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【無料公開】2002年ワールドカップから20年後の横浜で ヨコハマ・フットボール映画祭2022<2/2>

【無料公開】2002年ワールドカップから20年後の横浜で ヨコハマ・フットボール映画祭2022<1/2>

<2/2>目次

*字幕の監修を元プロフェッショナルレフェリーが担当

*中村憲剛の映画は「やさぐれたサポーター」にお勧め

*元日本代表監督フィリップ・トルシエは何を語るか?

字幕の監修を元プロフェッショナルレフェリーが担当

──ここまで5本の作品を紹介していただきました。6本目はスイスの作品で『ある試合』。非常に地味なタイトルですね。

佐藤 いろいろ迷った末に、このような邦題になりました。実は今回の8作品の中では唯一の短編映画で、上映時間は17分です。審判を描いたドキュメンタリーというのは、これ以外にもいくつかあるんですが、本作品はFIFABSCヤングボーイズの全面協力で製作されていますので臨場感が半端ないです。それでいてアート性も高く、いい意味で毛色の変わった作風になっています。

福島 実はこの作品を上映するにあたって、字幕の監修を元プロフェッショナルレフェリーの家本政明さんにお願いしているんですよ。

──それはすごい! でも字幕の監修って、ただ訳すだけではダメなのでしょうか?

佐藤 日本語字幕を作る場合、英文のスクリプトをいただくんですが、誰の発した言葉なのか、わからないものもあるんですよね。この映画の場合、無線でやり取りするシーンが多いので、画面に映ってない人の声が頻繁に音声として流れてくるんですね。その声が誰のものなのか、われわあれでは明確には分からないこともあったのですが、家本さんが聞けば「これはVARだね」とか「シチュエーションを考えれば、これはフォース(第4審判)」とか、一瞬でわかってしまうんですよ。

福島 あれはびっくりしたよね!

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佐藤 審判の言葉って、ただ直訳すればいいというわけではないし、なるべく正確に再現したいですよね。家本さんのアドバイスを反映することで、リアリティが一段と増したのではないかと自負しています。家本さんご自身も、この作品を1日で5回も見るくらい入れ込んでくれていたようです。タイトルは地味ですが、審判に関わるさまざまな要素が凝縮されていますので、見る人によっていろんな楽しみ方ができる作品だと思います。

福島 ただ、作品自体は17分しかないので、家本さんには会場にもお越しいただくことになりました。題して『ある試合+教えて!いえぽん in YFFF2022』。家本さんはもともと知名度がありますけれど、最近はSNSを使った発信にも積極的ですよね。そんな家本さんと、ファンとをつなぐイベントにしていきたいと思っています。

──家本さんといえば、2020年のYFFFでも審判の映画があって、そこでライブのコメント解説をお願いしていたと記憶していますが。

福島 そうなんですよ。その時もざっくばらんにお話いただいて、さらには「審判としてもっと積極的に発信していきたい」というお話をされていました。そこからTwitterのアカウントを立ち上げたんですよね。

──つまり、家本さんが発信するようになったのは、YFFFがきっかけだったと?

佐藤 われわれはそう認識しています(笑)。実際に2年前の映画祭で、家本さんは「ただ批判されるだけでなく、審判の側からも積極的にコミュニケーションしていけば、よりフットボールの質が上がっていく」と力説されていました。それを実践されたことで、レフェリーをめぐる環境というものは、この2年でがらりと変わったという印象があります。われわれの活動が、その一助となっていたなら嬉しいですね。

福島 家本さんについて付け加えるなら、東日本大震災があった2011年にJFAミュージアムで『サッカーのチカラ展』というのをやったじゃないですか。

──やりましたねえ。私も参加させていただきました!

福島 その時にも、家本さんをお招きしてのトークイベントがあって、僕が司会進行を担当したんですね。ちょうど『主審告白』を出版された直後だったんですが、家本さんがスターダムを駆け上がっていく過程というものを、折に触れて僕は間近で見ているんですよ(笑)。そうしたことも、この機会にアピールしたいですね。

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