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ベトナムはなぜ、U-23アジア選手権で準優勝できたのか? 「英雄」パク・ハンソが導いた大躍進【「ベトナムフットボールダイジェスト」宇佐美淳氏インタビュー<1/3>】(無料記事)

ベトナムの大躍進を導いた韓国人のパク・ハンソ監督。スタジアムには「パク・ハンソTシャツ」も

ベトナムが10年ぶり2度目の東南アジア王座について幕を閉じたAFFスズキカップ(東南アジア選手権)。大会2連覇中だった王者・タイがJリーグでプレーするチャナティップら海外組を招集しなかったこともあり、大会前からベトナムを優勝候補の本命に推す声は多かった。実際、前評判通りの力を見せたベトナムはグループステージを3勝1分の無失点という安定した戦いぶりで首位通過。準決勝ではフィリピンを連勝で撃破し、決勝ではマレーシアを1勝1分で退けて無敗での完全優勝を飾った。

優勝決定の舞台となったのは、ベトナム代表のホームスタジアム「ミーディン国立競技場」。首都ハノイの郊外にある会場の周辺は試合前から異様な熱気が立ち込めていたが、試合後には通り抜けることも困難に思えるほどの人の群れがスタジアムゲートの外に広がっていた。母国の10年ぶりのタイトル獲得に沸くベトナムサポーターたちの熱狂のなかで、私、「FOOTBALL THAILAND」の本多はある人物と会う約束をしていた。日本語でベトナムサッカーの情報を発信するウェブサイト、「ベトナムフットボールダイジェスト」を運営する宇佐美淳さんだ。

ホーチミン在住の宇佐美さんは、7年ほど前からベトナムサッカーの情報を日本語で発信し始め、2013年に「ベトナムフットボールダイジェスト」を立ち上げた。ベトナムのサッカーに興味を持つようになったきっかけはちょうど10年前のスズキカップ初制覇の時だったそうで、国を挙げての大変な盛り上がりにベトナムのサッカー熱が想像以上のものであることを感じたという。以来、ベトナムサッカーのことを本格的に調べるようになり、今ではベトナムサッカーに最も精通した日本人と言っても過言ではない。

2018年、ベトナムは大変な躍進を見せた。まずは1月のU-23アジア選手権で準優勝の快挙を果たしてアジア中を驚かせると、8月のアジア大会でもベスト4に進出。そして、東南アジア諸国にとっては最も重要な大会のひとつであるスズキカップでも、王者・タイからタイトルを奪い取ることに成功した。いったい今、ベトナムに何が起きているのか? ぜひ、この機会に宇佐美さんにお会いし、直接うかがってみたいと思っていた。

スタジアム内での優勝セレモニーが一段落した頃、スタジアムの正面ゲート付近に設けられた大会スポンサー「SUZUKI」のブースを目印にして、宇佐美さんと落ち合うことができた。

──ご無沙汰しています。優勝、おめでとうございました!

宇佐美 ありがとうございます。ホッとしました。

──それにしても、サポーターたち、大変なことになっていますね。

宇佐美 ええ、いつものことです。朝まで続きますよ。

──朝まで、ですか⁉ どうしましょう、あれでは外に出られませんよね……。

宇佐美 無理ですね。スタジアムの敷地内にいくつかベトナム料理の店があるので、そこで食事でもしながら話しませんか?

──わかりました、そうしましょう。

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