「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【無料再掲載】エスクデロ競飛王「這い上がるために栃木に来たし、今年はすべてを、自分のサッカー人生を懸けて戦います」【開幕直前ロングインタビュー】(20.3.4)

プレー面においても自分が栃木に合うという絶対的な自信がある。エスクデロには今季の栃木が目指す先の、ワンランク上の景色が見えているようだ。

「今年のテーマであるストーミングとは、前からプレッシャーをかける走るサッカーです。もちろん、そのサッカーをみんなが意識しないといけないし、やらないといけないけれど、ただ、それだけでは昇格できません。それをどうブラッシュアップさせるかといえば、実力のある選手、経験のある選手たちがストーミングを、いい意味でどう崩せるのかなんです。難しい作業になりますが、たとえば、縦に速いサッカーの中で、一つ落ち着かせて時間を作るプレーをするとか、今回は縦に速く行かないという判断をするとか。その判断を後ろであれば杉さん(髙杉亮太)や塩さん(塩田仁史)らが、前線ならば矢野(貴章)さんや僕がどうチームの手綱を引きつつ、いかに時間を作りながら周りを活かすのか。それらを縦に速いサッカーにプラスして混ぜ込んでいければ、ものすごく強いチームができると思います」

エスクデロは「言われていることを言われたとおりにやっているだけではダメだ」と言い切る。

「スタッフ陣に言われることは自分たちがプラスになるために言われているだけで、プラスαの部分は自分たちでどんどん作っていかないといけないんです。その意味では、まだまだコミュニケーションを取らないといけないし、まだまだできていない部分がある。一つのボールに対して練習から球際の部分で激しくやれていると思います。でも、練習では球際に強く行けているのに、試合では行けていない、というの部分も少し見えている。その練習と試合の差。サッカー選手は練習でいくらできても試合でできないと評価されないんです。だから、試合で実力を発揮できるようにもっと追及していきたいと思っています」

そのためには若手へのアドバイスは辞さないつもりだ。

「例えばついこの前、小さいプレーですけど、球際で大学生相手に負ける選手がいました。もちろん、ときに負けることはあるのですが、そこで相手と入れ替わったり、カウンターを食らってしまったりとか、それをそのまま公式戦でもやってしまえば、失点に繋がってしまうから、そこでは俺たちは絶対に負けない、走り負けない、というものを出さないといけない。その上で、それぞれの実力でありテクニックを出していかないといけない。審判と言い合って、相手と言い合って、でも試合が終われば、それはもう過去のことだから謝ればいいんです。試合中はサポーターが見ていて、こいつら闘ってくれているんだ、俺らのためにやってくれているんだ、と思わせないといけないんです。グリーンスタジアムに来た相手は、ここは嫌だな、もう来たくないな、と思わせるくらいの気持ちで帰らせたいんです。その意味でいえば、まだまだその境地にはたどり着いていない。それは僕からも要求していくし、発信していきます」

宮崎キャンプが終わるとき、エスクデロは食事の席で仲間たちを呼び寄せて、「目指すのは10位なんかじゃない。プレーオフ、昇格を目指すんだ」という魂を注入したという。宮崎キャンプの手応えもあってか、エスクデロが放つ熱いものに、すでに刺激を受けて、見るべき視野のレベルを引き上げている選手たちがいる。

「栃木は昨年残留争いをしたことで、あるいは、3年前にJ3から上がってきた背景もあって、だから今年は『10位以上を目指そう』という目標になるのはわかるんです。でも、選手たちが10位を目指したらダメなんです。最近、素走りのトレーニングで400メートルのスプリントをやったのですが、まずタイム内に入ることは無理でした。ではなぜそのタイム設定をするのか。そこに入ってほしいというギリギリの目標を立てるからです。それと同じことで、10位という設定は低すぎるんです。1位なんて無理だ、絶対にいけない、と考えるのではなくて、どうやったら1位になれるの? という思考回路になったときに、やるべきことや行動がすべて変わる。1位を目指すならばサッカーのために生きないとダメだし、人生をかけないとダメです。そうなったときに初めてプレーオフ争いや優勝争いが見えてくる。僕自身、サッカーだけの環境になればおのずと行動が変わるので、そうなったときの自分は強いことを知っています。そういう思いを周りにどんどん伝えていきたい。チームとしてそこを目指していきたい。だから、めちゃくちゃ頑張りますよ。自分も自分に期待しかしていません。この数年の自分は暗黒の世界にいました。そこから這い上がるために栃木に来たし、今年はすべてを、自分のサッカー人生を懸けて戦います」

エスクデロのプレーは非常に柔らかく一級品だ。練習では常に先陣を切って声を出すなど盛り上げ役もこなす。

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