浦レポ by 浦和フットボール通信

無料記事:梅崎司が”お別れの会”で最後のメッセージ「自分のこと以上に自分のことを思ってくれる人がこんなにたくさんできて、この上ない幸せだった」

(Report by 轡田哲朗)

出版を記念したトークショーとサイン会を開催

浦和の須原屋本店で、昨季まで浦和レッズでプレーした梅崎司による著書の発売を記念したトークショーとサイン会が開かれた。およそ150人に対してのサイン会からスタートした集まりには、一人一人に丁寧にサインをしながら会話する梅崎の姿があった。

彼にはファンサービスやキャンプの際にサインを求められた時に、少し照れ臭そうにしながらも、嬉しそうにサインをする選手という印象があったが、この日もそれは変わらなかった。今季から湘南ベルマーレにプレーの場を移すことが決まり、ある意味では、すでに湘南の選手でもある。しかし、このひと時ばかりは、浦和の選手として最後の瞬間を噛みしめていたのではないかと、そう見えた。

トークショーの内容については、彼の著書を購入した方が対象なので、その中身に踏み込む部分は記述しない。ただし、トークショーというと笑い話が時間の大半を占めるのが一般的な中で、梅崎にも構成を担当した安藤隆人氏にも涙を流して言葉に詰まるような場面が少なくなかった。それだけの思いや、自身の過去に向き合ったものが一冊の本に込められているというのは、間違いのないことだ。

10年という長い時間を浦和で過ごした選手による、お別れの時間としては短かったかもしれないが、それを補って余りあるほどに濃厚な時間が流れた。そして最後には、集まったサポーターから梅崎のチャントが自然に送られて幕を閉じた。負傷もあり、悔しい時期も短くなかったが、浦和の一員として戦い続けた梅崎は、一人のサッカー選手としてこれからも全力で走り続けるはずだ。

イベント後一問一答

――今日の会を終えて
「本当に、僕だけの思いではできない話ですし、レッズ側もベルマーレ側も僕の思いを乗せて一緒にやらせてくれて、須原屋さんが場所を提供してくれて、これだけのサポーターが集まってくれたからこそ実現できたわけですから。引退するわけでもないのに、こういう形を作ってくれて、感謝しかないです」

――レッズでの10年間を過ごして
「まさか10年いるとは思っていなかったですし、自分一人の力ではここまで来られなかった。濃密な10年間だったし、色々な思い、色々な経験をさせてもらって、一つ一つを鮮明に覚えています。良いことも、悪いことも、辛いことも、大きな喜びも、一つ一つが自分を成長させてくれたと思います」

――その、成長という部分は
「一番は人とのつながりですね。人とつながるのが苦手だったし、壁を作ってしまうので。仲良くなるまで時間の掛かる人間ですけど、自分のこと以上に自分のことを思ってくれる人がこんなにたくさんできて、この上ない幸せですよね。なかなか得られるものではないし、自分の行き方を肯定してくれているというか、不思議な感覚ですけど、そんな人たちが身の回りにできて、人間として一番大切なものを学ばせてもらいました」

――本に著すにあたって葛藤もあったのでは
「葛藤はそれほどありませんでした。自分の中で整理がついていたので。これを伝えることによって、何か苦しんでいる人や、同じような家庭環境の人に届いてほしいという思いです」

――移籍が決まってからの開催になったことに不安な思いなどは
「この会には不安がなかったですし、自分のことを思ってくれている人がたくさんいると肌で感じていましたから、そういう人たちに一人でも多く最後に目を見て思いを伝えたいと思っていたので。ただ、本を出すにあたって『浦和を使った』とか『出してすぐ出ていって、裏切り者』という声はもっと出ると思っていたんですけど、ありがたいことにほとんどなくて、多くの人に喜びとお礼を伝えられて感謝しています」

――最後に梅崎チャントが歌われて
「嬉しかったですね。やっぱり。本当に、(昨季に)歌わせられなかったことが心残りで、でも、それだけのプレーを見せられなかったのも事実だし。だけど、こういう形ですけど、こういう形だからこそ、やってくれたというのは一生残ると思います」

15歳 サッカーで生きると誓った日
梅崎 司 (著)
東邦出版 ソフトカバー 240ページ

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