「えとみほさんが南葛SCで実現させたいことって何?」 栃木SCの思い出とプロスポーツ界への提言<2/2>
<2/2>目次
*異業種からスポーツ界に挑戦する人が減った?
*南葛SCのSNS活用は「すでに完成している」
*情報発信でJクラブ間の格差が生じている理由
■異業種からスポーツ界に挑戦する人が減った?
──栃木SCで成し遂げたことに続いて、逆に「これができていればよかった」という部分についてもあえて伺いたいのですが。
えとみほ そうですねえ……。突き詰めて考えると、この仕事の成功って「トップチームが強くなる」っていうことだと思うんです。そこまで見届けられなかったのは残念というか。もちろん、自分の力がダイレクトに及ぶところではないんですけど、何のためにコツコツやってきたかといえば「トップチームが強くなる、J1に昇格する」ってことでしたから。そういうところまで見届けられなかったのは、心残りではありますね。
──4年間の任期のうち半分は、コロナ対策に費やされてきたわけじゃないですか。いろいろしんどい経験をされていたと思いますが。
えとみほ 一番大変だったのは、自分たちが集客をしていいのか悪いのかがわからない、ということでした。これまでは増やすために頑張ってきたのに、急に「人を集めないでください」「密を作らないでください」となってしまったわけですからね。コロナが落ち着いてから、再び観客を集めようとしていたら、今度は試合が中止になって「集めないほうがよかった」なんて話になるとか。努力してきたことがストレートに報われない。そういう理不尽さというものに、何度も直面してきました。
──コロナ以前の2年間は、物事を決めるスピード感が足りなかったり、地方特有の人間関係だったりに悩むことも多かったようですが、その点についてはいかがでしょう?
えとみほ 私も地方出身者だからわかるんですが、余所者が入り込んでくると、いったんは警戒するんですよ。でも2年とか3年くらい付き合っていくうちに、だんだん内輪の人間として認識してもらえるようになって、そこからは物事がスムーズに進んでいくんですよね。もちろん、地域によって違うんでしょうけれど、最低2~3年(笑)。
──なるほど(笑)。そういえばガイナーレ鳥取のかーねる(高島祐亮)さんも、IT業界出身ですけど、すっかり米子の土地柄に馴染んでいますよね。しかも、そこで芝生の事業を立ち上げて、軌道に乗せているという。実はスタートアップ系の人たちって、地方生活に順応する能力も持ち合わせているのかなって思ってしまいます。
えとみほ それはあるかもしれないですね。新たな事業を立ち上げて、家も買って、地元の人たちとも仲良くなって。そういう人って、たぶんどこでも生きていけるんでしょうね。私自身、国内外で住まいを転々としていて、そういう素養みたいなものがあったからこそ、何の抵抗もなく栃木に来てしまったのかもしれません。
──えとみほさんやかーねるさんのように、これまでサッカーとはまったく異なる業界からJクラブ、それもJ2やJ3の地方クラブに活躍の場を求めてくるようになったのが、ここ4~5年くらいの流れだと思います。ただしコロナ禍の影響もあって、そうした流れが急にストップしてしまったように感じられるのですが。
えとみほ それはあります。私が入った時くらいって、さまざまな異業種からの応募があったらしいんですが、最近はそういった話は聞かなくなりました。ひとつにはスポーツ業界が、傍目からは不景気に見えるんじゃないですかね。コロナ禍によって、これまで目立たなかったリスクが知られるようになりましたし。
──飲食や観光と同じくらいリスクがあると認識されてしまいましたよね。東京五輪以前は、さまざまな業界がスポーツに接近しましたが、大会が終わったらさっと逃げてしまった。見事な変わり身でしたよね(笑)。
えとみほ ちょっと露骨でしたね。東京五輪も、ああいう不完全燃焼な形で終わってしまいましたし。そうした中、あえてこっちの世界に飛び込む人が減ってしまったのは、今は仕方がないのかなって思っています。
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