カズへのオファー、アルベルとの思い出、そして新潟への想い 是永大輔(アルビレックス新潟シンガポール代表)<2/2>
<2/2>目次
*新潟社長時代、徹底的に検証した情報の伝え方
*任意捜査中の選手の出場を認めてしまった理由
*「日本では社会的に終わったと思っていました」
■新潟社長時代、徹底的に検証した情報の伝え方
──デロイトトーマツが毎年出している、Jリーグマネジメントカップの2020年版で、アルビレックス新潟がJ2部門で1位になったのはご存じですか?
是永 知っています。
──詳しくはこちらの記事に譲りますが、デロイトトーマツの人たちが指摘していたのは、新潟は新規観戦者数を増やすために、地域とのつながりを分厚くするための努力を地道に重ねてきたと。これには是永さんのSNSでの発信力が大きく作用していて、結果として入場料収入やグッズの売上にも波及しているという指摘だったんです。この評価について、ご自身ではどう受け止めていますか?
是永 SNSが作用していたかどうかというのはともかく、もちろんすべてに戦略を考えながら、いつも客観的であるよう数字をベースに事業を構築していました。ホームタウンを全県に拡大したり、CRM部門やデザイン部門などを立ち上げたりして、毎日のようにデータと数字を追いかけていました。そして「どういう発信をすれば、どれだけ効果が出るのか」というトライ&エラーを重ねていました。あとはABテスト。
──ABテストというのは?
是永 ウェブのバナーや広告のコピーなどを最適化するためのテストです。たとえばクリエイティブのデザインを変えた2種類を出して、どちらの方がサポーターに受け入れられやすいのかとか。あるいは色やタイトルを変えると、どちらの開封率が高いのかとか。見せ方だけでなく、タイミングも含めて毎回こまめにやっていました。
──そのあたりはメディア出身者らしいですね。
是永 やっぱり、やるからにはたくさんの人に見てもらいたいし、たくさん共感してもらいたい。そんな感じで、ずっとやっています。
──新潟の社長になる直前の2018年、スポナビのコラムで書かせていただきましたが(参照)、SNS発信については非常に説得力が感じられました。引用しますね。
ツイッターでの発信は、シンガポール時代からやっていました。自分の思いを伝えることもそうだし、社員も「この人はこういう考えなんだ」と伝わるから便利ですよ。朝礼をやる必要もないし(笑)。サポーターに対しても「みんなで(クラブを)作っていく」ために発信しています。そしてちゃんとレスポンスすることで、彼らが何を考えているのか、われわれに何が求められているかが理解できます。負担ですか? ぜんぜん。僕はサポーターとの交流を「仕事」だとは1ミリも思っていないですから(笑)。
是永 社内向けというところで言えば、Slackを導入することもすぐやりました。社員の皆さんが自分に、直接関係ない話題でも見えるような環境にしていました。みんな、どこかで進んでいる話が何となく見えていて、それがいきなり降ってきても初めて聞く話ではないから、すぐにプロジェクトに参加することができますよね。また、会社として「こっちの方向に向かっているんだ」ということを皆が認識していれば、マネジメントもスムーズになりますし、経営の透明性にもつながります。
──社内のマネジメントに関しては、是永社長になってから思い通りの方向に進んでいたという実感はありましたか?
是永 僕が起こした変化に対して、スタッフの皆さんが一生懸命取り組んでくれたし、意欲を持ってクラブを良くしようとしてくれていたと思います。本当にありがたく思っていました。いきなり他所から来て、いろいろと変化を起こしたのに、社内でハレーションが起こることはありませんでした。それどころか、みんなが一丸となってクラブの未来を作ってくれたことには、今でも本当に感謝しています。
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