【無料掲載】2016Jリーグ2ndステージ第7節・湘南ベルマーレ戦[曺貴裁監督(湘南)][監督コメント]

○曺 貴裁監督(湘南)

お疲れ様でした。本当に暑い気候の中で、この埼スタという素晴らしい環境でプレーできた今日の選手たちは、負けましたが、言い方を変えると何事にも代えがたい貴重な経験になったと思います。最後負けたにもかかわらず、湘南地域やいろいろなところから来てもらって、われわれの選手たちを後押ししてもらったサポーターの方たちには心の底から「勝てなくてすみません」、「応援ありがとうございました」という言葉を伝えたいと思います。

前節・川崎戦のときもそうでしたが、ここ最近失点が続いていますから、もちろんわれわれは順位も下なので、チームとして失点をしないというプランで試合に入っていって、少ないチャンスをモノにする。そういう戦い方を取るという選択肢もありますが、そういう選択をしてはいません。今日の90分を通して、結果だけを見れば、1-4という大敗ではありますが、勝とうが負けようが、相手に対して向かっていく力や、ゴールに向かっていくパワーなどはわれわれの特徴だと思っています。

点を取られたことは反省しなければいけないですし、ミスやアクシデントも含めてそれが自分たちの実力なのですが、選手に要求したことや、今日で言うと「勝ち点3を取れればベリーハッピーだけれども、もしそれが勝ち点1になったとしてもハッピーだ」という話をした中で、最後まで追い付く努力をしてくれたことは評価していいと思います。

ただ、もちろん1失点目もそうですが、3失点目が本当に痛かったなと思っています。とはいえ、われわれのやり方をした中で、アクシデントやミスがゼロになるというのはチームの基準の中であり得ないことです。結果に対しての悔しさを持って、毎日毎日ミスを引きずるのではなく、ミスを取り返すというメンタリティーでやっていくことがわれわれのチームにとってはすごく大事なことだと思います。そういう意味ではもっともっとミスに関わった選手だったり、シュートを外した選手が1回外しても、2回3回と前へ行けるようなメンタリティーを持つ選手を作っていかなきゃいけないなと、監督として反省していますし、そう分析をしています。

言い方が正しいかは分かりませんが、例えば生き物を育てるときに大きい草原で放牧するというやり方、もしくは自由に草を食べさせてどこでも走ってよくて、いつに寝てもよくて、その中で自分の居心地の良い場所を見付けるというやり方もあります。逆に養殖するというか、狭いところに閉じ込めて、いつに何を食べてここで寝て、朝起きたらこういうことをやりなさい、というようなやり方もあると思います。

指導においてはこの二つのどちらが正しいかという答えは、極論を言えばないと思いますが、僕は湘南の選手に関しては養殖しながらも、いつでも檻から飛び出していける力というか、養殖で学んだことを檻を飛び越えて自分で大海原に出ていくというか、そういうパワーを持ってピッチに立ってもらいたいし、このチームを経てまた違う世界に挑戦してもらいたいと常々思っているので、そういう意味で言えば、今日の試合は下を向く内容ではなかったと思います。もちろん個々に養殖の仕方や、そんなところを飛び越えられないだろうという判断のミスもあったと思いますが、根本的なエネルギーに関してはやってきたことをやろうとしてくれたんじゃないかなと思っています。

残りあと10試合、天皇杯もありますが、自分たちがここで学んだことを次に生かしていかなければいけないですし、下を向いている選手は誰もいないので、僕も前向きに、まあ前向きにと言うと「ちゃんと考えてるのか」と言われてしまうかもしれないですが、前向きに考えることが取り柄だと思っているので、前向きにやっていきたいと思います。

 

Q 湘南はJ2に降格したり、J1に昇格したり、J1に残留したりしている中で同じやり方を徹底してきています。今後に向けて、どうなってもいまやっているサッカーを変えないと、監督は絶対に言い切ると思うのですが、いかがでしょうか?

A いまやっているサッカーを変えないということはすごくラクで、簡単なことです。僕は、サッカーは本質的にボールとゴールを奪い合うスポーツだと思っています。「チャンスだと思って出て行ったときに、横パスでミスをしてカウンターを食らうことが怖いから、チャンスだと思っても出て行くな」ということをやっていると、明日も明後日も1年後も2年後も、選手の力量はまったく変わらないと思っています。

要は状況判断力をしっかりしようという話です。前へ行けると思って行っているのか。なんとなく前へ行けると思って行っているのか。前へ行けないと思っているけど、行けと言われたから行ったのか。それぞれ全然違います。そういう意味で今年のチームは慣れている選手もいますが、状況判断の部分は改善しないといけないと思っています。トンネルの出口が見えなくてずっと歩いているということはあり得ないと、僕自身の分析では思っているので、この産みの苦しみを改善しようと、映像分析や練習で落とし込んでいくことで、判断できるようになった部分はあります。状況判断に関して、ファーストステージよりも、セカンドステージのほうが改善されていると思っています。

ただ結果が出ていないことに関しては反省しないといけないと思っています。またその一方で結果が出ないからといって、本質的な考え方を覆すようなことを提示してしまうと、選手たちはどちらに行っていいのか迷ってしまうので、基本的に選手が聞いて「なるほど、分かりやすいな」と思うようなことを話しています。それはブレる、ブレないとか、変える、変えないといった類の話ではなくて、それが真理だと。誰もが見てもそのプレーが成功したと思えれば、さまざまな状況の中で判断したプレーが正解なんだという言い方をしています。

走れて、ディフェンスができて、技術があって、クロスも正確に上げられる選手は誰が見ても良い選手ですし、「オレは技術があるから走れなくても良いでしょ」という選手は、ある人が見れば良い選手かもしれませんが、ある監督からすればそれは良くない選手だと見られます。両方の立場の人から見ても、「良い選手だね」と言われるような、そういった能力を兼ね備えた選手になるような努力をしようと、選手たちには話してきています。ブレる、ブレないとか、変える、変えないといった類の話ではなくて、しっかりとした状況判断ができるようになることがごく当たり前で、自然なことだと思って、僕は彼らに話をしています。

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