「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【お知らせ】アジアフットボール批評06が発売。アジアの熱狂をぜひ。

【商品名】アジアフットボール批評 special issue06
【発行】株式会社カンゼン
B5判/128ページ
2018年3月22日発売 

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アジアの魂が凝縮した一冊

鈴木です。普段の僕は栃木SCの取材・執筆活動以外にサッカー誌・フットボール批評の制作などをこつこつやっていることはお伝えしていますが、この本はそのアジア版。今年の2月上旬の宮崎キャンプから帰ってきてJ2が開幕する頃にかけてドタバタしながら作っていました。100ページくらい編集で関わりました。

 

現地のライターさんたちから届く原稿に目を通すたびに東南アジアの激熱ぶりに驚かされました。中国スーパーリーグの爆買いは今なお高いレベルで推移していますが、その熱はタイを中心とする東南アジアに及んでいます。今やタイが東南アジアのプレミアリーグの位置づけになっていて、ベトナムやミャンマーやカンボジアやインドネシアといった国々の代表選手たちがタイのトップリーグへ、さらにそのトップオブトップの選手たち、たとえば札幌にいるチャナティップや今季広島に加入したティーラシンが日本のJ1にステップアップする流れになっています。チャナティップもティーラシンもJ1でゴールを取り始めているし、日本とのレベルの差は日に日に縮まっています。

 

いま東南アジアの各国では資本家たちがサッカーに莫大な資金を投じていて、練習場や付随する施設などの育成拠点を乱立させています。国におけるサッカーのステイタスが抜きんでいるのでサッカーにお金が還流するんです。日本の場合はまだまだ野球が一番なのでなかなかそうはならない。それでも、これはリーグや協会の関係各所の方々の努力も当然あるでしょうが、全国各地で大きなお金がサッカーに投じられる動きが出てきたし、県内でも栃木ウーヴァのようにサポーター出身の実業家がサッカーに投資するといった動きがあるように、類似した動きは今後ポツポツと出てくるんでしょう。

 

ただ、東南アジアの成長スピードに比べれば鈍いと言わざるを得ません。資本家たちが畑を耕し、その先に国のリーグが発展していけば、自ずと代表チームの強化にも繋がります。すでにタイはW杯の最終予選に進出してきています。先日宮崎で開催されたアジア各国のU-16大会も日本を抑えてインドネシア代表U-16が優勝。重大な事実だと思います。

Jリーグは多くの東南アジアの国のリーグと提携しているので(現在タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタール)、当該国出身の選手は外国籍扱いになりません。チャナティップを見ればわかるようにJ1でも活躍できる優秀な選手はすでに相当数いるので、お隣水戸も挑戦していましたが、J2でもビジネス的な側面も込みで狙い目でしょうね。

 

そんな熱い一冊をぜひとも手に取ってみてください。

以下、ラインナップです。どの記事も興味深いのですが、僕が読んでいて特に胸を突き動かされたのは、以下の二本。 

●北朝鮮代表・李栄直(東京V)の誇り 在日というアイデンティティと祖国(文・海江田哲朗)

●ユーラシアの冒険者 佐藤穣(光州FC、元ザスパクサツ群馬)(文・伊藤寿学)

 東南アジアの動きがどうのこうの書いておきながらこの二本は在日の選手と元Jの日本人のお話です。二人とも、どこにいようと、どこでプレーしようと、やってやるよ、という地に足つけて揺らがない太い幹を感じさせます。日々の仕事をこなしているとつい忘れそうになる大事な熱いもの、信念の強さが持つパワーを感じさせてくれます。ぜひとも。

 

【巻頭特集】
Jリーグで活躍!チャナティップに続くタイ発アジアの英雄たちの可能性
ティーラシン・テーンダー(広島)/ティーラトン・ブンマタン(神戸)

【総力特集1】日本を超えるサッカー熱!アジアサッカーの次なる盟主を占う
進む東南アジアのプレミアリーグ化/急成長するインドネシアサッカーの興隆/不動産王手ビングループが巨額投資で進める改革、ベトナムサッカーの急伸/育成に力を入れるアジア最後のフロンティア、ミャンマーサッカーの可能性

Special Interview 三浦俊也(ホーチミン・シティ監督)

【総力特集2】揺れるアジアのサッカー強国に吹く新風
リーグ拡張か2部制導入かで揺れる豪州サッカー/変わりつつある韓国サッカーの地図

【総力特集3】血とサッカー、国境を超えて
北朝鮮代表・李栄直(東京V)の誇り 在日というアイデンティティと祖国/帰化政策でアセアン上位に躍り出るアズカルス

[鷹鳥屋明のレポート]中東で一番有名な日本人が案内する中東サッカー

[人気連載]アジアのラーメン巡礼 グアムのローカル麺を食レポ

[後藤健生のAFC U-23選手権 2018レポート]
ベトナム代表の大躍進と森保ジャパンの船出

サッカー戦術解析ソフトBuildup6で徹底解剖 日本代表は東アジアのライバル相手にどう戦ったのか?

河村崇大が語るタイサッカーの真髄

Jリーグはアジア選手のハブになるか? 木場昌雄が仕掛ける東南アジア発Jリーガー誕生への道

タイリーグで奮闘する日本人GMの挑戦

ディエゴ・フォルラン 三度アジアの地に舞い降りた理由

ユーラシアの冒険者 佐藤穣(光州FC、元ザスパクサツ群馬)

サッカーで鳥取からアジアへ、そして世界へ

……ほか

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