4−1−4−1は、今の選手陣容にマッチしない!【島崎英純】2017Jリーグ第27節・サガン鳥栖戦レビュー

安易な先制失点

 失点が拙すぎる。試合開始僅か1分、中盤でMF小野裕二が左前方へフィードボールを送ると、FW田川亨介が浦和バックライン裏へ抜け出して鮮やかな左足シュートを突き刺した。浦和レッズは中盤でのプレスが緩い中で安易にディフェンスラインを上げ、サイドバックの森脇良太が高い位置を取ったことで生まれたスペースを田川に突かれて失点した。

 浦和は守備から攻撃、ポジティブトランジションへ移るスピードが速いと言われてきた。その最たるものが槙野智章、森脇良太の両サイドバック(かつてはストッパー)が攻撃参加するアクションだ。しかし今は、その判断が蛮勇になっている。陣形が整わず、前線プレスが緩い中でアグレッシブなトランスフォームをすればチームバランスを崩す。そのリスクを身を持って知ってきたはずの浦和は、今ここに至ってもチーム戦術、プレー思考を修正できない。 

 試合開始直後に失点するハンディは計り知れない。鳥栖はただでさえアウェーで専守防衛に努めようと思っていたはずで、マッシモ・フィッカデンティ監督はFWビクトル・イバルボを最前線に置く4-5-1で自陣スペースを埋める策に出た。4バックは自陣ペナルティエリアの幅を守り、中盤はアンカーの高橋義希、インサイドハーフの福田晃斗と原川力に加えて、FWの田川とトップ下に入ると目されたMF小野裕二を左右に配備して中盤に厚みを加えた。こうなると浦和はボールを持たされる形で遅攻で崩すしかない。しかし前半の浦和は鳥栖守備陣の中央エリアの堅牢ぶりに恐れをなしたのか、果敢な縦パスを控えて足下への横パスを繰り返した。

 気になるのは、堀孝史監督が4-1-4-1を採用してからのサイドアタックの希薄さだ。この日ウイングを務めた右・駒井善成、左・高木俊幸はボールを受けた時点で複数の敵に囲まれ、ほとんど1対1の状況に持ち込めなかった。もちろん鳥栖が入念な守備組織を形成していた影響もあるだろうが、今試合に限らず、浦和のサイドチェンジ、サイドアタックは以前に比べて形骸化している。これではドリブルでの単騎突破に優れる駒井などは持ち味を発揮できる余地もなく、人垣の中で途方に暮れるしかなくなる。

 堀監督が実行している戦術では攻撃時に以前の3-4-2-1から可変するシステムと同じポジショニングを選手に取らせているはずだが、一体何が変わってしまったのだろうと考えた。ひとつ指摘するならば、中央でのコンビネーションプレーが減り、相手を中央に集約させる作業が無くなってしまったために相手守備網を左右に揺さぶれないのかもしれない。思えば前任のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は如何に相手の守備を崩すかを目指す上で、自らがリスクを冒すことの重要性を認識していた指揮官だった。しかし今季は大量失点の惨状に直面し、指揮官が交代して新体制が生まれてからは守備への意識付けがファースト・プライオリティになった。その結果、挑戦的なアクションが影を潜め、今のチームはいたってノーマルなチームスタイルへと落ち着いたのかもしれない。

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