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「栃木フットボールマガジン」鈴木康浩

「今後、明本たちに続く選手を毎年輩出します」栃木SCアカデミーのDNAとは何か?/栃木SC只木章広育成部長【インタビュー連載①/全3回】(20.11.13)

▼トップチームの活躍で盛り上がる栃木SCアカデミー

 

「うちに所属しているアカデミーの選手の反応はもちろん、スクール生や一般の方までトップチームの話題で持ち切りなんです。トップチームが勝っている中、アカデミー出身の明本らが中心選手として活躍してくれている。それが子どもたちの励みになっています。『ああいうプレーは真似しないといけないよね』『ああいうプレーが栃木SCの選手のプレーだよね』と子どもが自分たちで言っている状況なんです」

 

栃木SCの育成部のトップ、只木章広育成部長が開口一番、嬉しそうに話してくれた。

今季、栃木SCのトップチームでアカデミー出身の選手たちが3人、4人と活躍する状況が生まれている。トップチームが『戦う』『走る』を軸とするスタイルを体現する中、彼らが漏れなく順応するだけに留まらず、結果を残している。

彼らは栃木SCのアカデミーを通るなかで何を獲得してきたのか? 栃木SCの育成に受け継がれるDNAとは何か?

今回、栃木SCアカデミーのスタッフ3人、只木章広育成部長(兼U-18コーチ)、花輪浩之アカデミーダイレクター、浜嶋淳郎U-18監督らに話を聞かせてもらった。

まずは、只木育成部長のインタビューからどうぞ。

 

只木章広(ただき・あきひろ)
1975年4月16日、栃木県宇都宮市生まれ。真岡高、順天堂大学を経て99年に栃木SC入り。当時関東リーグだった栃木SCをJFL(日本フットボールリーグ)昇格に導いた。その後主将を務めるなど背番号10を背負って中心選手として活躍。06年の第86回天皇杯では4回戦の清水エスパルスとの4対6の死闘では反撃の口火を切るゴールを決めた。この戦いは全国各地に知れ渡り、栃木SCのJリーグ参入への動きを強力に推し進めた。06年限りで栃木SCを退団すると、その後はヴェルフェたかはら那須(現ヴェルフェ矢板)でプレーした後、現役を引退。サッカーへの情熱は冷めやらず15年3月を持って栃木県職員を退職、同年4月より栃木SCジュニアユースの監督に就任。16年から現職に就任した。/写真は栃木SC提供

 

▼各年代に潜在能力を持っている選手は確実にいる

 

――只木さんがアカデミーのスタッフとして入られたのは2015年。2016年から育成部長に就任されました。その就任直後、今から約4年前にインタビューをさせてもらったのですが、当時こうおっしゃられています。「いまのアカデミーの子たちがトップチームに昇格すれば5年でトップチームは変わる」。5年を待たず、4年で状況が一変しました。

 

只木 そんなことを言っていましたか(笑)。まあ、それは期待も大きく込めてということですよね。

 

――只木さんが育成部長になられたとき、明本考浩選手たちは大学の1年生、山本廉選手らが高校2年でした。

 

只木 僕は黒崎(隼人)については直接プレーを見ていませんが、明本や森、特に明本は個人のポテンシャルがかなりありましたし、ああいう爆発的な力があったので大学に行けばさらに伸びるだろうと思っていました。

 

――そして戻ってきてくれた。

 

只木 今の状況はそれがすべてですよね。他のチームに行く可能性もあったでしょうからね。

 

――クラブとして彼らに戻ってきてもらうための努力はしていたと思います。

 

只木 僕自身は彼らを直接指導していないので深く関わりはありませんでしたが、当時のユースの監督だった町田さん(秀三、現栃木SC U-15監督)や浜嶋コーチ(淳郎、現栃木SC U-18監督)、ジュニアユース年代では花輪さん(浩之、現栃木SCアカデミーダイレクター)や森川(智広、現栃木SC U-12コーチ)が本人たちとまめに連絡をとっていたし、大学の試合を見に行くこともあったと聞いています。

 

――彼らが戻ってきたことはクラブとして理想的だと思います。できれば明本選手のような選手を量産したいところでしょうが、只木さんとしてはどのように考えていますか?

 

只木 楽観的かもしれませんが、各年代に1人ずつそういう選手はいます。明本クラスの選手となると10年に1人のレベルかもしれませんが、タイプが少し異なるだけでも、それだけの潜在能力を持っている選手は確実にいます。

 

――彼らをアカデミーで成長させる、あるいは大学経由で戻ってくれば十分にプロでやれる。

 

只木 やれます。大学を経由して成長して帰ってくる成功例はできましたので、今度はユースから直接上がった選手で同じようなことができるか。いま(山本)廉がやってくれていますが、他のチームを経由しているので、そこに挑戦するということになります。

 

――4年前のインタビューでは「ユースから直接トップチームに上がっても最初の2年間は難しいだろう」と話されていますが、それは今も変わりませんか?

 

只木 変わらないです。やはりトップチームの状態もあるので難しさはあります。プロのシビアな戦いが連続する中にしっかり入っていけるか。それとも長いスパンで見てもらえるのか。チームを勝たせながら若い選手を鍛える難しさはあります。選手はプロの真剣勝負を経験しないと絶対に強くなりませんから、そのバランスは難しいと思います。

 

――山本選手が地域リーグで2年間経験して、プロ3年目の今季、試合で活躍し始めていますが、順調という見方ですか?

 

只木 そうですね。カテゴリーは下だとしても実戦を経験していますから。あとは、田坂監督も思い切って起用してくれていると思います。

 

――田坂監督とも密にコミュニケーションをとっているのですか?

 

只木 私はそれほど直接話をしていませんが、山口(慶)強化部長とは色々な話をさせてもらっています。浜嶋U-18監督が一番トップチームと連携しているので、詳しくは浜嶋監督に聞いてみてください。

 

▼『馬車馬サッカー』を体現した髙橋高から受け継ぐDNA

 

――やはり、4年前のインタビューのなかで「只木流の強いチーム」の在り方について、『戦えて』『走れて』『体を張れる』ことを外せない要素として挙げています。これらを押さえた上でプラスαを付け加えていく、というのが栃木SCアカデミーの基本的な指針だと理解していますが、その色は只木さんがクラブに入ってから根付いたのか、それとも只木さんが来られる以前からあったのか、それはどう見ていますか?

 

只木 それはもともとあったものだと思います。僕が栃木SCの選手としてプレーしていた頃(99年~07年)、当時、花輪さんが率いる栃木SCジュニアユースを見ても、走れるし、戦えるし、中学生とは思えない逞しさがありました。やはり、過去から脈々と受け継がれていると思います。

 

――それは、どうしてそういうことになったのでしょう? 誰かがそういう哲学でやろうとしたのでしょうか?

 

只木 一つはJFL時代のトップチームを率いた髙橋(高)さんの影響は大きいと思っています。基本的に押さえるべきこととして『走る』『アグレッシブ』『スピーディ』、これらを徹底して求めていました。それを当時の栃木SCアカデミーのスタッフたちが大事にしたと聞いているし、栃木SCアカデミーに流れるDNAの起点になっているのではないかと私は思っています。

 

髙橋高。2000年初頭からのJFL時代の栃木SCを長く指揮した人物で、クラブがJFLからJリーグ昇格へと向かっていく時期の礎を築いた。当時のJFL栃木SCのスタイルは、自分たちのみならず、JFLの各チームのサポーターからも“異色のスタイル”としてこう呼ばれることがあった。

馬車馬サッカー――。

その心は、『とにかく前へ、前へ、90分間を走り切れ!』である。

髙橋は、明本考浩の遠い先輩に当たる国士舘大学の出身。髙橋が在籍した頃の国士舘大学は大学最強チームで、当時の大学サッカー関東リーグで全勝優勝を果たしている。チームメイトには後に日本代表の主将を務める柱谷哲二や宮沢ミシェルといった実力者たちがいた。髙橋も大学卒業後はヤマハ発動機サッカー部(ジュビロ磐田の前身)に加入することが決まっていながら、地元栃木で国体が開催されるタイミングが重なり、地元で教員の道を歩むことを決意。これがその後の栃木SC入りへと繋がる。

髙橋に以前取材したとき、自身がJFLで展開した”馬車馬サッカー”のコンセプトをこう表現したことがある。

「何よりも前にスピーディなサッカー――」

今季のトップチームに通ずるそれである。

 

只木 栃木SCのアカデミーはそもそも神山和泰アドバイザリーコーチが2002年に立ち上げているんです。彼が初代の育成部長になったのですが、彼は髙橋さんの下でプレーした、いわば愛弟子でした。森川さん、久米さん(洋司、現栃木SCスクールマスター兼U-12コーチ)、花輪さんとそのDNAがずっと受け継がれている。その後2009年からトップチーム監督に就任された松田浩さん(現V・ファーレン長崎育成部長)が示した強固なディフェンスと速い攻撃、それらがベースになって今の栃木SCのアカデミーにも受け継がれているのではないかと個人的には思っています。

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