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【無料公開】チーム崩壊はロンドンから始まっていた? なでしこJAPANの敗北と再生をめぐる対談<1/2>

石井和裕氏提供

女子ならではのサッカーの面白さ

──今でこそ、なでしこの試合がゴールデンタイムでライブ中継されるようになりましたけど、おふたりが女子サッカーを観戦するようになった90年代前半って、女子サッカーそのものが日の当たらない存在でしたよね。

石井 なでしこブームの前に一度だけ、ものすごく盛り上がった時があるんですよ。現役のノルウェー代表とか中国代表とかがL・リーグでプレーして、和田アキ子さんが応援ソングを歌ったりして。

上野 バブルでしたねえ。リンダ・メダレン(ノルウェー代表)とかプレーしていましたから。特に90年代後半の盛り上がりは今以上でした。

──結局、シドニー五輪(2000年)に出場できず、その前後で廃部となるチームが続出しましたよね。

石井 そうです。本当にバブルは一瞬で、一気に女子サッカー界は冷え込みましたね。それからアテネ五輪予選まで、ずっと冷えきった状態が続いていて、女子サッカーを観に行くという土壌もなかなか生まれなかったです。僕自身はマリノスがメインでしたけど、女子サッカーもサッカーのひとつとして楽しんで観ていました。

──その後、アテネ(04年)、北京(08年)の2大会連続五輪出場を経て、11年ワールドカップの優勝で空前のなでしこブームが起こるわけですが、あの大会はおふたりともドイツでご覧になっていたんですか?

上野 僕は前半だけです。

石井 僕は決勝戦だけですね。

──あ、入れ違いだったんですね?

上野 ちょうどカズさん(映画監督の中村和彦氏)が『アイ・コンタクト』の題材としたろう者女子サッカーの合宿に参加していました。ですからあの決勝は、合宿地の宿でカズさんと一緒に観ていました(苦笑)。

──それはちょっと残念でしたね。その後のなでしこブームはどうご覧になっていました?

石井 僕はすごくうれしかったですね。なぜかというと、女子ならではのサッカーの面白さというのがあって、それが今まではほとんど一般には知られていなかったんですよ。それがようやく、あのワールドカップの優勝によって女子サッカーが注目され、男子とは違った魅力があることを知ってもらえる環境になった。その意味では、僕はあのブームが本当にうれしかったです。

上野 今、石井さんが言われたみたいに、女子ならではのサッカーの魅力って、絶対にあると思うんですよ。僕の場合、Jリーグを観て、TVでリーガ・エスパニョーラとかプレミアとかブンデスとかを観て、それと同じように女子を観ているという感じですね。しかも女子の場合、土壇場で同点に追いついたり逆転したりする試合展開がけっこう多いんです。だから普通に面白くて女子サッカーを見ていていた感じでしたね。

──だからこそ、そうした面白さが一般に知られるようになって、うれしかったと。

上野 そうですね。実際、「TASAKI対ベレーザの試合のほうが、昨日のプレミアの試合より面白かった」というのって、普通にありましたから(笑)。その面白さにようやく気付いてもらえた、といううれしさはありました。

──まさに2011年という年は、「女子サッカーの面白さが『発見』された年として銘記されるでしょうね。

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