宇都宮徹壱ウェブマガジン

伏見ガクが清水エスパルスを応援して何が起こったか にじさんじ×Jリーグのコラボを振り返る<1/2>

 今週のタイトルを見て「?」となった読者の方も少なくなかったと思う。

 伏見ガクとは、にじさんじ所属のライバー、もしくはVTuberである。「にじさんじ」「ライバー」「VTuber──。私と同世代の方であれば、さらにクエスチョンマークが頭上に乱立することだろう。まずは、こちらの動画をご覧いただきたい。

 にじさんじについては、Wikipediaの記述によれば《ANYCOLOR株式会社が開発するiOS向けのスマートフォンアプリ。また、そのアプリを使用して活動し、同社が運営を担当する、同名のバーチャルライバーグループ》。実際、数多くの有名ライバーが、にじさんじに所属している(参照)

 そのにじさんじとJリーグがコラボすることとなり、18人の人気ライバーがJ1に所属する18クラブを応援することとなった。その組み合わせは以下のとおり。

・北海道コンサドーレ札幌 雪城眞尋
・鹿島アントラーズ 葛葉
・浦和レッズ 三枝明那
・柏レイソル 星川サラ
・FC東京 成瀬鳴
・川崎フロンターレ 社築
・横浜F・マリノス アクシア・クローネ
・湘南ベルマーレ 白雪巴
・清水エスパルス 伏見ガク
・ジュビロ磐田 舞元啓介
・名古屋グランパス 赤羽葉子
・京都サンガF.C. 桜凛月
・ガンバ大阪 樋口楓
・セレッソ大阪 周央サンゴ
・ヴィッセル神戸 不破湊
・サンフレッチェ広島 静凛
・アビスパ福岡 
・サガン鳥栖 月ノ美兎

 動画に登場した伏見ガクさんは、清水を応援することとなったわけである(コラボ企画は5月23日で終了)。

 それにしても入場者の高齢化が目立つJリーグにあって、あえて若者に人気のあるVTuberを起用するというのは、なんと大胆なコラボレーションであろうか。Jリーグのコラボといえば、これまでにも『キャプテン翼』や『アオアシ』、最近なら『桃鉄』が思い浮かぶが、にじさんじというのはかなり飛躍しているように思えてならない。これはぜひ、Jリーグの担当者に話を聞いてみたい。

 そこで今回お話を伺ったのが、事業本部ライセンス事業部部長の深田武さん、61歳。私よりも5歳も上なのに、これまで聞いたこともないようなVTuberの名前がポンポン出てくる。Jリーグは本当に人材の宝庫なのだなと、あらためて感じた次第。果たして、今回のコラボ実現の背景には、どのような経緯と思惑があったのか? 深田さんのインタビューから、感じ取っていただければ幸いである。(取材日:2022年6月16日@JFAハウス)

<1/2>目次

*にじさんじのVTuber18人がJ1クラブを応援!

VTuberの源流を辿ると「初音ミク」に行き着く?

*ライバーとクラブとのカップリング決定プロセス

にじさんじのVTuber18人がJ1クラブを応援!

──今日はよろしくお願いします。まずは深田さんが部長を務めている、ライセンス事業部のお仕事の領域について教えてください。

深田 ライセンス事業部はJリーグの権利であったり、クラブのロゴやユニフォーム、あるいは選手の氏名や肖像であったり、さまざまなサービスや商品に権利許諾をしています。目的は大きく2つ。事業部ですので、まず収益を上げること。そしてもうひとつが、さまざまな商品やサービスにJリーグを使っていただくことで、できるだけ多くの人にJリーグに触れていただくことですね。

──2016年にJリーグに入る前は、ゲーム会社にいらしたそうですね?

深田 そうです。それ以前は、スポーツではないですが権利関係の仕事をしていまして、ゲーム会社でも権利周りの仕事をしていました。(Jリーグに来てからは)コナミさんのウイニングイレブンを担当させていただいたんですが、私自身はサッカーのプレー経験はほとんどないんですよ。サッカーの知識に関しては、Jリーグの中ではかなり低いほうだと思います(苦笑)。

 昔はひとつのゲームを作るのに、1年かかるかどうかで、コストも5000万円くらいでした。今は2年から3年はかかりますし、制作費も少なくとも3億円、高いと20億円くらいかかります。さまざまなトレンドを見ながら、これからそんなものが商品やサービスとして展開されていくのかを推測してビジネスを進めていく。それが、ライセンス事業部での私の仕事です。

──そうした中に、にじさんじさんとのコラボという話があったと。VTuberの起用については、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

深田 きっかけは去年の2月に行われた、2021明治安田生命Jリーグ開幕FESTIVALでした。コロナ禍以前は、メディアの方々やパートナー企業の方々をお招きして開催していましたが、昨年はオンラインで行っていたんです。その時に登場していただいたのが、ある人気VTuberでした。それなりに反響はあるんだろうと思っていたんですが、実際には期待していたほどではなかったんですね。

──唐突にVTuberを登場させても、無条件に人が集まってくるわけではないと。そうした経験を踏まえての、今回のにじさんじとのコラボだったということでしょうか?

(残り 2789文字/全文: 4895文字)

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