましたよ。田嶋さんからも、リーグのクオリティが担保できるのか、という主旨の疑義をいただきました。でも、それから6年経ってみて、どうですか。それぞれのクラブが、それなりに成長していると思いませんか?

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