スコアレスドローの結果には、明確な理由がある【島崎英純】2022Jリーグ第16節・アビスパ福岡戦レビュー

©Takehiko Noguchi

万全だった福岡対策

28度を超える福岡県のベスト電器スタジアムで、浦和レッズは勝利への方策を探りながら試行錯誤を繰り返した。

リカルド・ロドリゲス監督は相手対策に余念がない。今回もアビスパ福岡が4-4-2のベーシックシステムを築いて秩序的に攻守を循環させるのを見越し、それに沿ったポジショニングを各選手に指示した。浦和のシステムは基本的に4-2-3-1だが、当然のことながら攻撃時と守備時で形が可変する。

まず、自陣からのビルドアップ時は4バックの右サイドバック・宮本優太だけが前にせり上がってアレクサンダー・ショルツ、岩波拓也、大畑歩夢の3人で3バック気味に構えた。この意図は明白だ。福岡は2トップを採用していて、前線プレスは基本的に山岸祐也とファンマ・デルガドの2人で実行する。ここ数戦の浦和は後方での数的優位を築く意識が高まっているのに加え、後方からのフィードやパスに正確性を求めるようになっている。ただし、中盤中央の人数は確保したい。中盤と前線のレシーバーの数を失えば、後方に多くの“発射台”を置いても宝の持ち腐れになるからだ。

したがってダブルボランチの岩尾憲と伊藤敦樹はバックラインに一切降りなかった。この選択は正しい。実は福岡は浦和が疑似3バックを形成したのを観察した後に両サイドMFをインサイドに絞らせてプレスワークするようになった。これは浦和の縦パスの狙い目がピッチ中央にあること、そのために福岡2トップの背後にダブルボランチが構えているのを見て取ったからだ。

しかし、それでも前半の浦和はパスワークがスムーズに機能した。福岡の4人の前線プレス者に対し、浦和は3バック+ダブルボランチがスクエアを築いて54のシチュエーションを維持した。また、今回はショルツや岩波から味方ボランチを飛ばした前線選手への縦パスが頻発した。松尾佑介や小泉佳穂へバシッと縦パスが入り、そこから岩尾や伊藤が前向きでボールを受けることで敵陣での攻撃構築も活性化した。その結果、前半30分過ぎまでは浦和がワンサイドでゲームを進め、中央でのパスコンビネーションから明本考浩がポストに当てるシュート、大畑の左クロスから松尾が詰めるビッグプレーなどを創出した。

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