在籍10年。栃木SCを牽引し続けてきた功労者、廣瀬浩二が引退会見。「これから自分の人生において(携わるクラブが)J1で戦えるクラブにすることだったり、何らかの形でJ1のピッチに立っている状況は不可能でないので、まだ自分がJ1の舞台に立つ姿は諦めていません」【記者会見】【無料掲載】(19.11.5)
11月3日、サガン鳥栖で4年、栃木SCでは2010年シーズンから10年プレーした廣瀬浩二が今季限りでの引退を発表した。この日のJ2第39節アルビレックス新潟戦は後半アディショナルタイムに相手を突き放す劇的ゴールで勝利。その余韻が残る雰囲気の中で、栃木SCを牽引し続けてきた功労者、廣瀬浩二の引退会見が始まった。以下に全文を掲載する。
まず、冒頭で廣瀬浩二から挨拶があった。
「あと3試合残していますが、今季限りで引退することを決めました。クラブから引退会見の話をもらったときに、そもそも僕のような選手が引退会見をしてもいいのか、日本代表でもなければ、J1で活躍した選手でもありません。それでも橋本大輔社長から『功績を判断するのはクラブやサポーターであって(廣瀬)浩二のすることではないよ』と。それを聞いたときに改めて栃木での10年間は誇れるものだと思いました。
Jリーグが開幕して27年、僕はあの華やかなJリーガーに憧れてサッカーを始めました。両手にはいっぱいのミサンガをして、放課後には友達と毎日サッカーをしてカズダンスやビスマルクのお祈りポーズに明け暮れました。僕は運もよくプロサッカー選手になることができたと思っています。僕のサッカー人生に関わってくれたすべての方々に感謝したと思います。サガン鳥栖で4年、栃木SCで10年、栃木SCでは5年間、キャプテンも努めさせてもらい様々な経験もしました。プロ1年目の頃に松本育夫さんから言われた『やってればよかったという人生より、やっててよかったの人生ですよ』という言葉がすごく心に残っています。誰もが来る今日という日に後悔しないために毎日のトレーニングに励んできたつもりです。それでも、人間は欲深いものなので、この先に引退することを後悔することがあるかもしれません。でもそれ以上に、これから先に進んでいく自分への期待もあります。とにかく残り3試合、残留のために自分がもっているものをすべて出し切りたいと思います。数々のエピソードがあるのですが、ここで話してしまうと質疑応答で話すことがなくなるのでやめておきます(笑)」
続いて質疑応答に移る。
――引退を決意した時期と決断を教えてください。
「時期については昨季、天皇杯を除く公式戦に一試合も出場できなかったとき、今まではそういうことがなかったので。その頃から自分の頭のなかでイメージしているプレーがピッチ上で表現できる回数が減っていました。もともと僕はうまい選手ではなく、チームのために頑張れる気の利く選手としてやってきたので、そこのズレが自分で許せないところがありました。まだできるという気持ちと、許せない自分の気持ちを比べたときに、許せない気持ちが大きくなったということです」
――いつごろに最終判断をしたのでしょうか。
「今季の天皇杯山形戦に出場したときは、やっぱりサッカーは楽しいなあ、と思いましたが、日々の練習で、ここで取れる! というシーンだったり、ここはシュートに行き切れる! というシーンだったりで、うまくプレーで表現できないことが多くなっていたので、ストレスは感じながらの日々でした」
――栃木SCに来て5シーズン主将を務めて、降格や昇格も経験しました。今一番に思い浮かぶシーンを挙げるならば。
「その質問は絶対に来るだろうと(笑)。やはり17年12月3日の沼津戦です。あそこは思い浮かびます……(少し言葉に詰まる)。はい……」
――その日のシーンで思い浮かぶシーンは。
「バスがスタジアムに入ってくるときに、いやいやここはホームかよ、と。すごい黄色一色で、これだけ応援してもらっている人たちがいるんやと。もちろん試合に勝って優勝して昇格がしたかったのですが、あそこに来てもらったサポーターの人たち、宇都宮とか、栃木から僕たちに応援してくれるサポーターの力がなかったら、あの最後のネイツ(ペチュニク)のゴールはなかったと思うし、あの試合はすごい特別なゲームだと思います」
――廣瀬選手は「J1でプレーしたい」という思いを話されていましたが、その辺りの思いにはどう踏ん切りをつけたのでしょうか。
「踏ん切りをつけるというよりは、自分がピッチ上でJ1でプレーするチャンスはなくなりましたが、これから自分の人生において(携わるクラブが)J1で戦えるクラブにすることだったり、何らかの形でJ1のピッチに立っている状況は不可能でないので、まだ自分がJ1の舞台に立つ姿は諦めていません」
――そうするとこの先のプランは描いているものがあるのですか?
「漠然とですが、自分の中ではここまでサッカーに育ててもらって、いろいろなサポーターの方々に応援してもらったので、何らかの形での恩返しをしたいです。今日もサポーターの方々に『栃木に残ってよ』『ずっと応援しているよ』という声をすごくかけられて、自分が必要とされることがこれだけ幸せなことなのだと再確認できました。自分が今後社会に出たときに、廣瀬はこんなことをしている、ということをまた記事にしてもらったりしながら、応援してもらっている方々の期待に応えられる人間になることが恩返しになると思っています。今季はまだ3試合が残っていますけれど、今シーズンが終わったあとに、社会人1年生になりますが、僕はこれまでどのシーズンが始まるときも、長いキャリアがあるからと偉そうな気持ちでシーズンに入ったことはないし、キングカズさんがよく『一生ルーキーだよ』と言われているのですが、僕もそういう気持ちでずっとやってきたので、社会人1年目になったときも同じような姿勢で挑みたいです。その姿を見てもらい、『あいつは色々と考えてサッカーをしてきた人間なんだな』と思ってもらえるように頑張りたいと思います」