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「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

【無料掲載】【蹴辺の栃木たち】第四回 大塚隆寛/ココグリ編集長 グリスタがポジティブな応援に包まれる日を夢見て。(20.3.21)

栃木サッカー界の周辺で活躍する人たちのストーリーを紹介する『蹴辺の栃木たち』。連載第四回目は、栃木SCのみならず栃木のサッカーを盛り上げようとフリーペーパー『ココグリ』を立ち上げた大塚隆寛さんの思いや活動をピックアップ。

ココグリ編集長の大塚隆寛さん(向かって右)。向かって左はお手伝いをする栃木SCサポーターの瀬尾周平さん。

 

▼皆さん、もう『ココグリ』はご存じですね

 

中断期間中も『ココグリ』は激動である。

新型コロナウイルスの影響でココグリを現場で手渡しできないとなれば、ウェブ版もスタートさせて、そこにありったけのパッションを注ぎ込む。

ココグリの過去の記事を掲載するなり、栃木の高校年代へのアプローチや発信を積極的にするなり、何かを伝えてやろうという気持ちがぐいぐい伝わる。

 

サポーターが読んで楽しめる『ココグリ』は、栃木SCの情報のみならず、県内の栃木サッカー情報を広く扱うフリーペーパーだ。

名前の『ココグリ』は、まず名称を栃木SCサポーター向けに募集し、栃木SCゴール裏が奏でるチャント『ここはグリスタ』から発想した案が、Twitter上のアンケートでもっとも票を集めたことで決まった。

その発行に責任を持つのは宇都宮市在住で栃木SCサポーターの大塚隆寛さん。初めてお話を聞かせてもらったのは昨季のホーム最終戦前のことだ。

ココグリは昨季の途中から配布がスタートした。なぜ始めることにしたのだろうか。

 

「(昨季の)前期戦はわずか3勝で、試合後の雰囲気がすごく悪く、SNSも荒れていたので、どうにか雰囲気を変えたいと思っていました。何をしようかと考えていたとき、柏レイソルのアウェイ戦で『柏でよりみち  アディショナルタイムズ』を手に取ったんです。これ、栃木でもやってみたいなと」

 

フリーペーパー『アディショナルタイムズ』は、僕も柏へのアウェイ遠征のときに柏駅付近で受け取っている。

その日のプレビューから始まり、選手へ寄せるサポーターのメッセージ、スタジアムグルメや近辺のお店紹介などなど。ホームの柏サポーターのみならず、アウェイを楽しみたいと思っている人たちにとっても有益で、細かな、それでいて大事な情報が凝縮したサポーターズフリーペーパーだ(ちなみに『アディショナルタイムズ』の編集長は編集を生業にするG大阪サポーターが務めているとの情報が。アウェイサポーターを楽しませたいとの思いからだという)。

 

大塚さんはあのようなフリーペーパーを栃木でもできないかと考えた。

 

「ココグリを始めようと思った当時、北海道コンサドーレ札幌の野々村芳和社長が何かの記事で『お客を集めるのはクラブの仕事、リピーターにするのはサポーターの仕事』と話しているのをたまたま見て、納得感があったんですね。ああ、これだと。僕は観戦に来てくれたお客さんのおもてなしがしたいし、そのためにも、”またグリスタに来たいなあ”と思ってもらえるものを作りたいんです」

栃木フットボールマガジン編集長の手元にも日々集まった『ココグリ』がたくさん。毎回ほっこりしながら読ませてもらっています。

▼『Jサポフリーペーパーサミット』にも参加

 

始めたときはA4版の紙一枚だった。「恥ずかしいくらいの情報量でやっていた」というスタートから、絵を描いてくれたり、ココグリのロゴを作ってくれたりする仲間が現れ、少しずつ軌道に乗り始めた。今では原稿を書いてくれる人たちの数も増えて、A3版を二つ折りしたものにA4版を1枚挟んで合計6ページになるときもあるという。

媒体が軌道に乗り、広く認知される起爆になった出来事がある。

 

「えとみほさん(栃木SCマーケティング戦略部長)らクラブスタッフの方々が柏レイソル戦のアウェイ戦に栃木SCのチケットを販売にしに行ったときのことですね。『アディショナルタイムズ』の編集の方もえとみほさんの存在は知っていて、フリーペーパーを持って行ったらしいんです。そのときにえとみほさんが『うちでもフリーペーパーをやっているんですよ』と伝えてくれたことがきっかけで、向こうから連絡をいただきました。それからヴィッセル神戸やアルビレックス新潟、ヴァンフォーレ甲府の方々とも繋がることができて、だんだんとサポーターの間に広がっていったという感じですね」

 

大塚さんは今年1月下旬に開催された『第二回Jサポフリーペーパーサミット』にも参加し、栃木にココグリあり、と周知しつつ、他サポーターとの繋がりを深めた。今後、相手チームのフリーペーパーとコラボする下準備も十分である。

 

大塚さん自身は媒体の編集についてずぶの素人というわけではない。

マスコミ志望が集う専門学校を卒業後、一般企業に就職して今に至っている。若かりし頃に抱いたやりたい方向性と、栃木SCのサポーターとして現状でできることの中にココグリはあった。

編集作業は基本的に一人だ。ホーム戦が終わった翌日から”一人編集会議”がスタートする。次回のホーム戦で配るココグリに何を取り上げようかと思案を重ね、書いてくれそうな人に目星をつけて発注を出していく。

 

「僕自身がレディースを応援しているので繋がりはありますし、栃木SCのサポーターの中には、ユースや高校サッカー、大学サッカーが好きな方々もいるので、うまく交流を深めながら協力してもらい、栃木県全体をお伝えできればいいなと思っています」

 

そのほか、誌面には栃木SCのグッズ担当が登場したり、ボランティアスタッフが登場したり、ときにはクラブスタッフも登場したりとクラブに関わる人たちの隅々まで様々だ。僕自身も読んでいて、こういう人たちがこんな思いでやっているんだなあ、などとしみじみさせられることがある。

栃木SCからブランデュー弘前にレンタル移籍していた早乙女達海、山本廉、本庄竜大らのコメントをいち早く掲載していたときには、あー先越されたー、とも思った。

媒体をフル活用してアグレッシブに動き回られているので、同じく媒体を運営する者として負けてられないなあ、という思いもある。

 

「フリーペーパーはお金を取るものではないし、サポーターだからこそできることがあると思うんです。高校サッカーを広く伝えようとするときも、一般的には高校生とすぐに繋がるのはなかなか難しいけれど、それができるのもフリーペーパーがあるからこそ。『掲載した号をグリスタで配布するから来てね』と伝えれば当日彼らに渡すことができるし、『試合も見ていってね』とできますからね。グリスタに誘導しようというつもりはないんですけどね(笑)」

▼書きたいことを書く、読ませたいことを書く

 

一方で、媒体が広がりを見せて、協力してくれる人が増えれば増えるほど、取りまとめ役となる大塚さんの見えない苦労も当然ながらある。

 

「自分で書くもの以外は、お願いすることになりますが、栃木県民は引っ込み思案なので募集してもやろうとすぐに手を挙げてくれる人はなかなかいません(笑)。だからこちらからお願いすることになりますが、中にはありがたいことに、まだまだ書けるよー、とほとばしる熱量をぶつけてくれる方もいれば、締め切りの期限が迫ってヤキモキして待っているときに『今回は書けないので次回にしてください』と言われたことも。待ってくれーー! と叫びつつ、そのときは自分で書いて誌面を埋めました(笑)。皆さん仕事ではないし、原稿がなかなか届かないというのは、これはもうしょうがないですけどね」

 

書いてもらう人に、何とか頑張ってくれー、と応援することしかできないのが編集人の仕事というものだ。一人で大人数を抱えているのだから、その気苦労は容易に想像できる。

ただ大塚さんは、協力してくれるだけでもありがたいんです、とこう続けた。

 

「皆さん『私は書けるかなあ』としり込みされることが結構あるのですが、『書きたいことを書く、読ませたいことを書く、という感じでいいんですよ』と伝えています。そのほうが相手にストレートに伝わるし、いい記事になるんです」

 

これを伝えるんだというパッションがあれば文章のうまい・へたは二の次だ、というのはよくわかる。ときにサポーターが“格好をつけずに”想いを書き殴ったほうが心に突き刺さることが往々にしてある。

 

サポーターの心をくすぐる媒体だったからだろう。ココグリも最初こそ、物珍しそうなものを見るような遠慮がちな反応だったものが、認知が広まってからは大塚さんたちが配布する場所まで受け取りに来てくれるサポーターも増えていった。

 

現在はホームゲームにつき500枚以上を配布しており、いつも数名のサポーターが配布を手伝ってくれている。毎回あっという間に配布しきってしまうほど盛況だという。昨季はアウェイでの配布にもチャレンジし、最終節のジェフ千葉戦では千葉側との折衝の末に配布にこぎつけた。

 

すべてのエネルギーの源泉は、栃木SCを愛する気持ちにほかならない。

大塚さんが栃木SCを見始めたのは13年シーズンから。会社にあった栃木SCの招待チケットを使い、横浜FCに所属するカズ(三浦知良)見たさにグリスタを訪れたのがきっかけだった。その試合は0-0。何となくすっきりせず、勝つまで見てやるか、と次戦アビスパ福岡戦は自らチケットを購入して観戦すると、ポンポンと2ゴールを奪って2-0で勝った。

(なにこれ、面白いじゃん)

そこからドハマりした。翌シーズンからシーズンパスを購入し、栃木SCのエンブレムが付いたタオルマフラーを首に巻くようになるまで時間はかからなかった。

大塚さんは今、栃木SCのゴール裏で熱く応援を続けながら、こう願っている。

 

「この1枚の紙きれであるココグリがどれだけの効果を生むかはわかりませんが、いつかグリスタが、ポジティブに応援しようとする声であふれる雰囲気にしたい。やはり、それが一番の思いですね」

 

試合前にココグリを手にしたファン・サポーター、あるいは、初めてのお客さんが、選手たちの思いや、彼らを応援する人たちの思いに触れて、

(なんだかいいもの読んだなあ……)

という前向きな気持ちを抱く。そうして、目の前で戦っている選手たちの背中を熱く後押しする――。

大塚さんは、そのような光景が当たり前になることを夢見ながら、今日も明日も明後日もココグリに愛情を注ぎ続けている。

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