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【無料公開】ブラジル人元Jリーガーが大集合! 僕らが日本サッカーに感じること<2/2>

三浦「日本では今もクルピやレオンやネルシーニョが有名」

ここから質疑応答

──ヤスさんに質問。私が日本で仕事をしていた時代は、Jリーグの半分くらいのチームをブラジル人監督が率いていた。ところが最近、浦和のオリヴェイラ監督が解任されて、今ではゼロだ。なぜこうなってしまったのだろうか?

三浦 生意気に聞こえるかもしれないけれど、ブラジルにどれだけいい監督がいるのか、という話だと思う。サントスだって、今はアルゼンチン人が監督をやっているわけだし。個人的には、新しいブラジル人監督が日本で指揮をとってほしいんだけど、日本では今もクルピやレオンやネルシーニョが有名だからね。その状態が変わっていかないと。

──レヴィーに質問。先ほど過密日程の原因はTV放映にあると語っていたが、今後その影響力を減らすことは可能だと思うか?

クルピ 難しいだろうね。今の時代は良くも悪くも、お金があれば何でもできる時代になってしまった。ブラジルでお金を持っているのはTVであり、ブラジル・サッカー連盟はその影響下にある。加えてFIFAスキャンダルの影響もあり、連盟が信頼を取り戻すのはなかなか厳しい状況だ。この状況は当面続くだろうね。

──私は以前、日本で通訳の仕事をしていた。通訳に関して、面白いエピソードがあれば教えてほしい。

クルピ 私がセレッソの監督をしていた時、ガンジー(白沢敬典)さんという通訳がいた。ある試合で、選手たちが攻撃ばかりに気持ちが向かってしまい、守備をおろそかにしていたことをハーフタイムで叱ったんだ。その時に私は「まるでインディアンのチームではないか!」と言ったら、ガンジーさんが困った顔でこう言ったんだ。「監督、日本にはインディアンはいませんから、通訳しようがありません」ってね(笑)。

ワシントン 日本の習慣を理解する上で通訳は重要な存在だったね。ある試合の遠征で、通訳から「3時33分の新幹線だ」と言われて、きっと35分の間違いだろうと思ったんだ。ブラジルでは、そんなに細かい発車時刻は考えられなかったからね。結局、乗り遅れてしまって「日本では33分といえば33分なんです」と通訳に叱られてしまったよ(笑)。その後も彼には、いろんなことを教えてもらったね。

ビスマルク 鹿島にいた時、磐田戦で僕が日本語でレフェリーに抗議したら、こっちに有利な判定が出た。試合後、磐田の監督だったフェリポン(スコラーリ)から「ウチに来ないか? 君はゲームだけでなくレフェリーも支配できるからね」って言われたよ。(笑)。

──ヤスさんに聞きたい。コパ・アメリカの日本代表は、まだまだ野心が足りないように感じた。日本は2050年のワールドカップで優勝を目指しているそうだが、あと30年でそうしたメンタリティが備わると考えるか?

三浦 今大会の日本は、何人か目を引く選手はいたけれど「絶対に勝ちきるんだ」というメンタリティが不足していたように感じる。実は日本は以前にも「ワールドカップ優勝」を口にしていたことがあって、それは2014年にブラジルで開催されたワールドカップだった。けれども、それを公言していたのは一部の選手だけで、当時のザッケローニ監督は絶対に「優勝」なんてことは言わなかったね(苦笑)。

 正直なところ、監督が言ってもいない「優勝」という言葉を、選手が口にしていることに僕はすごく疑問に感じていた。けれども2050年までには、優勝できるまでの実力を積んでほしいと思うし、そうなるようにJFAでもいろいろ動いている。ただし30年の間に、ヨーロッパも南米も進歩を続けているだろうから、決して容易なことではないけどね。

サンパイオ ヤスさん、ありがとう。そろそろ時間となりました。今後もサッカーを通して、ブラジルと日本の交流がより深まればと思います。今夜は皆さん、ありがとうございました。

<この稿、了>

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