2022.04.29

スタジアムが声援で包まれる日を迎えるために　各界識者に聞く声出し応援の条件＜声楽家篇＞

2022年04月29日 12時00分　
カテゴリ：インタビュー・対談
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スタジアムが声援で包まれる日を迎えるために　各界識者に聞く声出し応援の条件＜産総研篇＞

　今週は「声出し応援」の解禁に関して、科学的アプローチと実践的アプローチという２方向で、識者の意見を紹介している。このうち科学的アプローチについては、産総研の保高徹生さんにお話を伺った。今度は実践的アプローチということで、プロの声楽家の皆さんに登場していただく。ご協力いただいたのは、佐藤泰子さん、前田祐佳さん、そして加耒（かく）徹さんである。

　それにしても、普段はサッカーを取材している私がなぜクラシックの世界に人脈があるのか、不思議に思われるかもしれない。実は佐藤さんと前田さんは、私が東京藝術大学在学中に所属していたサッカー部の女子マネージャーだった。そして、佐藤さんに男性の声楽家の紹介をお願いしたところ、アビスパ福岡のサポーターでもある加耒さんにも加わっていただくこととなった。

　周知のとおり、クラシックをはじめとする音楽業界もまた、２年前から始まったコロナ禍によって深刻な打撃を受けた。とりわけ合唱やオペラなどは、飛沫感染のリスクがあるため、本番の公演はもちろんリハーサルでも、厳格なガイドラインに沿った対策が採られている。「声を出して表現する」という点において、サポーターがプロの声楽家から参考にすべき部分は少なくないはずだ。

　もうひとつ、今回の取材で知りたかったのが「マスクを付けて歌う」ためのノウハウ。産総研の保高さんのインタビューから見えてきたのは、たとえ「声出し応援」が解禁されたとしても、引き続きマスク着用となる可能性が高いということだ。声楽の現場では、マスクを外すのは本番のみ。それまではずっと、マスクを付けて歌っているそうだ。実際、どんなマスクを使っているのかも含めて、皆さんに教えていただいた。

　サッカーファンが知りたい情報を得るために、まったく異なる世界で活躍するプロフェッショナルに取材する──。これこそ、有料個人メディアの真骨頂。こんな企画を無料のサッカーメディアに出したら、間違いなく却下されていることだろう。「数字がとれない」という理由で。

「有料だから読める記事がある。有料だから扱えるテーマがある」

　今月のWMは「若い書き手を輩出するメディア」「ウクライナ問題」「シーズン移行の是非」そして今週の「声出し応援」と、無料メディアでは絶対に扱えないテーマを意識的に取り上げてきた。今後もPVよりもクオリティを、表層よりも本質を、そして速報性よりも満足感を追求していく。既存メディアに満足できない方は、ぜひこちらから、入会をご検討いただければ幸いである。（取材日：２０２２年４月５日、オンラインにて収録）

※TOP写真：© Avispa Fukuoka

＜目次＞

＊「とにかく歌を伝えたい一心で」YouTubeで配信

＊プロの声楽家はどんなマスクを付けて歌っている？

＊「声出し応援」解禁でクラスターを出さないために

■「とにかく歌を伝えたい一心で」YouTubeで配信

──皆さん、今日はお集まりいただき、ありがとうございます。まずは簡単な自己紹介からお願いします。

佐藤　東京藝術大学出身でソプラノの佐藤泰子といいます。２００１年から２０２０年まで、新国立劇場合唱団に所属していました。その後、音楽ビヤプラザライオンに所属して、今回集まった３人とも一度はそこで歌っていました。私は静岡出身なのですが、実家のすぐ近くにゴン中山さんのご家族がお住まいで、３番目の兄がゴンさんと同級生でした。ゴンさんは町内の宝でしたね（笑）。

前田　私も佐藤さんと同じく藝大の声楽出身で、メゾソプラノの前田祐佳といいます。大学卒業後、４年くらい劇団四季でミュージカルをやらせていただいて、新国立劇場の合唱団では発足当初からのメンバーです。それ以外には、声優や俳優を養成する専門学校で、非常勤の講師もやっています。ちなみに出身は熊本です。

加耒　同じく藝大の声楽出身で、バリトンの加耒徹といいます。大学院修了後、二期会という日本のオペラ団体に所属してオペラやコンサートに出演しながら、バッハ・コレギウム・ジャパンというバロックの団体でも活動しています。出身は福岡で、中学生の頃からずっとアビスパを応援しています。今日はよろしくお願いします。

──ありがとうございます。声楽家の皆さんにとって、今回のコロナ禍は相当お仕事に影響があったと思います。まずは最初の緊急事態宣言が発出された、２０２０年の状況から教えていただけますでしょうか？

（残り 4631文字／全文: 6502文字）

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