宇都宮徹壱ウェブマガジン

【無料公開】2002年ワールドカップから20年後の横浜で ヨコハマ・フットボール映画祭2022<2/2>

中村憲剛の映画は「やさぐれたサポーター」にお勧め

©2020 Black Spark Film

──次の作品は、スウェーデンとイタリアの合作『サンシーロの陰で』。これは、どういった作品なんでしょうか?

佐藤 これは第94回アカデミー国際長編映画賞で、スウェーデン代表としてエントリーされた作品です。アカデミー賞では、各国代表の作品が1本ずつ国際長編映画賞の候補として送り出されていて、日本から選ばれたのが『ドライブ・マイ・カー』。そういう意味では、作品としてのクオリティは十分に担保されているといえます。

福島 ストーリーなんですが、スウェーデンのクラブからインテルに青田買いされた、ベングソンという16歳の選手が主人公。その彼が、世界中からタレントが集まってくるインテルで、厳しいプレッシャーに晒されていくんですが、それが独特の映像美で描かれているんですよ。残念ながら、彼は大成することなく引退するわけですが、その手記を元に作られた再現ドラマとなっています。

 ちなみに監督はロニー・サンダールという人で、テニスを題材にした『ボルグ/マッケンロー』という再現ドラマを発表したり、1996年のアトランタ五輪での女子体操アメリカ代表チームを映画化したり、スポーツのジャンルを得意としている人です。釜山をはじめ、各国の映画祭でも上映されているので、注目度の高い作品と言えます。

──この作品のゲストは、精神科医の木村好珠さん。最近、よくメディアで見かけますよね。

福島 木村さんはJユースチームや、昨年のパラリンピックに出場したブラインドサッカー日本代表チームのメンタルケアもされていた方です。本作の主人公は16歳で親元を離れ、生き馬の目を抜く世界に放り込まれるわけですが、どのようなメンタルケアが必要なのかを木村さんには語っていただこうと思っています。

©KAWASAKI FRONTALE

──最後が日本の作品ですね。『ONE FOUR KENGO THE MOVIE 憲剛とフロンターレ 偶然を必然に変えた18年の物語』。昨年秋に上映された作品ですが、YFFFで再び観られるのがありがたいですね。

福島 この作品を選んだ一番の理由は「フロンターレのサポーター以外にも見ていただきたい」ですね。ぜひ多くの方に観ていただいて、もっと日本のサッカーを盛り上げていくきっかけになればと思います。それこそクラブの成績が伴わず、やさぐれてしまっている方にはお勧めです(笑)。

──サポーターの心理としては、成功しているクラブのレジェンドの作品を観るのは、若干の抵抗があるんじゃないですか?

福島 実は僕、2004年まで10年くらい新丸子で暮らしていたんです。等々力までは、歩いて15分くらいの距離感ですよ。僕は横浜FCを応援していますが、ちょうど憲剛がフロンターレでデビューして間もない頃で、もしかしたら僕も「あちら側」に行っていた可能性もあったんですよね。もちろん、お客さんが少なかった時代の川崎も知っています。サブタイトルに「偶然を必然に変えた18年の物語」とありますが、18年あれば横浜FCも、あるいは川崎みたいなクラブになれるかもしれない(笑)。

──なるほど(笑)。この作品のゲストが、中村憲剛さんと前Jリーグチェアマンの村井満さん。どんな話が飛び出すのか、こちらも楽しみですね。以上、8作品をご紹介していただきましたが、今回のチョイスをどう評価されていますか?

佐藤 私はYFFFに関わって3年になりますが、今回はこれまでになくラインナップのクオリティは高いと思います。普段から映画に関わる仕事をしていますが、いち映画ファン、いちフットボールファンとしても十分に楽しめる作品ばかりだと思います。

福島 僕は20年前のワールドカップ決勝と同じく「ブラジル対ドイツ」という構図を作れればいいかなって思っていました。結果として、ドイツの作品は2本、ブラジルはイギリスとの共作で1本、それぞれ上映できることが決まってよかったです。

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