宇都宮徹壱ウェブマガジン

森保スタイルは「ジャパンズウェイ」か? 東京五輪の日本代表を総括する<2/2>

「メダルに届かなかった」結果は妥当か? 東京五輪の日本代表を総括する<1/2>

<2/2>目次

*もしも香川真司や本田圭佑がこのチームにいたら?

*カタール大会の日本が「ベスト16が妥当」な理由

*指導者たちの頑張りが「そろそろ限界値に来ている」

  ■もしも香川真司や本田圭佑がこのチームにいたら?

 ──しっかり対応してくる相手に、東京五輪での日本代表は「ソリューションを持ち得なかった」ということで、ここから指揮官の森保さんについて考えていきたいと思います。その前に私から問題提起したいのは「U-24ではなくU-23だったら、日本はベスト4以上の結果を出せたのか」。というのも、コロナ直前にタイで開催された2020年のAFC U-23選手権で、日本は1勝もできずにグループ最下位に終わりました。皆さん、もう忘れているかもしれませんが(笑)。もしも東京五輪が延期されなかったら、日本代表はどうなっていたと思います?

 五百蔵 本大会前に絶不調だったチームが、本番に入ると確変して勝ち進むこともあるし、逆のパターンもわれわれはけっこう目にしているじゃないですか。ですから、そこの部分は何とも言えないですよね。それでも確実に言えるのは、五輪開催が去年でも今年でも、それによってメンバーに多少の変更があっても、森保さんのサッカーは変わらなかったと思います。それは森保さんが、そういうタイプの指導者だからです。

 ──森保さんって、なかなか本心を語らないじゃないですか。五百蔵さんは、どういうタイプの指導者だと思っています?

五百蔵 まず、めちゃめちゃ勝ちにこだわる人ですよね。それでいて、選手にめちゃめちゃ考えさせる指導者なんですよ。そこが面白いし、すごいところだと思っています。

──なるほど。普通に勝ちにこだわるタイプなら、選手を型にはめがちですよね? 

五百蔵 そう! 森保さんは、あえて選手を泳がせていて、それでも最終的には「勝ちにこだわるサッカー」に落ち着くんです。もし香川真司や本田圭佑がいたら、ものすごく抵抗を感じていたかもしれません。だって「リアクションサッカー」ですから(笑)。ボランチのところで時間を作って、つなぎ倒すようなことを一切許さないようなサッカーですし、そのための人選もしていますからね。

──ボランチにボールが渡ったら、そこから一気に縦へ、というサッカーですからね。香川や本田が抵抗を感じるのも当然で、それってハリルホジッチが目指してサッカーにかなり近いものがありますよね。 

五百蔵 というか、僕は「これはハリルのサッカーだな」と思いながら見ていました。前線の選手が裏を取る。縦に走るためのポジショニングをしていて、縦方向にボールが出たら手数をかけずにボックスまで迫っていく。中央から行くにしても、サイドを経由するにしても、二手か三手くらいでゴール前に到達できるようにみんなが意識していて、最後のところは持ち前のテクニックやコンビネーションで仕留める。プレッシングは、あれほど極端ではありませんでしたが、まさにハリルさんが目指していたスタイルなんですよね。 

──ハリルホジッチが日本に植え付けようとしたサッカーが、ロシア大会の直前にいったん否定されて、けれどもジャパンズウェイが期待された森保さんのチームで復活するというのは、非常に面白いというか歴史の皮肉というか。

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