宇都宮徹壱ウェブマガジン

「#Jリーグの日」と「日本列島改造論」 今年の5月15日に東北にて考えたこと

 今年の5月15日、皆さんはどこで、どのようにお過ごしだっただろうか?

 いうまでもなく、この日は1993年にJリーグが開幕した日。SNS上では「Jリーグの日」というハッシュタグで、さまざまなサッカーファンが思い思いにツイートしていた。今年は、Jリーグ開幕から28年。25年でも30年でもなく、いささかの半端感は否めない。おそらく、今年の5月15日が土曜日だったことで、いつになくイベント感満載だったのだろう。この日が週末だったのは、2016年以来5年ぶり。土曜日だったのは2010年以来11年ぶりである。

 この日はJ1が8試合、J2が6試合、J3が1試合、計15試合が北は宮城から南は沖縄までで開催された。まさに「#Jリーグの日」にふさわしい1日。思えば1993年は、試合数は5試合、オリジナル10のホームタウンは鹿島が北限で、南(というか西)は広島だった。今さらながらに、隔世の感を覚えずにはいられない。多くのJリーグファンが、ホームであれアウェーであれ、この日をスタジアムで迎えたことだろう。

 かくいう私は(日記にも書いたように)、先週末は東北を巡っていた。県でいえば、秋田、岩手、そして福島。いずれもJクラブがある県だが、目的地は微妙にずれている。金曜日はにかほ市、土曜日は新庄市に宿泊して、日曜日にようやく福島ユナイテッドFCの試合を取材している(ちなみに会場は福島市ではなく郡山市)。5月15日は、象潟(きさかた)駅から羽越線と陸羽西線を乗り継いで、新庄駅でいったん下車。ホテルに荷物を預けてから、大石田駅まで足を延ばし、バスに40分揺られて銀山温泉までを往復している。

 もちろん旅行ではなく、撮影取材だ(だから温泉にも浸かっていない)。この夏に「47都道府県のフットボールがある風景」の写真集を出版するのだが、山形に関してはNDソフトスタジアム山形がある天童市の写真しかなかった。どうしてもスタジアム以外での「山形らしい風景」がほしいのだが、締め切りも迫っているし予算も限られている。そこでフォトジェニックな風景が期待できそうな、尾花沢市の銀山温泉に的を絞ることにした。撮影を終えて新庄に戻った時、その日のJの試合はすべて終わっていた。

 かくして今年の5月15日は、5年ぶりの週末で11年ぶりの土曜日だったのに、私はメモリアルデーをスタジアムで迎えることはなかった(ハッシュタグを付けたこのツイートを発したのは、ようやく夕食にありつけた21時過ぎのことである)。ただし、フットボールの現場から離れた場所で取材していたことで、逆に「Jリーグがこの国にもたらしたもの」について、いろいろと考える契機になったのも事実である。

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