【福田正博】FUKUDA’S EYE−『時代の流れを捉えられないクラブに、強烈な危機感を抱く』 

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成功するチーム、失敗するチーム

 浦和レッズは新たな強化部体制で来季2020シーズンへ臨むことをアナウンスし、大槻毅監督が引き続きトップチームの指揮を執ることを発表した。ただ、『変わる』というメッセージを出したにも関わらず、クラブフロントの陣容は大半が内部での人事異動で、現場の最高責任者である監督も代わらないというのでは、その変革の意思を強く感じ取ることはできない。クラブ内部は覚悟を持って新たな施策に取り組もうとしているのだろうが、外部との温度差には大きな隔たりがある。その点を当事者であるクラブはどう捉えているのだろうか。

 大槻監督体制継続の決断が遅かったことが、ここに来て多大な影響を及ぼしている。引き続き大槻監督が指揮を執るとなれば、まずは現況のチームを取りまとめなくてはならない。プロ契約を交わしているサッカー選手はある意味個人事業主であり、所属する組織の現状や未来への見通しなどを加味して自らの処遇を決める。その中ではもちろん契約上の問題もあるが、他クラブとの折衝次第ではその契約を満了せずに新天地へ赴く選択肢も生まれる。

 2019シーズンのJリーグ最終節・ガンバ大阪戦を終えた直後の選手の反応は芳しいものではなかった。複数の選手からチームの現状やクラブの施策に対して懐疑的な意見が出て、少なからず不安を抱いていることが明らかにされていた。大槻監督が目指すチームスタイルの本質を見極められない点や、その指導方針、またステップアップできるだけの伸びしろを感じられない点は選手の疑念を増幅させる動機になっただろう。そしてなにより、2019シーズンの大槻監督体制ではAFCチャンピオンズリーグで決勝まで進出したものの、YBCルヴァンカップ、天皇杯ではいずれも早期敗退、そしてJリーグでは監督の指揮下で20戦してわずか4勝、勝ち点を21しか積み上げられなかった。その結果が深刻さを浮き彫りにしたと思う。

 チームスポーツでは内部の信頼関係が重要になるのは当然だが、プロの集団では『信頼』という言葉を単純に捉えることはできない。高額な報酬を得て、その対価として結果を求めるプロの現場は部活動ではなく、ましてや監督と選手は教師と生徒の間柄にはならない。監督はプロとして戦う選手に対して結果を得るための筋道を提示し、選手はチーム内での自らの立場を理解したうえで職務に邁進する。その中で、サッカーという競技でピッチへ立てるのは僅かに11人で、他の選手は途中起用の任務に就く、もしくは出場機会を得られない境遇を受け入れるしかない。チーム内には必然的に序列が生まれるわけで、それを作り上げる監督は選手に対して適切な振る舞いをしなければ結束を保てなくなる。

 チーム内の半分以上の選手が自らの境遇に不満を抱えている。これがプロサッカーチームの実情だ。それでも成功するチーム、失敗するチームが生まれるのは何故なのか。

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