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「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

なぜ栃木県は芝の養生を1カ月でできる業者と話をしようとしないのか?【栃木県グリーンスタジアムの芝改修問題】(19.2.21)

栃木県グリーンスタジアムの芝改修問題。焦点はただ一つ。栃木県は19年11月に着工を予定する栃木県グリーンスタジアムの芝改修工事の養生について意見を県内外の5社ほどにとったという。その中の一社は「養生は1カ月でできる」と回答したにもかかわらず、また他競技場の実績が数多くあるにも関わらず、工期が7カ月もかかるのはなぜなのか。栃木SCが回答を求めても県から納得のいく説明はない。

以下は、栃木SCから事情を聞き、箇条書きでまとめたものだ。一方の言い分にはなるが、すでにボールは県に預けられている。次にボールを蹴り返すのは県の番だ。

 

このままではクラブライセンスの交付に問題が出る恐れがある

▼去年2018年の夏頃、栃木SCから県に「2018年のオフシーズンに芝の改修工事をお願いしたい」と話をしていた。

▼県からは「それはできない。グリスタ改修工事の予算は2019年度のものだから」と回答があった。

▼栃木SCは県と粘り強く交渉したが、2019年度予算を前倒しして2018年のオフシーズンに消化することはできないとの判断に至った。ただ、昨年2018年シーズン中に栃木SCはJリーグからグリスタの芝の劣悪な状況について指摘されていたので、2019年シーズンのグリスタの芝管理について、その後優秀な芝の専門家とアドバイザー契約を結び、現状から悪化させないための応急処置をとることにした。2019シーズンはこれで乗り切る予定。

▼同時に、栃木SCは県に対して、2018年シーズンのオフにグリスタの改修ができない県の事情を受け入れる代わりに「それでは2019年シーズンオフのグリスタ改修工事は順調に進ませて、翌2020年シーズンの開幕はホームで迎えられるようにしたい」との要望を県に伝えた。それが2018年年末時点の話。

▼栃木SCとしてもグリスタ改修工事の工期の確保についてすべて県任せにするつもりはない。2019年シーズンの最後の2試合はアウェイに設定するべくJリーグに掛け合い、さらに2020年シーズンの開幕節と2節はアウェイゲームにできるようにJリーグに掛け合う考えがあった。それが実現できれば、それだけで工事期間をトータルで1カ月間確保できる。実際に2019年シーズンの最後の2試合はアウェイゲームに設定することができた。

▼だが、今年に入って事態は急転した。先月、2019年1月15日のこと。県の担当部署の職員が栃木SCのクラブ事務所にやってきて「2019年シーズンオフに予定しているグリスタの改修工事は11月に着工し、2020年の5月末までかかる」と説明された。

▼当初は工期3カ月、予算2億で予定していた工事が、なぜか工期7カ月、予算3億の規模に膨れ上がっていた。

▼栃木SCとしては「何を言っているんですか?」との反応をするほかなかった。県は「すみません」と謝るばかりだった。そして「工期が5月末までかかるのでそれまでの間は県外でホームゲームを開催してほしい」と提案された。

▼栃木SCとしては「いったい何試合、県外開催させるつもりですか? それではクラブライセンスの規定に触れますよ」と県に説明した。2020年シーズンの2月の開幕から5月末までホームゲームを県外開催するとしたとき、抵触する恐れがあるJリーグの規定は以下の2つ。

▼Jリーグ規約第40条(公式試合)(2)「Jクラブは、前項第1号、第2号または第3号のホームゲームの80%以上をホームスタジアムで実施しなければならない。ただし、理事会の承認を得た場合は、この限りではない」

▼Jリーグ規定第55条(リーグ戦の開催)「(1)リーグ戦の試合日程は、次の事項を考慮した実行委員会の審議を経て、理事会が決定する。『3.同一大会でアウェイゲームが3試合連続しないこと』」

▼2020年シーズンのJ2クラブのホームゲームはおらそく21試合を予定する。21試合×80%=17試合以上を同じホームスタジアムで開催する必要がある。つまり、県外開催で、毎試合各地を転々とするようなホームゲーム扱いのホームゲーム開催は年間4試合までが上限。

▼2020年の2月下旬に開幕するだろうJ2で、グリスタの芝改修の工期が終わる5月末まで県外開催をすれば、その試合数はおよそ4試合では済まない計算になる。これではJリーグ規定を守れず、よってクラブライセンスが交付されない可能性が出てくる。

▼この状況について栃木SCがJリーグの担当者に確認すると案の定「クラブライセンスの交付に問題が出てくる可能性がある」との回答だった。

▼Jリーグのクラブライセンスの審査は厳格で、特例扱いを求めるのは困難。今季の審査において来季のクラブライセンスが発行されなければ、栃木SCは自動的にJ3に降格する事態もありうる。

▼なお、Jリーグは、栃木SCが今回のグリスタ改修工事をビックロール工法で行う前提だったことを認識しており、にもかかわらず栃木県が新たに提示した工期の7カ月のうち「芝の養生に3カ月を要する」と栃木SCに回答したことについて疑問視している。ビックロール工法とは、工期短縮が最大のメリットで、養生は1カ月もあれば済んでしまうのがJリーグの各クラブのピッチ工事における通例となっているからだ。

▼Jリーグの他クラブでもビックロール工法の施工例は多数。直近では柏レイソルが栃木SCが予定している同じ工程で柏スタジアムの芝を改修している。工程は以下のとおり。

▼12月9日 U-18プレミアリーグ最終節

暗渠更新

スプリンクラー設置

1月21日 ビックロール工法による芝張り

2月7日 芝張り完了

2月8日~2月15日 養生期間

2月15日 工事完了

2月17日 プレシーズンマッチ『ちばぎんカップ』開催

※芝の根付きを良くするためホーム開幕は2節としている。

▼柏スタジアムの場合、養生期間は一週間ほどしかとっていない。その上でプレシーズンマッチを開催したが、その後、念のため間隔をあけてからホームゲームを開催するとしている。ビックロール工法であればこの程度の間隔さえ空ければ問題ないのが通例。

▼よって、ビックロール工法にもかかわらず「養生を3カ月要する」としている栃木県の見積もりには改善の余地が大いにある。明らかに改善の余地がある現状のままではJリーグが「ライセンスの交付に問題が出てくる」という姿勢をとるのは当然のこと。

▼ビックロール工法にもかかわらず「養生が3カ月必要」としていることについて、栃木SCが県に説明を求めても「業者が3カ月かかると言っている」との回答に終始した。

▼ちなみに、県はグリスタ改修工事の養生について意見を県内外の5社からとり、そのうち一社からはビックロール工法ならば「養生は1カ月あればできる」との回答を受けている。また他競技場の実績が数多くあるにも関わらず工期がここまでかかるのはなぜかと県に説明を求めても、現時点で県から明確な説明がなされていない。どの業者に意見を聞いたのか回答を求めても「答えることはできない」との回答だった。

なぜ県は養生を一カ月で済ませられる業者や実例を活かそうとしないのか

▼栃木SCから県にはビックロール工法での多数の事例について再三紹介し、説明もしている。だが、県からは「そのような事例と同様にグリスタを改修して、その後使用し、もしも夏に芝が枯れるようなことがあったら誰が責任とればいいのか?」と話をされることもあった。

▼だが、もしそうなったとしても、それは、実際に改修後のグリスタを使用開始したあとに芝を管理する業者の責任が指摘されるだけのこと。ビックロール工法による数々の成功例および工期を短縮するメリットの大きさを考えれば、県がビックロール工法の導入を躊躇する理由にはならない。

▼栃木SCが疑問を持たざるを得ないのはただの一点だけ。なぜ県は、ビックロール工法で「養生は1カ月で済ませることができる」と言っている業者や実例があるにも関わらず、その方法でやろうとしないのか?

▼この点について栃木SCが県に再三に渡って説明を求める中で、県からは工期の短縮ではない代替案が出されている。たとえば、「2020年4月から西川田の新スタジアムが使えるようになる可能性があるので、2月の開幕から3月まで県外でホームゲームを開催して4月から西川田の新スタジアムを使うのはいかがでしょうか」というのが一つ。

▼だが、栃木SCからすれば、当然ながら「4月から西川田が使えるようになる可能性がある」などという不確定な要素を頼りにするわけにはいかない。使用可能な時期は伝えられていない。それに、西川田の新スタジアムの使用料についても県から何も明らかにされていない。いずれも経営上のリスクが高すぎる話だ。

▼しかも、2020年シーズンの西川田の新スタジアムは夏に予定する東京五輪において、大会直前からハンガリーの陸上チームが一定期間ベースキャンプ地として使用することが決まっている。となると、その期間はホームスタジアムとして使用することができない、との見立てをするほかなく、やはりJリーグ規定にある同一ホームスタジアムでの開催「80%以上」の条項に抵触する恐れが出てくる。

▼それら不確定な要素を排除し、来季のホームゲームの開催場所を確保すべく、栃木SCとしても努力する姿勢はある。だがたとえば、仮に2020年シーズンの開幕から5月末までのホームゲームを県外で開催することがJリーグに認められたとしても、ホームゲームを県外で開催することの栃木SCの負担は甚大で、およそ現実的ではない。

▼栃木SCの試算では、県外でホームゲームを開催したときの一試合あたりの収入減や支出増は合計で約4000万円。

▼主な収入減要因は、スポンサー広告収入減、チケット収入減、グッズ販売収入減など約2600万円。主な経費増要因としては、試合運営費・警備、運営人件費、試合運営費・運営スタッフ手配費用、トップチーム移動・宿泊費増、スポンサー対応費(広告看板輸送、設置等)、イベント関連出演者交通費等など約1300万円。

▼県外でのホームゲーム開催が5,6試合と積み重なれば、収入減や支出増の合計は数億にのぼる試算。年間予算10億に満たない栃木SCにとって経営破綻レベルの損失額。

▼県内の足利陸上競技場でホームゲーム開催が可能かどうかも今後Jリーグに検討を求めることも考えている。現状では足利陸上競技場はJ2のホームゲームを開催するためのあらゆる基準を満たしていないが、特例が認められるかどうか。

▼栃木SCとしては、グリスタの替わりに開催できるホームスタジアムが一つでも確保できれば問題はないが、これまで、その可能性を散々検討しながら確保できていない現状があるから、県にはグリスタの改修において工期短縮を求めた、という経緯がある。だがそれを県が覆した、というのが現在地。

▼このまま宙ぶらりんの状態でいるわけにもいかない。なぜなら今年6月までにJリーグに様々確定した情報を伝えなければクラブライセンスの審査が始まってしまうからだ。クラブライセンスの審査結果が出るのは通年では9月を予定。つまり、来年のクラブライセンスの審査が始まる今年の6月までに、栃木SCが来季使用するホームスタジアムについてある程度確定した情報がなければいけない。

▼栃木SCが現在、県に求めているのは、繰り返しになるが一点だけ。なぜ県は、ビックロール工法で「養生は1カ月で済ませることができる」と言っている業者や実例があるにも関わらず、その方法でやろうとしないのか? 納得のいく説明がなされないので、栃木SCとしては今後スポンサーをはじめ関係企業やファン・サポーターに説明する必要があるにも関わらず、その説明すらできないだろうということで困っている。

▼これらの状況に巻き込まれ、栃木SCは今季の開幕に向けて一部業務を停止するほかない状況にある。

 

以上。本件について今後、栃木県はどのような説明をするのか。栃木SCおよび栃木SCにかかわる様々なステークホルダーに説明する義務がある。

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