宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料公開】チーム崩壊はロンドンから始まっていた? なでしこJAPANの敗北と再生をめぐる対談<1/2>

「やっぱりこうなってしまったか」

──そろそろ本題に入りましょう。今回のリオ五輪予選は非常に残念な結果に終わりました。今回の結果を受けての率直な気持ちを教えてください。まずは石井さんから。

石井 大変残念な結果ではありますが、ある程度の心の準備はあったので、予選落ちが決まった瞬間っていうのは「やっぱりこうなってしまったか」という感想です。ただ翌日以降は、かなりヘビーにダメージは残りましたね。

──後からじわじわくる感じだったと。上野さんはいかがでしょう?

上野 石井さんが「やっぱりこうなってしまったか」とおっしゃっていましたが、僕はメディアとして見ていて、最初に危機を覚えたのはアメリカに敗れたロンドン五輪の決勝だったんですよね(1-2)。あの試合を現地で観て、「このチームばらばらだな」と思いました。メディアの盛り上がりとは別に「これはまずい状態にあるんじゃないのかな」と思ったのが最初でした。その後、宮間あやに『Number』で直接インタビューしたんですが、あの時の危機感が間違いでなかったことが確認できました。

──上野さんの宮間インタビューって「ドーハの悲劇、20年目の真実」という特集の号でしたね。

上野 そうです。それで言葉は悪いかもしれないけど、「いつかボロが出るんだろうな」っていうのがずっとあったんですね。去年のカナダでの女子ワールドカップでそれが出るんじゃないかなと思っていたんですけど、組み合わせに恵まれたりブラジルが途中で敗れたりして、何とか決勝まではたどり着くことができた。そこでアメリカと対戦して、はっきりと実力差が出ましたよね。あの時は「これからが大変だろうな」という思いがありましたから、今回の予選もある程度の覚悟はできていました。

──もうすぐ破綻が起こるというのは、おふたりとも薄々感じていて、それがたまたま今回のタイミングだったということですね?

石井 そうだと思いますね。仮に予選を突破したとしても、本大会のどこかのタイミングで破綻していたんじゃないですかね。

上野 僕もまったく同意見です。個人的には、ぎりぎり2位で予選は突破するだろうけど、本番ではグループリーグ敗退もあるかなっていう予想でした。

──シドニー五輪でのダメージを考えると、やはり五輪出場はキープしておきたかったですよね。石井さんはどのあたりから、なでしこの危機を感じていましたか?

石井 今回も含めて(ロンドン五輪以降の)合宿を見ていると、ほとんどメンバーが変わらずに継続していたじゃないですか。外から見て「うまくチームが前進していないんだろうな」という印象をもって見ていました。つまり過去の遺産を食いつぶしながら試合をしていると。どこかで限界を迎えるんだろうなというのはずっと思っていました。

──今回の場合、オーストラリアとの初戦でつまずいたのが、直接的な予選敗退の原因だったじゃないですか。「たられば」になってしまいますが、初戦の対戦相手がベトナムだったら、また違った結果になっていましたかね?

上野 もしそうなっていたら、また違った歴史もあったのかなと思いますけど。でも1位突破は厳しかったと思いますね。

石井 僕はあまりそう思ってなくて、例えば初戦がベトナムだったとして、そこでスコアレスドローに終わって、2戦目以降はプレッシャーを抱えながらの戦いを余儀なくされていた可能性は十分にあったと思います。実際、予選の最初の頃って、ベトナムはかなり頑張っていましたから。そういう意味では、対戦順はあまり関係なかったと思います。

──それにしても今回のオーストラリアは、日本との初戦に入念な準備をしていましたよね。

上野 そうですね。一番乗りで来日して、日本の寒さにしっかり身体を慣らしながら、徹底的に分析も行っていました。実際、高いプレスで宮間が潰されているのを見て、「ああ、かなり研究しているな」と思いましたね。

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