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フットボール先進国から見える「Jリーグのすごいところ」 佐伯夕利子(日本プロサッカーリーグ常勤理事)<1/2>

 今週は、昨年3月12日にJリーグ常勤理事に就任した、佐伯夕利子さんにご登場いただく。当WMJリーグの常勤理事にお話を伺うのは、2年前の米田惠美さん以来のこと(参照)。米田さんと入れ替わりで常勤理事となった佐伯さんについて、村井満Jリーグチェアマンは「よりフットボール寄りの人材を」という主旨のコメントを会見で残している。

 佐伯さんは1973年、イランのテヘラン生まれ。航空会社勤務の父上の転勤に伴い、その後も日本、台湾、スペインでの生活を経験する。そして18歳にして、スペイン移住とサッカー指導者を目指すことを決意し、2003年に日本のS級ライセンスに相当する「NIVEL III」を取得。スペイン3部のプエルタ・ボニータで、トップチームを指揮することになった時は日本でもニュースになった。その後、アトレティコ・マドリーやバレンシアCFを経て、12年勤めてきたビジャレアルCFの育成部門から2年間限定でJリーグに転籍している。

 佐伯さんのインタビューは、先週にYAHOO!個人ニュースで掲載したが、本稿はその完全版となっている。テーマは大きく2つ。まず、われわれが気づかないJリーグの「すごさ」について、佐伯さんの言葉から可視化すること。そして、ユニークなキャリアを持つ彼女を、なぜJリーグは必要としたのかを明らかにすること。幸い、どちらも手応えを得ることができたので、満を持して皆さんに共有することとしたい。(2020年12月18日にリモート取材。トップ写真提供:佐伯夕利子氏

<1/2>目次

*なぜJリーグはスタンドに観客を入れられるのか?

*常勤理事に就任するまでの知られざるプロセス

*常識や習慣にリフレクションするJリーグの習慣

なぜJリーグはスタンドに観客を入れられるのか?

──佐伯さん、今日はよろしくお願いします。まずは近況から伺いたいと思います。スペインから帰国されたのはいつでしょうか?

佐伯 11月30日に羽田空港に到着後、14日間の自主隔離を経て、ここ数日はJFAハウスに来て仕事をしたり、その他にもリモート対応をしたりという感じです。

──帰国したのは、いつ以来になりますか?

佐伯 スペインでは(1年で)30日間の休暇を必ず取らなければならないんです。とはいえ、サッカークラブで一度に30日を消化することは、あまり認められていません。私の場合は外国人ということもあるので、夏に20日間、冬に10日間の休みを取得して、年に2回は必ず帰国していました。ですので、最近帰国したのは去年(19年)の正月になります。夏は帰れなかったので、ほぼ1年ぶりということになりますね。

──先日、Jリーグの試合会場を視察されて、観客がいることに感動したというツイートをされていました。ヨーロッパから久しぶりに戻ってきた感覚だと、スタンドにお客さんがいる光景というのは、やはり新鮮な感動でしたか?

佐伯 おっしゃるとおりです。あまりにも見通しの立たないスペインという国から来ると「本当に観客を入れているよ、Jリーグ!」って(笑)。他人事のようで大変申し訳ないんですけど、すごいなって思いました。もちろん常勤理事として9カ月ですから、これまでの経緯については理解していました。Jリーグがコロナ禍の中でいろいろ試行錯誤をしながら、最初は無観客の状態で再開して、少しずつ観客を入れていたことも知ってはいました。でも、実際に見てみると「本当に入れているんだ!」という感覚でしたね。

──リーガ・エスパニョーラは、現在も無観客で試合が行われています。ヨーロッパ各国のほとんどは、今もそういう状況で試合が行われているんでしょうか?

佐伯 もちろん国や地域によって違いがあります。いったんは観客を入れてみたけれど、自治体からノーが出て無観客に戻したケースもあるようです。スペインに関しては「とにかく全試合を消化しよう」ということで、必死でクラスターの発生を抑え込もうとしている感じですね。

──感染防止に必死なのはJリーグも同じではあるんですが、スペインと違ってある程度の観客を入れられる理由について、佐伯さんはどうお考えでしょうか?

佐伯 たとえば「声を出さないでください、手拍子や拍手で応援してください」というガイドラインやプロトコルというのは、紙面上の作業ですので、いくらでもできます。スペインでも、相当分厚いプロトコルを作っているんです。でも、それを守るのは顔も名前も知らない人たちで、要は他者にパスを渡す感じの「お任せ」になるわけですよ。そこに信頼関係がなければ、いくらルールを作っても、まったく無意味になってしまうんですね。

 残念ながらスペインでは、観客がルールを守れないという前提からプロトコルを作るしかない。これが日本だと、選手のため、クラブのため、そしてリーグのためにルールを守るのが当たり前という文化です。やっぱり国民性の違いなんでしょうけれど、観客を入れる、入れないという判断は、そこの部分が大きなポイントなんだろうと思っています。

──なるほど。試合会場以外で、久しぶりの日本で気づいたことはあります?

佐伯 そうですね。まずは繁華街を歩いている人の数が少なくなったこと。それから東京に暮らしている方々と話していて感じるんですが、クタクタに疲れている人が少なくなったように感じますね。

──それはユニークな見方ですね。リモートワークが推奨されるようになって、通勤電車に揺られることが少なくなったことも影響しているんでしょうかね。

佐伯 それはあるかもしれません。東京の街から、ピリピリした感じがなくなったような気がしましたね。自分たちのライフスタイルや、人生の設計など、皆さんの日々が大きく変わってきているんだろうなと思いました。

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