宇都宮徹壱ウェブマガジン

「若い書き手の成長が日本サッカー界の財産になっていく」 「すたすたぐるぐる」の西葛西出版が目指すもの<2/2>

「若い書き手の成長が日本サッカー界の財産になっていく」 「すたすたぐるぐる」の西葛西出版が目指すもの<1/2>

 

<2/2>目次

*「本を作れば、今度は本が仕事をしてくれる」

*「すたすたぐるぐる」以外のラインナップは?

*西葛西出版は「旅とサッカー」だけではない!

「本を作れば、今度は本が仕事をしてくれる」

──ここからは、西葛西出版が何を目指して、今後は「すたすたぐるぐる」以外にどんな書籍を出そうとしているのか、伺いたいと思います。その前に、なぜ新しい出版社を作ったのか、そこからお話いただけますでしょうか。

中村 それは僕が「本を作っていくなら出版社を作るところからだな」と思ったからです。宇都宮さんは以前、飲み会で「OWL magazineは書籍化すべきだ」とおっしゃいましたよね。僕、わりと宇都宮さんの言うことを何でも受け止めるようにしていて、ブラジルのワールドカップに行った時もそうだったんですよ。

──あの時は「既存の出版社から書籍化すべきだ」と言ったつもりだったんですけどね(苦笑)。

中村 宇都宮さんがブックライターであり続けるために、出版社に対して企画を出したり、編集者と緻密なやりとりをしたりしていることは、純粋にすごいことだなと思っています。僕の場合は社会性に乏しいので、自分の本を出すのであれば自分で出版社を立ち上げるのが、実は一番の早道だと思いました。OWL magazineのみんなと一緒なら、本が作れるという確信もありましたし。それで生まれたのが「すたすたぐるぐる」でした。

──われわれ書き手からすると「出版社にどうアプローチするか」という発想から入るのですが、いきなり出版社を作ろうという発想が、いい意味でぶっ飛んでますね(笑)。

中村 もともと起業しようという考えは頭の中にあって、タクシードライバーをやりながら延々と考えていました。起業をするときに大切なのは、自分がやってきたことや得意なことや好きなこと、そして労働集約型ではないということ。逆に、働いた分だけ時給が稼げるという仕事だと、僕はすぐに心も身体もダメになってしまいます。もちろん出版社の経営も労働力は必要ですが、本を作ってしまえば、今度は本が仕事をしてくれます。最初はむちゃくちゃ大変ですが、ビジネスモデルとして筋は悪くないと思います。

──出版不況の嵐の中での船出となることについては?

中村 確かに「本が読まれない時代にどう立ち向かうか」という課題はあります。それでも僕には、やりたいこともあるし、作りたい本もある。そして何より、OWL magazineで育ててきた書き手もいます。彼らを出世させるための本が出せれば、それが名刺代わりになって次の仕事につながります。最初の2~3年は修羅の道ですが、それでも本が溜まっていけば、本が仕事をしてくれるようになると思います。

──OWL magazineで育った五十嵐メイさん、今の話を受けてどうでしょうか?

五十嵐 私はライター経験すらない状態でOWL magazineに入ったので、自分が書籍に携われるようになるまでは、まだまだ長い年月がかかると思っていたんです。でも、こうして身近に本を作るプロジェクトがあって、実際に本ができていくプロセスを見ていると、自分もそこに向かっていけるような気がして、とてもワクワクしています。

──それにしてもnoteで出版社の創設メンバーを呼びかけて、それで編集や実務のプロが集まってくるんですから、何やらロールプレイングゲームのような展開ですよね。

矢島 私なんか「興味あります!」ってDMを送ったら、13秒で返信が来ましたからね(笑)。

大城 僕も中村さんから連絡をいただいて、すぐにお会いすることになりました。実は僕、社会人になって最初に勤務していたのが出版社で、編集者だった時代もありました。雑誌ができた時の喜びを知っています。20年以上前に経験した出版物を作る仕事に、また挑戦できるという思いで副社長に立候補しました。

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