浦レポ by 浦和フットボール通信

突破した時点で評価は「100点」どこまで行くかが難しかった試合に【轡田哲朗レッズレビュー/天皇杯3回戦 相模原戦】

(Report by 轡田哲朗)

スタメンはリカさんが話した「十分に勝てるメンバー」の範囲内

浦和レッズは7日の天皇杯3回戦で、J2のSC相模原に1-0で勝利した。試合終了間際にキャスパー・ユンカーが決勝ゴールを入れての突破になった試合がリーグ戦だったら、内容の部分も含めて「100点」とは言い難いだろう。ただし、この天皇杯はトーナメントであって、突破できるか、できないかが全てだと言っていい。相手が相模原でもカターレ富山でも、川崎フロンターレや名古屋グランパスでも、あるいは高校生や大学生でも、突破できたかどうかに対しての比重が全てと言っていいのがトーナメントだ。だから、この試合の浦和はすでに100点を取っている。あとはどこに「ボーナスポイント」があるかという考え方をすればいい。

この試合のスタメンには3日のベガルタ仙台でスタメン出場しなかった選手が8人いた。GK西川周作に関しては、鈴木彩艶がすでに東京五輪チームに合流しているという側面もあるだろう。塩田仁史をパッと使うならここがタイミングかなと思わないでもなかったが、その辺はリカルド・ロドリゲス監督の判断ではリスクを少し避けたと言えるのかもしれない。塩田の力量に疑問符が付くという意味ではなくて、シーズンの初戦というのは誰だって少しナーバスになるものだし、プレッシャーの大きい実戦で今季出場を重ねている最終ラインの選手たちと一緒にプレーしていないという事実はそこにある。

他では、槙野智章と柴戸海が継続起用になった。以前にこのような3連戦があった時に、伊藤敦樹が3試合連続のスタメンで出場したことがあった。阿部勇樹を入れると4人で回るボランチなのだけど、彼はメディア公開日の練習が別メニューだったように、この試合に対して十分な状態ではないという判断だったのだろう。最近は小泉佳穂や武田英寿(この試合は五輪代表のトレーニングパートナーで不在だった)のような本来は2列目の選手で、プレーメーカー的な振る舞いをする選手をこのポジションに入れなくなったので、金子大毅を含めた誰かが少し負担を引き受ける状況になっているようだ。

 

収まらない興梠と、何人が出ていくかの難しさ

試合は関根貴大が「相手が全然出てこなかった」と話した通りに、5枚でベタ引きする相模原に対して浦和が何かをしないといけない展開になった。それに対して、リスクマネージメントの点で苦慮しているなというのは、立ち上がりから感じる部分があった。

相模原は浦和ボールの初めは5-2-3で構える雰囲気を見せるものの、割と早く5-4-1に撤退する。最初の時点でブロックの先頭は3枚なので、浦和からすればサイドバックのどちらかが少しインサイドに絞った3枚プラス、その内側に潜り込む、あるいは出入りするボランチ2枚という構成を作りたいのは見て取れた。ただ、これが恐ろしく出てきてくれないので、「誰がどこまで進出するか」というのは少し難しいところがありそうに見えた。

というのも、この構えを見せられた側からすると相模原の狙いはロングカウンター以外に見えなくなる。トーナメントの一発勝負という要素を加味した時に、最後方で2対1でありながらも、大きなスペースを相手が手にできる状況まで人を前に押し出して良いのか、あるいは自分が前に出ていって良いのかというのは、後ろの選手たちからすると判断が難しかっただろう。

もう1つ要素を付け加えるなら、この試合で最前線に入った興梠慎三は本当にどうしてしまったのかというくらいボールが収まらなかった。武藤雄樹は収まりどころがあってこそ輝くところのある選手でもあるので、前線はかなり難しい状況になっていた。そうなると、余計に前線へのボールが入った時にグッと押し上げるのが難しくなってしまう。私たちは良い時の興梠を知っているから「こんなもんじゃないだろう」と思いながら、少し長い目で我慢することもできるかもしれない。ただ、リカさんにとっては実際に目の前で見るのは今季が初めてという選手だ。夏の中断期間でかなりコンディションを取り戻して、それこそ自分の有用性をアピールしないと難しい状況になってしまう。彼は試合に使い続ければ自然とコンディションを上げるだろうし、そうなれば自然とゴールも取るだろう。ただ、その「使い続ける価値のある選手だ」という判断を監督にさせるためには、恐らくこの後の1カ月は非常に大事なものになる。

金子と槙野の位置変更が中に伝わっていたのかと、ユンカーの技術

後半に入るとセンターバックと金子でブロックの外側に出る3枚を固定して少し落ち着き、槙野智章はかなり好戦的に敵陣に進出する姿勢を見せた。そこでリカさんは後半半ばに前線を入れ替える決断をしたのだけど、相模原も同じタイミングで9番のユーリを入れてきた。高木琢也監督はそういうことを言わないタイプだけど、明らかに相模原の選手たちが「ここからが勝負だ」と言わんばかりに、マイボール時の選択で最前線のユーリを走らせるところにボールを入れるように変わった。

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