王者に逆転負けも、浦和の方向性は正しい【島崎英純】2022Jリーグ第10節/川崎フロンターレ戦レビュー

©Takehiko Noguchi

理詰めの布陣

 リカルド・ロドリゲス監督が採用した4-4-2システムは効果的に機能した。前線を江坂任と明本考浩の2トップにしたのは川崎フロンターレのセンターバック、谷口彰悟と山村和也とのマッチアップを目論んだからに違いない。ただし川崎は4-1-2-3のアンカーシステムを採用しており、浦和はアンカー・橘田健人のマーキングに留意する必要があった。

 浦和は攻撃時と守備時でマーク対応を絶妙に変えていたように思う。攻撃時は先述した通り、江坂と明本が相手CBと対人勝負を仕掛ける形。そして橘田に対しては主に左サイドMFの小泉佳穂がインサイドへ絞って接近し、ここからオートマティックに左サイドバックの馬渡和彰がオーバーラップするメカニズムがあった。また、右の関根貴大と酒井宏樹がそれほどインサイドワークを仕掛けなかったのも狙いの一つかもしれない。こちらはサイドライン際でのプレーを徹底して相手左サイドバックの登里享平(前半途中から登里の負傷により塚川孝輝が入った)と左ウイングの遠野大弥を同エリアへ留めるかのような挙動を見せた。その結果、相手アンカーの橘田は味方左サイドからのヘルプを得られずに右からのプレーメイクに偏るようになった。

 一方で、川崎のストロングサイドは右である。ウイングの家長昭博、サイドバックの山根視来、インサイドハーフの脇坂泰斗を中心に、ここに橘田も関与して正確無比なパスワークを敢行する。守備側が彼らに無闇に飛び込むと決定的なラストパスがゴール前へ供給されてフィニッシュへ至られてしまう。そこで浦和は守備時に明本が1.5列目へ下がって橘田をマーキングしていた。これによって守備人数を確保し、相手右エリアでの数的優位、もしくは最低限数的同数を維持する。プレーエリアを狭められた川崎はそれでもショートパスポゼッションに拘ったが、得意のレーンワークから浦和ゴールライン深くまで侵入するアクションを起こせず、業を煮やした家長が味方バックライン付近まで降りてボールタッチするようになった。

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