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貴方の知らないルーマニア・サッカーの沼 瀬戸貴幸×三野草太×板東隼平<2/2>

貴方の知らないルーマニア・サッカーの沼 瀬戸貴幸×三野草太×板東隼平<1/2>

<2/2>目次

*給料未払いとなったら交渉はキャプテンの仕事

*地域リーグから欧州に挑戦することは是か非か

*国際舞台から遠ざかっているルーマニアだけど

トップ写真提供:三野草太選手

給料未払いとなったら交渉はキャプテンの仕事

──ここからはサッカーを通して、ルーマニアの国のユニークさや特殊性について深堀りしていきたいと思います。板東さんはルーマニアでクラブ経営をしていて、いろいろ面食らうことがあるかと思うんですが、最近はどんなことがありました?

板東 昨シーズンの最終戦がアウェーだったんですけれど、とても3部とは思えないくらいの大ブーイングを浴びたんですよ。僕が外国人オーナーということもあって、けっこう個人攻撃を受けましたね。ルーマニア語をもっと理解できていたら、かなり凹んでしまうような内容だったと思います。あまりにもひどかったから、警察官がガードしてくれたんですが、この国のスタジアムの熱さというものを肌身で感じましたね。

──試合はどうなりました?

板東 ずっと同点の状態が続いていたんですが、土壇場のラストワンプレーで失点して負けてしまったんです。そうしたらころっと態度を変えて、僕らのプレーを讃えてみたり、「ウチのパトロンにならないか?」って言ってきたり(笑)。単に殺伐としているのではなく、そういう可愛げもあるんですよね。

──選手のおふたりは、人種差別的な被害を受けたことはなかったんでしょうか?

三野 ありましたね。それこそバナナを投げつけられたり、水をかけられたり。それでプレーが乱れることはありませんでしたが。

──三野さん、相当にメンタルがタフですね。

三野 タフというよりクレイジーなんだと自分では思っています(笑)。

瀬戸 精神面のタフさというのは、この国でやっていく上では確かに大事ですね。僕自身はこっちの生活も長いので、ルーマニアの常識がスタンダードになっていますが、来た当初はいろいろ戸惑うことも少なくなかったです。日本だとあり得ないことが、こっちだと普通に起こりますから。

──たとえば、どんなことでしょうか?

瀬戸 一番わかりやすいのが、給料未払いですね。東欧サッカーあるあるですが(笑)。

三野 僕も3カ月くらい遅れた時がありましたね。

──以前、瀬戸さんがインタビューで語っていましたけれど、アストラでキャプテンをしていた時は、選手を代表して給料の支払いをクラブと交渉していたそうですね。

瀬戸 そうです。金銭的なトラブルについては、キャプテンが先頭に立ってクラブと交渉することになりますね。自分のことだけでも大変なのに、チーム全員の給料未払いについても責任を負わなければならないのは、正直けっこうなプレッシャーですよ。そういった経験もまた、メンタルのタフさにつながっているとは思います。それでも本音を言えば、できればキャプテンマークを巻きたくないんですよ。試合中、チームメイトを統率するだけならいいんですが。

──ちなみに給料未払いの場合、クラブとはどのように交渉をするのでしょうか?

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