日々雑感-小泉佳穂『熱きファイターが備える意志』

小泉には求道者のような佇まいがある/©Takehiko Noguchi

挫折の末に

目を引いたのは、その卓越したスキルの数々だけではなかった。相手へ向かう勢い、ボールを保持したときの迫力が凄まじい。テクニックを全面に押し出す選手は数多くいる。両足を扱えるという前評判があった彼もその類いかと思っていたが、その先入観は失礼だった。小泉佳穂という選手は正真正銘のファイターなのだと思い至った。
今季公式戦初戦のJリーグ第1節・FC東京戦を観たとき、トップ下でプレーした小泉が今季のチームを牽引する存在なのだと実感した。彼は狭小な局面でも確実にパスレシーブできるし、左右の足を器用に駆使して前を向き、高質なパス、もしくは自在性のあるドリブルで敵陣深くへボールを運べる。そして何より、攻撃から守備へと転換したときのプレースピードが格段に速いと感じた。リカルド・ロドリゲス監督が志向するサッカースタイルの中には攻守転換からの即時奪回というアグレッシブな守備理念がある。小泉は指揮官のリクエストに十全に応え、高速かつパワフルなアプローチでチーム戦術を全うできるチームプレーヤーだった。
そしてもう一点。彼は良い意味で、ピッチ上で“笑わない”選手だと感じた。いつも何処か苦しげにプレーするが、その行為が実益をもたらし、明確な結果へと直結すると安堵したかのように少しだけ微笑む。その所作は、これまでの彼が歩んできたかけがえのないサッカー人生が色濃く反映されているように思えた。

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