「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

宿敵とのダービー戦でもがくチームは変われるか。勝利を目指す選手たちを後押しする声援を。水戸に勝つにはグリスタ全体の力が必要だ。【J2第30節水戸ホーリーホック戦プレビュー】(19.8.31)

前節はアウェイで山形に敗戦し、栃木は依然21位降格圏を抜け出せずにいる。今節ホームに迎えるのは宿敵、水戸。6位と躍進する水戸に勝利するにはグリスタの一体感が必要だろう。グリスタ劇場の復活はなるか。今節は栃木県グリーンスタジアムで18時キックオフ。

 

▼選手たちを後押しする「がんばれ!」を

今週のトレーニングの様子は練習レポートのとおり色々とあった。

正直、選手が愚痴や不満を口にすることは、特に勝てていない状況下ではよくあることだ。こちらは信頼して話してくれていると受け止め、いつもさらりと流すようにしている。愚痴や不平を口にしながらも、いざピッチに立ったときにしっかりとプレーしていれば何も問題はないと僕は考えるほうだ。

ところが、今週のチームはそうはならなかった。監督がやろうと提示したことを一部の選手がやらずに緩慢にプレーしたのだから、由々しき事態だと思い、ここに書き記した。

ただ、そのことを監督も重く受け止めて、レギュラー組相当のメンバーを入れ替える決断をした。メンバーが入れ替わった翌日のチームの動きは見違えるほどに良くなった。一歩前進だ。

起きている事象はインパクトがあるかもしれないが、長く勝利を掴めていない中で選手たちもストレスを抱えてやっているので、このくらいのことはあっても仕方がない。大事なことは、チームが同じ方向を向いて戦うことだ。ここまでどんな経緯があるにせよ、明日の水戸戦のピッチに立つメンバーが一つにまとまっていればそれでいい。それだけでも十分に勝負になる。

 

紆余曲折あった今季も明日で30節を迎える。残りは13試合。今節の他会場では岐阜、鹿児島、福岡が勝利し、いよいよあとがなくなった。上位に躍進する水戸にも勝たねばならない状況になった。だが、決して不可能なことではない。ただ、勝つためには全員の力が必要だ。監督や選手たちの力を合わせるだけでは不十分だ。

どうか選手たちを後押しする声援をお願いできればと思います。僕の取材によれば、現在のグリスタにある雰囲気は選手たちが後押しと感じるそれになっていない。J2のスタジアムを制覇するあるタレントさんがグリスタの、特にメインスタンドの一部の強烈なヤジについて苦い顔をしながら話してくれたことがあったが、大変申し訳なくなった。

なかなか勝てない状況下で選手たちのプレーがうまくいかなければ、腹が立ってしまう気持ちはわかる。ただ、そこで「何をやっているんだ!」と罵倒しても選手が委縮するだけだ。実際、グリスタはピッチが近いのでヤジが他のスタジアムよりも選手たちに届きやすく、選手たちが委縮している現状がある。勝てないストレスを抱えながらも何とか前進しようとしている選手たちに、ヤジという強烈なストレスを重ねたところで何の改善にもならない。

どうしても選手に言いたいことがあれば我慢しなくてもいい。ただ、そこで「何をやっているんだ!」というヤジを飛ばすのではなく、こう言ってみてはどうだろう。

「がんばれ!」と。

それでもヤジを言い続ける人がいたら、周りの人たちがプラスの応援でかき消してしまったらどうだろうか。何度でも「がんばれ!」と。ヤジがあったとたんに「がんばれ!」と。

「がんばれ!」の渦が苦境のチームを優しくも鼓舞するような雰囲気を作り出せたとしたら、この苦しい状況において理想的に違いない。それは残り13試合の結果がどう出ようと、やり切ったことにならないだろうか。

 

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