川崎の猛攻を防げずも、 アウェーゴールを得て第2戦へ【島崎英純】2017AFCアジア・チャンピオンズリーグ準々決勝第1戦・川崎フロンターレ戦レビュー

守備的布陣で臨むも… 

 ホーム&アウェー戦は2戦合計180分間で雌雄を決する。浦和レッズは初戦がアウェー・等々力陸上競技場でのゲームだったために、まずは専守防衛、その上でアドバンテージを握れるアウェーゴール獲得を目指す手法を模索した。堀孝史監督が決断した戦略は守備時に5-3-2のシステムを敷くこと。攻撃時はノーマルの3-4-2-1に可変するものの、相手にボールキープされた際はサイドアタッカーを3バックに吸収させた上にシャドーのひとりが中盤まで下がってトリプルボランチを形成し、前線の2トップがカウンターアクションを起こす守備的な形で対峙した。

 5-3-2布陣は前節のJリーグ第23節・FC東京戦の後半ですでに試されている。リードした浦和はチーム全体の位置取りを自陣方向に定め、左シャドーの武藤雄樹がポジションを下げる形で阿部勇樹、そして後半途中から出場した青木拓矢とトリプルボランチを築き上げた。僅か1点のアドバンテージだったが堀監督は躊躇せずに選手たちへ防御態勢を指示し、チームはポストとバー直撃のシュートを浴びながらもリードを保ってゲームを終えた。

 川崎フロンターレと対峙した浦和のゲームプランは第1戦前半で様子見、同後半にアウェーゴールを狙い、第2戦のホーム・埼玉スタジアムでは攻撃的に相対する算段だったと思われる。しかし今の川崎はJリーグ屈指の攻撃力を誇り、守備も堅牢な真の強豪である。

 川崎のボールポゼッションは正確で効率的、そして破壊的だった。浦和は相手ボールホルダーへアプローチせず、自陣にリトリートして各選手のポジショニングを徹底させてスペースを埋めたが、相手はその隙間を巧みに利用していく。川崎のシステムは4-2-3-1だが、1トップの阿部浩之が神出鬼没にエリアを移動し、トップ下の中村憲剛もフリーロールで闊歩する。また左右に張る小林悠と家長昭博はチャンスシーンでゴール中央に入り込むので、浦和は動向を見極めながら相手の侵入経路を抑えねばならない。また川崎のプレーコンダクターである大島僚太とエドゥアルド・ネットは阿部と青木、そしてシャドーの一角として先発した矢島慎也がトリプルボランチの一員となってプレースペースを狭めなければならない。ただ3人で中盤の縦横をケアする形はチーム全体のコンパクトネスを維持してスライドしないとカバーしきれない面もある。特に危険なのは相手サイドバックの車屋紳太郎、エウシーニョのふたりがオーバーラップしたときの対処で、堀監督は矢島や青木、もしくは右シャドーの李忠成をサイドに寄らせると共に、チーム全体を片方のサイドにスライドさせる守備戦術を指示していた。

 また、今回の浦和は後方からのビルドアップを3バックが担った。これまではボランチの一角が最後尾に降りてきてリベロと共に起点となったが、今回はボランチの阿部と青木が中盤で構えて陣形を崩さなかった。これによって両ストッパーが前方に張る『疑似サイドバック』化が成されない一方、各選手が均等にポジションを取ってバランスを保つことはできた。

 隙間を生まないことは堀監督体制発足からのファーストプライオリティだ。これはミハイロ・ペトロヴィッチ前監督体制時に露呈した守備面の不備を解消する最善策で、その成果は新監督就任後の公式戦4試合で3勝1分の成績から示されていた。ただ、この隙間を挑戦的に突く相手と対峙したとき、チームは自らと相手の力量差を知ることになる。

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