宇都宮徹壱ウェブマガジン

新しいクラブ支援の形「トークン」は定着するか? 田中隆一(株式会社フィナンシェCEO)<2/2>

新しいクラブ支援の形「トークン」は定着するか? 田中隆一(株式会社フィナンシェCEO)<1/2>

<2/2>目次

*渋谷シティFCとトークンが「相性がいい」理由とは?

*クラブのサポートだけでない「コミュニティ」の魅力

*スポーツの投資先が「現在」ではなく「未来」になる

渋谷シティFCとトークンが「相性がいい」理由とは?

──このトークンですが、国内のサッカークラブで最初に導入したのが、J1の湘南ベルマーレ。その次が渋谷シティFCで、3番目がJ3YS横浜とのことですが、今後さらに導入するクラブは増えていきそうですか? 南葛SCも始めるそうですが。

田中 そうですね。湘南さん、渋谷さん、そしてYS横浜さんの事例から数値のインパクトを立てることができたので、サッカー業界の皆さんにはすごく興味を持っていただけました。特に渋谷さんに関しては、これから上がっていくクラブですし、フットワークも軽いので、Jリーグではないクラブからもお問い合わせをいただいています。

──JFLから都道府県リーグまでのカテゴリーを、私は「ハーフウェイ」と呼んでいるんですけど、このトークンはJクラブよりもハーフウェイカテゴリーのクラブに向いているような気がします。いかがでしょうか?

田中 トークンの価値の持たせ方次第で、どちらにも適用できる可能性はあると考えております。カテゴリーを上げていく中で、当然ながらクラブの経営規模も大きくなっていきますし、サポーターの数も増えていくでしょう。そうした期待感とトークンは相性がいいと思いますし、実際に渋谷さんがやっているように、トークンを通してファンやサポーターが運営に関われるようになる魅力もあると思います。

──実際に渋谷シティFCが、トークンを使ってファンや地域をどう巻き込んでいるのか、今回同席いただいているフロントの小泉さんに伺いたいと思います。小泉さん、都リーグ1部の渋谷シティがトークンを始めた理由ですが、やはりクラブの伸びしろという部分が関係しているのでしょうか?

小泉 そうですね。われわれが持っている、Jクラブにはない強みとして、まだまだファンやサポーターが増える余地があるというのがあります。たとえば、あるJ1クラブに年間チケットを買ってくれるファンが1万人いるとして、それが10倍とか100倍とかに増やしていくのは、なかなか厳しいことだと思います。逆にわれわれのような、都リーグに所属しているクラブのほうが、カテゴリーが上がるたびにどんどんファンの数を増やしていって、それに合わせてトークンの価値が上がっていく可能性を秘めているわけです。

──なるほど。そこで田中さんにお聞きしたいのですが、トークンを導入すれば上手くいきそうなクラブの条件というものを、いくつか挙げていただけますでしょうか?

田中 まず、本気で上のカテゴリーを目指そうとしているクラブであること。そしてサッカーだけではない部分でも、ファンをしっかり巻き込んでいる体制づくりができていること。SNSをはじめとする発信力があり、自分たちのストーリーをしっかりと伝えられること。そしてフットワークが軽く、さまざまな企画を考えて実行できること。このあたりが重要なのかなと思っています。

──いずれの条件も、渋谷シティにぴったり合致していますね(笑)。むしろフィナンシェさんとしても、渋谷シティにトークンを活用してもらうことで、メリットを感じる部分はあるのではないでしょうか?

田中 それはめちゃくちゃ感じていますね。思ったらすぐ試して、それをまたフィードバックしていただけています。渋谷さんのようにフットワークの軽いクラブが、トークンの活用をどんどん広げていくことで、それが地域活性にもつながる可能性は十分にあるでしょう。そういった部分についても、導入を検討しているJクラブさんにも参考になるんじゃないかと思っています。

──ところでサッカー以外の競技団体でも、トークンを導入している事例はありますか?

田中 Bリーグだと仙台89ERSさんですね。あとはアイスホッケーの横浜GRITSさん。設立して2年の若いチームです。

──ファンを増やすという意味では、サッカーよりもむしろマイナー競技のほうが、親和性は高いのでしょうか?

田中 そうかもしれませんが、同時に難しさも感じています。サッカー好きな人はそれなりの数がいますし、ITリテラシーが高い人も一定数、含まれていますよね。ですから「渋谷シティはこんな面白いことをやっているんだ!」ということを知って、それがトークン購入のきっかけになると思うんですよ。でもマイナースポーツの場合、そういったことが頻繁に起こるかというと、ちょっと難しいかもしれませんね。可能性も感じてはいるんですが。

(残り 3285文字/全文: 5252文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ