【無料公開】2018天皇杯決勝・ベガルタ仙台戦[渡邉晋監督(仙台)][コメント]

●渡邉晋監督(仙台)
まずは、どアウェーの埼スタを覚悟して東京のホテルから乗り込んできましたが、「ど」が取れたくらいのアウェー感を作ってくれた大勢のサポーターに感謝したい。素晴らしいサポーターの力で今日の90分、連戦のなかでしたが、選手は非常にタフに、最後まで走り切ってくれたと思います。スコアを動かされるとしたら、リスタートか、我々のボールの失い方が悪くてカウンターを受けるかのどちらかと予測を立てていました。実際、宇賀神選手にスーパーゴールを決められ、先にスコアを動かされ、非常に難しい展開になりましたが、その後はボールと相手を動かして、意図的にボックスに迫ることできました。最後のひと押しがなかなかなくて、今日はゴールに結びつきませんでした。結果がすべてなので、クラブとしては初めて決勝進出できた大会でしたが、最後こういう形で終われば悔しさは残ります。準決勝を突破した喜びよりも、数百倍、数万倍悔しいと今日初めて感じさせられました。この悔しさを持って、選手一人ひとり、またチーム全体として進まないといけない。下を向かずに顔を上げて仙台に帰り、明日最後の行事があるので、そこで仙台のみなさんとお会いできればと思います。1年間、ありがとうございました。

Q 前半から椎橋選手から落ちて4バックでビルドアップしていたが、狙いと効果は?
前回の山形戦も3−4−3からズラして、後ろを4枚にする形を取りました。リーグでもたとえば長崎戦でその形をやっていますし、我々にとってイレギュラーではありません。浦和の守備の狙いを考えたときに、立ち位置をズラすより、あえて食いつかせて、背中を取る作業をしたかったので今日のような攻撃態勢を取りました。実際、青木選手が我々のアンカーに食いつけば、背中が開きます。ジャーメインに収まれば、我々はもぐっていける、そういう絵を描いていました。最初は収まりが悪くて、ボールを失う回数多かったが、ジャーメインがまず背後を取る動きから足元のスペースをしっかり探せてから、意図的に押し込めたと思います。狙いとしてはそういうもので、あとはそこからどうやってプラスワンを作っていくかという作業を、サイド、中央の潜りを期待してやりました。全体像としてはよくできたと思います。

Q 昨年、一昨年は初戦で負けているが、成長を感じる?
去年、ホームで非常につらい負けをしたので、それをよく今、思い出させてくれたなと(笑)。大会は日本のなかでレギュレーションとして3つあって、その3つでそれぞれの目標設定して、常に前進をかんがえてきました。今のクラブの全体の規模を考えると、3つ全てで目標を達成できるのか、タイトルを取れるのかというと、それはやはり難しいが、目標を定めて、1つでも多く達成していく、それを選手と共有して今年1年進んできたつもりです。天皇杯はリーグ戦の合間にあって、メンバーを変えてやりくりしないといけないが、そういうときにはチームの総力が問われるので、それを考えると多くの選手が出場したので、チーム全体の底上げにつながったと思います。それをやりながらのクラブ初の決勝進出は大きな一歩を踏み出せたと思います。みちのくダービーの準決勝を勝った喜びよりも相当悔しい、その悔しさしかない。天皇杯ここまでがんばった、というのが消え去るくらい悔しいので、それを乗り越えるくらいがんばりたい。

Q 準優勝も素晴らしい成績だと思う。就任5シーズンでチームは進歩しているが、今年の成長はどこに感じる?
正直、今年は全然手応えがなかったです。苦労した部分が多くて、去年はリーグ戦でだんだん力がついてきたのを実感しながら、理想の勝ち点には届かなかったですけど、リーグ最終戦のアウェーの甲府戦が終わった後、来年はどうなるんだろうという楽しみがわいてきて、去年はそういう手応えを感じていました。今年はメインのリーグ戦を考えると、その手応えを得られなくて、正直、今は危機感しかないです。ここからどうやってレベルを上げるか考えたときに、課題山積でもっとやらないといけないという思いがすごくあります。でも、そういういろんなものをたぶん、選手も感じながら今日臨んだと思うが、今日に関しては積み上げてきたものがたくさん表現できたと思うので、やはりおそれずに強気にポジション取って、食いつかせて、ボールを動かして、相手を動かせば、これくらいできるというものを最高の舞台で表現できたと思います。それを勝利に繋げられれば、もっと自信がついて、大きな一歩踏み出せたと思います。今年1年の苦労は今日の試合で少しでも成果として表れたのであれば嬉しいが、これに満足せずにもっとやらないといけない。

Q ジャーメインは決勝では決められなかったが、それまで3試合連続ゴールを決めていた。大会を通しての成長、課題、来年の可能性で感じることは?
この大会で彼が多くのゴールを積み上げてきた、アシストを含めれば数多くのゴールに絡んできたことは素晴らしいです。天皇杯のゲームで結果が出始めただけで、成長を考えると、三歩進んで二歩下がるような、走ればうさぎみたいに早いが、亀のようなスピードで成長してきてくれたなと思っています。毎日コーチが居残りでつきっきりでトレーニングしていて、足元の技術が飛躍的に高まってきた、それが今年彼の一番の成長だと思います。それがあるから顔が上がり、相手と駆け引きができます。そういう好循環が生まれていると思います。今日は対峙した相手が代表クラスだったので、肌で感じたものがたくさんあると思います。彼に期待できるものは、これをどう克服するのかというのびしろ、それしか感じないので、この悔しさを持って真摯にトレーニングに取り組めば、素晴らしい選手に成長してくれると思っています。明日にもまた集めて、練習させたい(笑)。

Q オシム監督が率いていたジェフは「その選手層でよくここまできた」というサッカーを見せてくれたが、仙台もそういうサッカーを見せてくれると期待している。その高みまで来ていると思うが、本心で伸びていると感じていることは?
伸びてます、間違いなく(笑)。選手もチームもすごく成長していますし、やれることは増えています。たぶん、今日は選手もやっていて楽しかったと思います。やっている選手が楽しくなければ見ている人も楽しくないと僕は思っているので、いろんな考え方の監督がいると思いますけど、それを追求した先に勝利があると考えています。それを思えば、成長はしていると思いますが、このクラブの歴史を振り返ると、僕自身、在籍も長いので、震災以降、リーグで4位、2位になってACLに行ったという歴史があるので、サポーターも満足していないと思います。もちろん、いろんなことを考えて、まだまだ早いというのも本音だと思いますが、一度ACLに行った歴史を振り返れば、もう一度という思いが出るのは当たり前ですし、こうやって悔しさを味わえば、また来年もう一度、という思いをみんな持つと思います。

でも逆に言うと、現場だけでなく、いろんな人の思い、エネルギーが高まると、クラブとして、あるいは仙台、宮城、東北という地域として、いろんなものがレベルアップしてくると思っています。ここで僕が、リーグ戦残留すればいいよとか、天皇杯は去年1回戦負けだから今年は2回戦でいいよという話をすると、ついてきてくれる人もついてきてくれないと思います。もちろん、多少背伸びしているところもありますけど、言って実現するのが男だと思うので、その目線を下げずに、選手の成長と一緒に突き破って、今度こそメダル、カップを持って、この会見場に戻ってきたい。

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