浦レポ by 浦和フットボール通信

強制的に上げられたプレースピードと、そこでの成長が見えた試合【轡田哲朗レッズレビュー/J20節福岡戦】

(Report by 轡田哲朗)

大久保が競争に加わってきたのはとても良いこと

浦和レッズは27日のリーグ第20節、アビスパ福岡戦に2-0で勝利した。5月1日の試合ではボールを圧倒的に持ちながら0-2で敗れた相手であり、リーグ戦2回り目の初戦はきっちりと「やり返す」試合になったという意味で、幸先が良いものになった。

スタメンは20日の湘南ベルマーレ戦と23日の柏レイソル戦のミックスのような感じになった。GKはその福岡戦でのミスがポジションを失うキッカケになった西川周作が、柏戦でのイレギュラーからの継続起用になった。また、左サイドハーフの大久保智明は、湘南戦が敗戦だったもののここでもう一度スタメンのチャンスを得たという点で、左サイドで縦に行ける良さをリカさんが買っているということだろうし、後半途中から出てきた汰木康也のプレーなんかを見ると良い刺激になっている感もある。そういう意味では、シーズン序盤はかなり苦しんでいたし、今も絶対的な存在に近づいたかと言われると、競争に参加し始めたという段階なのだろうけど、貴重な左利きアタッカーがゲームに絡んできているのは喜ばしい。

相手に強制されたスピードの中で、動き直し、場所の取り直しができていた

この試合のテーマにしたいところが、プレースピードと私が呼んでいるものだ。福岡の守備は4-4-2でセットしたところから始まって、2トップ主導で追い回すようなプレスを掛けるわけではない。ただ、特に2トップの横にボールホルダーが侵入するのをトリガーにして、2トップの二度追いから一気に囲い込もうとする。

本来、前がフリーな状態でボールを持っている相手につっかけるのは、攻撃のスピードを上げさせてしまうという点でセオリーに反する。ただ、福岡の場合はこのスピードを相手の許容範囲を超えるほど上げさせる。つまりとても速いプレースピードでの判断とボールコントロールを強いるので、そこで判断のミス、コントロールのミスを発生させてショートカウンターにつなげるという設計図があるのではないかと感じられる。

プレースピードの許容範囲というのは、それはそのまま選手やチームの技術レベルに依存する。過去に浦和が絡んだものだと、天皇杯のカテゴリー違いの相手とのゲームや、名古屋グランパスに大敗した試合なんかで触れたことがあるように記憶している。プレーのテンポをどちらかのチームが上げることで、そのスピードではミスをせずにプレーできないチームがどんどん苦しくなってしまうということだ。福岡もマイボールになるとそのスピードでプレーしきれないのだけど、そこはボールを奪った瞬間に相手の陣形が崩れている状況と広いスペースが解決する面がある。

ところが、この日の浦和が秀逸だったのは、その上げられたプレースピードの中でミスをほとんど起こさなかったことだった。特に、パスの受け手になる選手の動き直し、ポジションの取り直しがとても素早かった。あらためて「パスは受け手だな」と感じさせられたような試合で、その辺のところをリカルド・ロドリゲス監督や小泉佳穂と話した内容も紹介しておきたい。

「前半はすごく良かったと思いますが、後半に関してはそこが少し落ち着かなくなってしまった。ポジショニングや人と人との立ち位置の入れ替え、そういったところはすごく良くなっている。後半に関して言うと、ボールを奪い返してもまた失って、また奪い返しては失って、という繰り返しになってしまった。ただ、全体的には今話したポジショニングをとるところなどは、すごく成長している」(リカさん)

「1人1人が意図した形で、そこに状況判断を加えながら、ボールを受けることができている。自分だけではなく周りとの関係を意識しながらボールを受ける動きができるようになって、相手としてはつかみどころがないと思うし、出し手もやりやすいと思う」(小泉)

典型例を1つ挙げるとすれば前半38分の場面で、急がされた中を右サイドで適切な位置を取った選手同士で、さらに少し狭い場所でも正確に通す技術を発揮して、一気に逆サイドへ展開した場面にしてみたい。

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