東京パラでの「レガシー」はパリに生かされるのか? ブラサカ日本代表、高田敏志前監督に訊く<2/2>
<2/2>目次
*視覚障碍者ならではのオンラインでのトレーニング
*知られざるブラサカ独自の感染対策ガイドライン
*パリ大会に向けた一歩が踏み出せないのはなぜか?
■視覚障碍者ならではのオンラインでのトレーニング
──ここから、コロナ禍のことについてお聞きしたいと思います。まず、2020年のパラリンピック延期が決まった時、どんなリアクションがあったのでしょうか?
高田 協会のスタッフについてはわからないですが、僕自身は感覚的に「(大会が)なくなることはないだろうな」と思っていました。根拠はないですよ。でも、これだけの準備を費やしてきたんだから、延期はあっても中止はないだろうと。現場のほうは、2月の半ばに合宿をやって、それ以降はずっと活動停止状態。その間「中止だ」「延期だ」という話がメディアでも取り沙汰をされていました。でも、乱暴な言い方になってしまいますけど、僕らがどれだけ騒ごうが、何も変えられないじゃないですか。
──そうですが、選手はとても不安だったと思います。監督として、彼らにどんなことを伝えたのでしょうか?
高田 グループLINEでは、選手から「これからどうなるんですか?」とか「練習はいつ再開されるんでしょうか?」といった質問が寄せられました。選手たちはみんな真面目だから、どんな状況でも練習を続けないといけないと思ってしまうんですよね。だから、まずは考え方を変えるように伝えました。
──何と言ったんですか?
高田 「練習よりも、とにかく生きることが最優先。自分と自分の家族、大切な人たちの安全を確保するように。そのためには、手洗いやうがいを徹底とか、リスクのある行動をとらないとか、とにかくサッカーのことは忘れて安全に過ごそう」という話をしました。
その後は、練習再開まで一切、サッカーの話はしていません。もともと選手には、管理栄養士をつけて365日、食事や体調などのデータ管理をしていました。でも自粛期間中は「お酒を飲んでいいし、食べたいものを食べなさい」と。その代わり練習が始まったら、プロフェッショナルなコーチが、ちゃんとコンディションを戻してくれる。ですから「それまでは、とにかく自分に優しく過ごしなさい」と言いました。
──状況が少し落ち着いたところで、オンラインでのトレーニングを始めたそうですが。
高田 そうです。練習が完全にストップしたのが去年の3月ですが、1カ月くらい経って、選手のほうから「オンラインでトレーニングしたいです」と言ってきたんですね。やることがなくて、ずっと暇だったんでしょう(苦笑)。それでコーチにメニューを作ってもらったんです。ただトレーニングするだけではなく、かならず雑談の時間を設けるようにしました。お互いに話をするだけでも、安心しますからね。
──なるほど。とはいえ視覚障碍者へのオンライントレーニングって、画面を見てもらいながら何かを伝えることができないわけですよね。どういうやり方だったのか、とても気になるところです。
(残り 3686文字/全文: 4969文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ