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【無料記事】岩波拓也がサッカーができない日常の苦しさを吐露「Jリーグがある生活に戻りたい」


(Report by 河合貴子)

ゲームや試合映像を見て過ごす

「自粛している証として、残しています」と照れ笑いしながら通信アプリのZOOM取材に対応したのは、髪の毛も少し伸びて、ヒゲを生やし少しワイルドな感じになった岩波拓也選手であった。そんな岩波選手からは、不要不急の外出を控えている様子がうかがえる。

「かなりストレスが溜まっている。早くサッカーがしたい。なかなか先が見えない現状がある。しょうがない部分はあると思いますけど、いちサッカー選手としてサッカーができない現状を受けて、改めてサッカーに生かされていることを感じる」と話し「チームメイトに会えないのが、一番つらい。何よりチームメイトとボールを蹴っている時間が楽しいんだと改めて感じている」と少し寂しそうな表情を浮かべた。

自宅で過ごす時間が長い中で、岩波選手の気分転換は犬のお散歩だそうだ。ストレスの発散は、「なかなかストレスを発散する場所が見当たらない現状ですが、携帯のゲームでサバイバルゲームにはまり、ちょっと長い時間やったりしている」とゲームでストレスを解消していた。

もちろん、ゲームだけではない。しっかりと試合の映像を見て過ごす時間もあった。

「過去のレッズの試合を見たりしている。DAZNで配信があったガンバ戦も見た。自分がレッズに来てからのゴールをYouTubeで見た。開幕戦の湘南戦も見た。そういう意味で、「こういうところは、もう少しやれるな」とか、ポジショニングの部分や連携の部分は、再開したら改善しないといけないと思っている」と話した。

そして「やっぱり2試合で得点は増えたが、失点では少し目についた」とYBCルヴァンカップ・仙台戦とリーグ開幕の湘南戦を思い出しながら「『防げない失点か』と言われれば、『防げる失点』ばかりだった。僕は守備の人間なので、守備の改善はしないといけないと思っている。クロスの対応で失点した。その失点を減らせれば、もっと楽に試合を運べた。今後、失点を減らす部分でもっとやれることがある」と気合いを入れた。

勝利はしたものの2試合で4失点は、DFとしてずっと気にしていたし、どうすれば防げていたかを考えていたのだ。いかにも現状に満足しない岩波選手らしい一面である。失点を抑え、確固たるセンターバックのポジションをものにしたい貪欲さが垣間見える。やはりそこには、今シーズンから取り組んだ4-4-2システム導入の影響があった。

「今年は、4バックに変わって出場できる枚数が1枚減った。もちろん、キャンプのときから(ポジション)争いがあると思ってきた。ハイレベルな争いが、レッズではあると思っている。ポテンシャルでいえば、トミー(トーマス・デン選手)も良い選手だ。すごく危機感を持ちながら練習をしているし、自信だけは常にもってやるようにしている」と話した。

選手が自信をもってプレーすることは、すごく大事なことである。ただ、自信が過信になると危険である。危機感を持つことで、向上心が生まれスキルアップにつながる。

「実は、湘南戦が終った後に怪我をしてしまって・・・。次のリーグ戦には、間に合うかどうか。恐らく間に合ってなかったと思う。そういうのがあって、少し焦りを感じていた。簡単に戻れるポジションではないし、簡単に戻してくれるメンバーではない。しっかりとした競争は、初めてできていると思う。(浦和に移籍してきて)過去2年がどうだったかというよりも、ある程度レッズでやり慣れた選手が多く試合に出られた部分があった。今、4枚に変わってみんながフラットな状態になった。」と激しいポジション争いの胸中を語った。

そして「ピッチに戻ればポジション争いはもちろんあるが、サッカーができる喜びを感じたい。そこからポジション争いという意味では、自分の良さをしっかりと出していきたい。コンディションを上げていくことが大事だ。ピッチに戻りたいのが一番。これだけサッカーをしていない時間が長い時は、プロに入ってなかった。自分でもどういう感じになるのか分らない。それは、どこのチームの選手も同じだと思う。もう一度、コンディションを作っていく。レッズに来て3年目。どういうことを求められているかは、自分でも分かっている。そういう意味で、常に勝てるチームを目指していかないといけない。年齢も中堅になったので、上の選手にも下の選手にも意見し合える選手になりたいと思う」と身を引き締めて話した。

活動が再開すれば、その先にはリーグ戦再開がある。しかし、コロナウイルスの終息が見えず厳しい現状の中で、最終手段として無観客試合がだんだんと現実味をおび始めてきている。

「これは個人的な意見になるが」と前置きをして「埼玉スタジアムという日本で一番ファン・サポーターが入るスタジアムでプレーをしている。その中で闘えないのは、かなり不利な状況だと思う。ここまでコロナウイルスが広がって、これだけプレーができない時間が続いてくると無観客で自分たちが試合をして、その試合を見て元気や何かを伝えられるのは1つの案だと、ここまできて考えられるようになった」と無観客試合の可能性を受け止めていた。

そして「35才のベテラン選手よりも、一番大事な時期にいる自分がプレーできない。自分のキャリアにおいて、すごく残念なシーズン。やっぱり26才から30才までの間が、すごく大事だと思っていた。早く試合したい気持ちがある。不安がないわけではない。とにかく、試合、Jリーグがある生活に戻りたい」と切実な思いを口にした。

いくら犬のお散歩で気分転換しても、サバイバルゲームでストレスを発散しても、やはりサッカーをできない、試合ができない苦しさがある。プロ選手として、これから良い意味で脂がのってくる年代になった岩波選手にとって、コロナウイルスの影響で本当に苦しいシーズンとなってしまった。だが、コロナウイルスが終息したらサッカーができる喜びを感じながら、思いっ切りピッチでストレスを発散することになるだろう。

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