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【無料公開】ARによる新世代スポーツ「HADO」が目指す世界観 福田浩士(株式会社meleap)✕岡田武史(株式会社今治.夢スポーツ)

■「大事なのは自分自身がリスクを冒すこと」

──プロリーグを作るとなれば、マネタイズしていくことが大切だと思います。そこでぜひ、岡田さんにスポンサー営業の極意を伺いたいんですけれども。

福田 ぜひ、お願いします。プロリーグのマネタイズポイントは、いろいろ考えてはいるんです。最近は「投げ銭」という切り口も考えているんですが、やっぱりスポンサー営業も大事だなって思うんですよね。

岡田 スポンサー営業に関しては、このコロナ禍で、今までの発想が通用しなくなっているように感じています。「露出がこれくらい」という広告宣伝費的なスポンサーではなくて、パートナーとして一緒に何を目指していくかというアクティベーションのほうが重視されるようになりました。たとえば「HADOを使えば、地域のお年寄りがこんなに笑顔で元気になるんですよ」みたいな。

福田 企業名が露出するスポンサーというのは、なくなっていくんでしょうか?

岡田 それは残りますよ。一般消費材の会社というのは、ある程度は効果がありますから。だけど、今回のコロナのように経営が厳しい状況になると、そういったものがまず切られていきますよね。幸い今治の場合、コロナが原因でパートナーから降りたという話は一件もなかったんですよ。黒字も出ている。それはなぜかというと、アクティベーションを重視しながら、パートナーとの信頼関係を築いていたから。スポンサーセールスシートを持って「胸はいくら、背中はいくら」みたいな営業をしていなかったからですよ。

福田 岡田さんの場合、どういうスタイルで営業をされているんですか?

岡田 僕の場合「営業しない営業」なんですよ。トップセールスをやる時も、僕は「パートナーになってください」「スポンサーになってください」とは絶対に言わない。その代わり、理念を語るわけ。夢のある話をバーっと語る。「一緒に夢を追いませんか? 人生、一度きりですよ」なんてことを言うと、だんだんその気になってコロッと(笑)。「岡田に近づくと、金を出したくなるから気を付けろ」と言われるようになる。

一同(笑)。

岡田 もちろん、夢を語っているだけじゃダメですよ。大事なのは、自分自身がリスクを冒すこと。その上で、チャレンジしているかどうか。夢を語っている本人が命懸けでチャレンジしていたら「この人と一緒にやってみようかな」って思い始める。「その先に何があるんだろう?」って、見てみたい気持ちにもなるんですよ。

──われわれDeloitte Digitalも、ソーシャルインパクトパートナーとしてFC今治に関わらせていただいているんですけれども、やっぱり岡田さんが語る夢を一緒に見させていただきたいという思いはありますよね。

岡田 僕が今治に来たばかりの頃、地元の皆さんは半信半疑だったと思います。それが5000人のスタジアムができて、チームも四国リーグからJFL、さらにはJ3にまで到達して、皆さんがわれわれを見る目も変わってきましたよね。「あれ? 俺たち、できるかもしれない」って、メンタルそのものが変わり始めていったわけです。

福田 それこそ、岡田さんが語り続けていた夢が、ひとつひとつ形になった結果ですね?

岡田 「どうせ何も変わらない」と思っていた人たちが変わり始めた。そういう部分に、僕らの価値があると思っているんです。ただし、それは数字に表すことができない。お金やパーセンテージで換算はできないんだけど、そういったものが求められる世の中になっていくという確信はありました。ほら、そう聞いていると、だんだんお金を出したくなってきたでしょ(笑)?

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