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7カ月半でクラブの体質を変えた「ヒダリトモ革命」 左伴繁雄(カターレ富山代表取締役社長)<2/2>

7カ月半でクラブの体質を変えた「ヒダリトモ革命」 左伴繁雄(カターレ富山代表取締役社長)<1/2>

<2/2>目次

*昇格の望みが絶たれても支持された「ヒダリトモ革命」

*第14節で首位に立っても「楽観できなかった」理由

*富山に来て初めて「何ら足枷もなく社長ができている」

昇格の望みが絶たれても支持された「ヒダリトモ革命」

──清水時代はずっと単身赴任だった左伴さんですが、富山では奥様と一緒でこちらにお住まいですよね? 実際に暮らしてみて、富山の印象はいかがでしょうか?

左伴 厚木の自宅を売って、富山に移住しようと思ったくらい、こちらの生活が気に入りましたね。社長のオファーをいただいて、初めてこちらに来たのが1月9日。その時はびっくりするくらいの大雪だったんですが、3月からこちらで暮らすようになってからは、すごくいいところだなって感じるようになりました。

 まず、街がきれいですよね。コンパクトシティを謳っているだけに、身近なところで衣食住が揃っている。伝統的なものと新しいものが共存していて、美術館も多い。数少ない戦前からの建物で、富山電気ビルデイングというのがあるんだけど、それをバックに市電が走るところをスマホで撮ると、まさに『三丁目の夕日』の世界ですよ!

──おっしゃるとおり、駅前はすごくきれいですし、市電がすごく発達しているので、旅行者に優しい街だと思います。

左伴 観光資源もそれなりにありますからね。城址公園だったり、遊覧船だったり、富山湾で採れる海産物も美味しいし。本当はもっと自慢していいと僕は思うんだけど、誰も自慢しようとしない。理由を聞くと「金沢のほうが有名ですから」って(笑)。

──むしろ左伴さんのような、県外から来ている人からどんどん発信していくことで、富山の人たちも地元の素晴らしさに気づくんじゃないですかね? それは今季のピッチ上でも表現されていて、終盤まで昇格争いを演じたことで「俺たちはやれる!」と実感できたシーズンだったと思います。実際、コアサポの反応はいかがでしたか?

左伴 第29節の盛岡とのアウェー戦に敗れて終戦となり、今日の最終節もドローで終わりました。最後にゴール裏にみんなで挨拶に行くと、コールリーダーもコアサポも皆さん泣いているんですよ。その時に言われたのが「去年はカターレがどうなっていくのかわからなくて不安だったけれど、社長が来てくれてからクラブの方向性が手に取るようにわかるようになった」と。悔しいは悔しいんだけど、少なくとも不安からは解放された。そう言ってもらえたのは、うれしかったですね。

──盛岡に敗れて、昇格の望みが絶たれた直後、バッシングを受けることはなかったんでしょうか?

左伴 ぜんぜんバッシングを受けなかったし、なぜ昇格できなかったかと聞かれても「来年の新体制報告できちんと話します」とお答えすると、それで皆さん納得していただけます。僕はレギュラーでラジオ番組を持っていますし、ローカル放送のスポーツコーナーにも出演させていただきましたが、どちらも残念という感じではありませんでしたね。

──それこそ、サポーターから「クラブの方向性が手に取るようにわかるようになった」というのが、すべてでしょうね。つまり、左伴さんの情報開示が大きかったと。

左伴 それもありますが、サッカーのサポーターというのは他の競技のファンと違って、クラブ経営のことをよく見ていますよね。「夏の補強資金はあるのか?」とか「マテウスを獲得したら赤字だよね」とか「グッズは通販よりもスタジアムで買ったほうが利益率はいいぞ」とか(笑)。

──そこまで見ていますか!

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