宇都宮徹壱ウェブマガジン

人口112万人の大分県に2つのJクラブは共存可能なのか 百年構想クラブ、ヴェルスパ大分の「次の一手」<2/2>

人口112万人の大分県に2つのJクラブは共存可能なのか 百年構想クラブ、ヴェルスパ大分の「次の一手」<1/2>

<2/2>目次

*2014年にJ3に参入するチャンスがあった?

*「温泉街のクラブ」を意識させるストーリー戦略

*ホームタウンの近くに「宇宙港」ができたなら

■2014年にJ3に参入するチャンスがあった?

 ──ヴェルスパ大分は、前身のサッカー部が立ち上がった2003年から、九州リーグ昇格を目指していたという話を先ほど伺いました。今回、百年構想クラブとなり、いよいよJリーグを本気で目指すことになったわけですが、その方針が明確に打ち出されたのはいつからだったんでしょうか?

清原 それには前段があって、実は2014年に創設されたJ3に、ウチも自動昇格できるかもしれないという話があったんですよ。

──おっと、その話は初耳です! J3立ち上げの際、JFLから9クラブが参加しましたが、実はヴェルスパにもお声がかかっていたというわけですね?

清原 そうです。あの時「行きます!」と言えば、たぶんわれわれもJ3クラブになっていたと思います。ただし13年の順位は15位でしたし、Jクラブになるための準備は何もできていませんでしたからね。

──そもそもJ3そのものが、見切り発進的なところがありましたよね。それは参加するクラブも同様でした。実際、経営的に苦戦するクラブも少なくなかった一方、SC相模原やブラウブリッツ秋田のようにJ2への昇格を果たしたクラブもあります。ヴェルスパさんも「あの時、思い切ってJ3に飛び込んでいたら」と考えたりはしなかったんでしょうか?

清原 当時のウチの状況でいえば、経営面でも集客面でもJリーグが定めるハードルには及ばなかったですね。実際、ギリギリでクリアしてJ3に上がったものの、その後は苦労されているクラブも少なくなかったと聞きます。せっかくJ3に上がっても、すぐに経営的に立ち行かない状況に陥ってはいけない。だったら、力を蓄えてから最短でさらに上を目指すような基盤を作っていくべきであると判断しました。

──その判断は正しかったと言えるでしょうね。そもそも経営面や集客面という話でいえば、すでに大分トリニータという巨大すぎる存在があり、そことの差別化という話にどうしても行き着くと思うんですよ。その点については、どうお考えだったのでしょうか?

清原 先ほど宇都宮さんもおっしゃっていましたが、あちらはどちらかというと行政主体でできたクラブ。われわれは民間ゆえの強みというものを、まずは出していきたいと思っています。もちろん、われわれがトリニータさんから学ぶべき点は、たくさんありますし、しっかり学ばせていただきたいですが、ただ真似をすればいいという話でもないですよね。

(残り 3920文字/全文: 5056文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ