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フットボール タイランド

UAE対バーレーンの開幕戦を見て、タイのアジアカップを占う。タイは「過大評価」され、ベトナムは「過小評価」されている?【編集長コラム】

ついにアジアカップが開幕した。東南アジア4カ国(タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム)の共同開催だった2007年大会以来12年ぶりのアジアカップに臨むタイ代表は今日、インドとの初戦を迎える。大会の開幕戦を戦ったホスト国のUAEとバーレーンもタイと同グループを戦うライバル。前回大会得点王のアリー・マブフートが前線で起点となるUAEの攻撃をタイのディフェンスラインは食い止めることができるだろうか、バーレーンとの一戦ではどちらが主導権を握ることになるのか、とタイ目線でオープニングマッチを眺めていた。

開幕を前に盛り上がる各所での「大会展望」を見ると、多くの人がタイの決勝トーナメント進出を予想しているようだ。私が目にした中だけでも、ラウンド16で中国を下してタイが準々決勝に駒を進めている高評価の予想もあった。考えてみれば、タイはロシアW杯でアジア最終予選、言い換えればアジアの「ベスト12」まで進んだのだから、アジアカップでもベスト16、もしくはベスト8というのが自然な見方なのかもしれない。タイサッカーに可能性を感じ、愛着を持って追ってきた者としてはタイの株が上がるのはうれしいことだが、正直なところ、初戦を前にしての心境は「期待」を「不安」が上回っている。

タイ代表は、日本とも対戦したロシアW杯予選時から大きく姿を変えている。W杯アジア最終予選進出を果たしたキャティサック・セーナムアン監督が退任し、南アフリカW杯でガーナをベスト8に導いたセルビア人のミロヴァン・ライェヴァツ監督が就任。前任のキャティサック監督が築いたタイらしい華麗なパスサッカーを封印し、それによる世論の厳しい風当たりのなかでチーム改革を進めてきた。特に力を注いでいるのが守備面の改善で、ディフェンスラインの顔ぶれは攻撃面に魅力のある選手を好んで起用していた前監督時代から一新されている。だが、現在のところライェヴァツ監督のサッカーが実を結んでいるとは言えず、アジアカップを前に行われたAFFスズキカップ(東南アジア選手権)でも、タイは準決勝でマレーシアに敗れて大会3連覇を逃した。

アジアカップ初戦の前日会見でライェヴァツ監督は、「海外組が加わる今大会はスズキカップとは違う」と強調している。たしかにスズキカップではチャナティップ、ティーラシン、ティーラトンというJリーグ組の主力を招集しておらず、とりわけチャナティップ不在の影響が小さくないのは明らかだった。守備の意識を高めてきたライェヴァツのチームにチャナティップというアジア最高レベルのエンジンがハマればどんな反応が起きるのか、という期待感は大いにある。だが現時点では未知数の部分が多く、「不安」を上回る期待は持ちにくいのが実情だ。実際、UAE入りしてから非公開で行われたオマーンとの調整試合も0対2と敗戦。インドとの初戦でつまずけば、タイにとって悲惨なアジアカップとなる可能性も十分にあるように思える。

その一方で、スズキカップを制した東南アジア王者のベトナムに対しては「期待」が前面にある。「大会展望」を見るとタイとは対照的で、大半の人がベトナムのグループリーグ敗退を予想しているようだが、少なくとも現時点でのチームの完成度で言えばベトナムはタイを数段上回っている。2018年はU-23アジア選手権準優勝、アジア大会ベスト4、スズキカップ優勝と「ベトナムの年」だったが、その勢いは今も続いており、アジアカップでさらなる加速を見せる可能性も十分にあると思う。なかでも注目してほしいのは、19番を背負う「若き王様」グエン・クアン・ハイだ。スズキカップでもMVPを獲得した21歳のレフティーMFは今、東南アジアでは無双の域に達そうとしており、アジアカップでのブレークが期待される。

上昇気流に乗る東南アジアのライバル・ベトナム、そして新体制となって初の国際大会に臨む日本よりも一足先にタイのアジアカップが間もなく幕を開ける。ロシアW杯でアジア最終予選まで駒を進めた実力は本物なのか――。アジアのサッカー界が、タイにジャッジを下す時が近づいている。

「FOOTBALL THAILAND」本多辰成

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