ワンランク上を目指す取り組みは是だったか?【2019シーズンレビュー② チームマネジメント】(19.12.9)
※1万4千字あります。ご注意ください。
▼サッカーの面白さを追求するシーズンの始まり
今季の最後の10試合はチームでやるべきサッカーを明確に決めて、相手どうこうより自分たちのサッカーを貫いた。そして結果も出した。
これに対して、今季の大部分の栃木は停滞した。
今一度、シーズン中の田坂和昭監督のコメントと、それにリンクする選手たちのコメントを読み返し、順を追って振り返っていくと今季やろうとしたことと、そのつまづきが見えてくる。今回はやや長いがお付き合いいただきたい。
開幕戦はホームで金沢とスコアレスドロー。静かな開幕戦で、選手たちは事前に練習できなかったグリスタの芝状況を確認しながら、そして相手を見ながら状況を判断して試合をクローズ、勝点1を掴んだ。
開幕戦翌週の田坂監督とのやりとり。
――開幕戦のハーフタイムのコメントには「相手を見ながらやっていこう」という指示が出ていました。その辺りは去年までの栃木にはなかなか色としてなかった。今年はそういう選手たちが入ってきたこともありますけど、そこは面白いなと。
「そのほうが選手はやりがいがあるということなんです。自分も選手だったのでわかります。もちろんチームの形を決めていれば、このときはこうする、と言ってしまえばわかりやすいんですけど、次のオプション、相手がこう対策してきたらどうするの? というのが必要なんです」
チームの形を決めてわかりやすくしたやり方が、今季の最後の10試合だった。奪ったボールは相手のサイドバックの背後に蹴り込む。セカンドボールを拾って攻める。その繰り返し。しかし、相手のサイドバックがそれを先に読んで背後のスペースに帰陣して埋めてしまう試合があった。38節岡山戦(●0-1)はそうだった。「相手サイドバックが背後を埋めているなら、それを見て、判断して、一度横に繋ぐとか。そういうことをやっていかないと…」。試合後に大﨑が話している。その判断力を身につけていくから個人として、チームとしてレベルアップできるんだよ、というのがシーズン当初に田坂監督が訴えていたことだった。
以下、田坂監督とのやりとりの続き。
「サッカーは相手がいるスポーツだし、バレーやテニスのようにネットを挟んでプレーするスポーツではないんです。相手と入り混じるので相手を見てプレーしないといけないんです。そこが選手として面白いところなんです。駆け引きがあるので。相手がこうしたら我々はこうやって裏をとったぞと。サッカーはルール上、相手を騙していいスポーツだから、普段はダメですよ(笑)、でもそこが面白いじゃないですか。そこがサッカーの楽しみだと選手にもわかってほしいんです。だからこそ難しい、だからこそ面白い。逆の言い方をすれば、相手を見てから判断していいよ、といえば迷う選手もいるんです。決めてもらったほうがいい、という選手もいます。でも、そういう選手も少しずつアイデアを増やしながら成長していく。そういう選手が栃木にも増えているし、それがチームがビルドアップしていく、大きくなっていくために通っていかないといけない道なので。その意味でも自分が来てまだ数カ月ですけど、しっかりと相手や環境に自分たちが合わせられるようにやっていこうとしています。上には手ごわい相手がいっぱいいるんです。これだけやっていればいいよ、なんて言っていたらJ1では絶対に無理なんです。そこも踏まえて今は土台をしっかり作りたいと思います」
今季の最後にやった10試合をやり続けるだけでは限界があるよ、と言っている。最終節後に田坂監督が最後の10試合のサッカーを指して「本当は私はこんなサッカーはやりたくない」と言ったのも当初のコメントを遡ってみると繋がる。
では、それをクラブとしてどう考えますか、皆さんでもう一度考えてください、と言ったのだ。
▼遅攻がメインになったのはなぜか
2節アウェイ水戸戦は0対3で大敗。走る、闘うが圧倒的に不足した大敗だった。
上記のように理想を掲げても、走る、闘うが希薄なチームは水戸に虐殺された。闘うベクトルより、足下で繋げるメンバーを優先して起用していることもチームの脆さに繋がった。
開幕から途中出場が続いていたファイター型のヘニキについての田坂監督とのやりとりが興味深い。
――ここまでヘニキらしさが鳴りを潜めていた?
「よくあるのは、今までとは違うやり方になったときに、自分ができること以外のこと、できることではないことに気を取られ過ぎてしまう、頭でっかちになってしまう、ということがあるんです。ゴルフでいうイップス。考え過ぎてしまって身体が動かなくなるという感じかなと。ヘニキとはこれまでタイミングをみて話をしてきたし、コーチ陣とはよく話をしてくれていたので、いい感じになってきたと思います」
考え過ぎて身体が動かなくなる。まったく動かないわけではないが、考えるスピードが遅ければプレースピードも遅くなる。これはシーズン当初から、ヘニキに限った話ではなく、他の選手たちにも共通していたのではないだろうか。
(残り 11603文字/全文: 13673文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ