受け継がれる「フロンターレらしさ」とは何か 若きプロモーションリーダーに訊く<1/2>
今週は久々にJ1クラブ、それも川崎フロンターレにフォーカスする。といっても、もちろんWM独自の視点から、である。きっかけとなったのは、こちらの動画だ。
東京五輪ただなかの8月1日に発表された、川崎のマスコットカブレラと、陸前高田市ゆめ大使たかたのゆめちゃんの「交際宣言」である。ファンやサポーターはご存じのとおり、川崎は東日本大震災が発生した2011年以降、500キロの距離をものともせず、継続的な支援と交流の活動を続けてきた。
実は2016年、私は陸前高田で開催された『高田スマイルフェス2016』の模様を現地で取材している(参照)。これが、震災から5年後のこと。それからさらに5年が経っても、両者の交流は弛まずに続き「3.11」に関係なく、こうした発信がなされていることに、まず驚かされた。
今回の取材に対応していただいたのは、タウンコミュニケーション部プロモーションリーダーの肩書を持つ、若松慧さん32歳である。横浜市出身、大学卒業後に吉本興業でキャリアをスタートさせ、2014年に川崎フロンターレに入社。この若さで、今はホームゲームのイベントの仕切りを任されている。
川崎のイベントといえば、まず思い出されるのが「算数ドリル」や「かわさき応援バナナ」を生み出したことで知られる、部長の天野春果さん。そして現FRO(Frontale Relations Organizer)の中村憲剛さんも、現役時代は選手たちの先頭に立ってイベントに積極的に参加していた。
果たして若松さんは、偉大な先達たちから「フロンターレらしさ」というものを、どう受け継いでいるのか? それが、今回の取材のテーマである。川崎サポはもちろん、クラブにおける伝統の継承に関心がある他サポにも、最後までお読みいただければ幸いである。(取材日:2021年8月27日@川崎市)
<1/2>目次
*なぜ8月1日に「交際宣言」が発表されたのか?
*陸前高田との交流から生まれた「青椿」というお酒
*どちらが大変? 吉本興業とフロンターレの仕事
■なぜ8月1日に「交際宣言」が発表されたのか?
──今日はよろしくお願いします。本題に入る前に、若松さんのお仕事の内容を確認させてください。「タウンコミュニケーション部プロモーションリーダー」ということですが、天野さんが今いらっしゃる部署とは違うのでしょうか?
若松 ほぼ一緒ですね。もともと「プロモーション部」という部署があって、そこが広報と集客を担っていたんですけれど、今年の組織改編でタウンコミュニケーション部となりました。イベントなどを通じてホームタウンの人たちとの接点をどんどん増やしていきながら、地域の活性化を図っていくというのが主な仕事です。天野は今、タウンコミュニケーション部の部長ですが、今も自らイベントを企画したりしています。
──若松さんはプロモーションリーダーということですが、ご自身でもイベントの企画を立案して、それを天野さんがゴーサインを出したり、ダメ出ししたり、という感じなんでしょうか?
若松 そういう時もありますが、ご存じのとおり天野は去年まで東京オリパラの組織委員会に出向していて、今日もパラの業務のためオフィスにはいないんですよ。かなりバタバタしている感じなので、今は僕が中心になって現場を回している感じで、要所要所で天野から「こうしたほうがいよ」とアドバイスを受けています。
──今回の取材のきっかけとなった「たかたのゆめちゃんとカブレラ交際宣言」ですけど、個人的には「そうきたか!」という感じで、非常に興味深かったです。かなりの反響があったと思うのですが、いかがでしょうか?
若松 たくさんの反響をいただきましたね。動画をご覧になったかと思いますけれど、カブレラが中村憲剛FROの引退会見のような感じで登場して、ゆめちゃんとの交際を宣言するという(笑)。おかげさまで、関連グッズの売れ行きもいいです。
──なるほど(笑)。それにしても、タイミングが絶妙でしたよね。ちょうど東京五輪期間中で、田中碧や旗手怜央は代表で活躍していましたけれど、フロンターレはずっと試合がない。そうした中での「交際宣言」だったわけですが(笑)。
若松 実はこれ、当初は今年の5月に(陸前高田市のグルメ屋台が並ぶ)陸前高田ランドでやる予定だったんです。けれども首都圏での感染者が増えていった時期でもあったので、いったん見送らせていただいたんです。
──それで8月1日、あの動画がアップされていましたが、もともとはクラブのファン感謝デーだったそうですね。
若松 そうなんです。そのファン感謝デーも中止になってしまったんですが、こういう時代だからこそ、少しでも皆さんの心が和むような発信をしたいという思いはありました。それと、フロンターレと陸前高田との10年間の交流もあります。より強固な関係にしていきたい、という思いが込められた「交際宣言」と捉えていただければ幸いです。
──それにしても、船橋市のふなっしーとか、深谷市のふっかちゃんとか、佐野市のさのまるとか、出演者が本当に豪華ですよね。マスコットやゆるキャラ好きの方には、ぜひとも見ていただきたい動画なんですが、スケジュール調整がかなり大変だったのでは?
若松 さあ、どうでしょうね(笑)。
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