「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

11月の更新予定。【お知らせ】(20.10.28)

▼今季も残すは13試合 

今週のトレーニングの公開は明日のみなので、練習レポートは明日掲載いたします。明日は新たなスーツの会見にも顔を出してこようと思っています。会場がカンセキスタジアム内のようなので下見も兼ねて。

それと10月中に掲載しますとお伝えした育成関連の原稿ですが、やや難産というか手間取っていまして、最後の詰めの段階なのですが、もう少々粘らせてください。近日中には掲載いたします。申し訳ないです。

 

さて早いもので、もうすぐ11月です。

5連戦の連戦という異様なレギュレーションとなった今季も、残すところ13試合ですが、まだ5連戦があと2回、そして3連戦締め。試合をぎゅっと短期間に開催することによる疲労の蓄積、負荷の蓄積、そういうものは間違いなくあるシーズンです。先週のレポートで「だんだん選手層が厚くなってきた」と書いた途端に戦力が流出したり新たなケガ人が出たりと、最後まで落ち着かないままシーズンを締めることになるのでしょうか。

当サイトに上げる記事についても、今季はプレビューとレビューと練習レポートを連続している構成になっていて、もうちょっと丸みのあるコラムを載せたいところですが、取材時間や取材人数なども限られる状況下ゆえ、それでもどうにかこうにかと四苦八苦している最中です。

そんな中に入れ込もうと思った育成関連の原稿でしたが、もう少々お待ちを。

来月11月の更新も、レビューや練習レポートが中心になると思いますが、一つ、シーズンオフを見据えた企画を展開しようと思っています。今季は栃木SCが明確なスタイルで戦っているので、それをベースにしたときに、来季に向けてどんな選手が必要なのか考えやすい側面はあると思います。これをどなたかゲストをお招きしてやってみたいなと。できれば、J1J2を幅広く見られているどなたかを。

  

最後に、最近関わったお仕事のご紹介を。

「ポジショナルフットボール実践論 すべては『相手を困らせる立ち位置』を取ることから始まる」(渡邉晋著・カンゼン)

 

 

昨季までJ1ベガルタ仙台で指揮を執っていた渡邉晋さんの初著書です。構成はライターの清水英斗さん。僕は全体の編集協力という形で打ち合わせ段階から参加させてもらいましたが、打ち合わせの時点で相当に面白く、手応え十分でした。

最初は、ポジショナルプレーとは何ぞや? というシンプルな戦術本になる可能性がありましたが、それだともったいないと。

渡邉晋さんというJ監督は、堅守仙台にポジショナルプレーを導入し、軌道に乗せ、相手の対策があり、試行錯誤しながら対抗し、最後は息詰まるなかで地域やクラブを背負った一人の指導者として堅守への現実回帰から残留を果たした、というストーリーを持たれる方でした。戦術の構築の流れを、このストーリーに乗せることで、現場のリアルがより伝わるだろうと。実際、試行錯誤や葛藤が行間からにじみ出てくる、味のある”戦術エッセイ?”になっていると思います。

 

ポジショナルプレーとは、ボールを握りながらピッチ上のスペースを支配することに重きが置かれる考え方です。

スペースを支配するために、渡邉氏は「一人が二人を困らせる立ち位置を取ろう」と選手たちに繰り返します。

これ、守備のゾーンディフェンスでも、ボールを中心としつつ「一人で二人を見る」ポジションの妙が肝になるわけで、しかも、そういう守備によってピッチ上の「スペースを支配する」わけです。

ボールを持つか、ボールを持たないか、その違いがあるだけで、二つの考え方はすごく似ている。

ポジショナルプレーとは、ゾーンディフェンスをひっくり返したものだ、という仮説を立てたならば、栃木ウォッチャーの皆さんも途端に親近感が沸いてくる書籍になるのではないでしょうか。安心してください。この本がいくら売れようと僕には1円も印税は入ってきません。

僕自身、無意識に、守備に比重を置きながらゲームを見てしまうのですが、ただ、サッカーには相手がいるもので、相手側の攻撃の狙いを深く知ることで、自分たちの守備の考え方をより深めることもできるのだと思います。

 

また、本書の中で渡邉氏は非常に平易な言葉を使って選手たちに戦術を落とし込んでいることが明らかになります。横文字を使って抽象的に伝えてしまうことを避けていました。例えば、「ハーフスペース」という言葉を使うことを極力避けるなどしていました。そうではなく「切る」「もぐる」「留める」といった日本語をなるべく使いながら選手たちにやってほしいアクションを理解させようと努力されていました。

例えば「留める」というのは、ウィングバックが高い位置を取ることで相手のサイドバックを自陣に「留める」といったアクションを指しています。「留める」と聞いたときに、選手たちの誰もが「留める」がどういうプレーなのかはっきりとイメージできることが大事なのです。これが言語化の成功です。

ここがわかりにくいと、選手同士の理解にばらつきが生じてしまい、結果、チーム全体の戦術の浸透も遅くなってしまう。指導者の言語化能力とはその差異だと思います。言葉のわかりやすさ。説明のわかりやすさ。

その点、今季の栃木は選手の誰もがわかりやすいベクトルを共有しています。ボールを奪った瞬間に何をすべきか、そのプレーの原則を誰もが理解している。だから、プレーが速い。理解を深く浸透させ、お互いの目を揃えることでプレーが速くなる。足が速ければいいってものでもないわけです。

ぜひ本書も手にとってみてください。戦術本として、ポジショナルプレーを導入する奮闘記として、ゾーンディフェンスをひっくり返した攻撃本として、じっくり味わい深く読め進められます。おススメです。

 

鈴木康浩

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ